45.悪役令嬢と黒いダイヤ
おはようございます。
今日も暑くなりそうですね。
水分補給して頑張りましょう◎
ガバッと起きた!
窓の外を見てみる。
夜のほのぼのと明けるころ、朝ぼらけだった。
ふふっと妖しげな笑い声が口から溢れる。
流行りの悪役令嬢ではありません。リマです。
今日の朝に帰るなら絶対にやらなくてはいけない事があるのだ!
勝手に着替えるとカイルに怒られるかな?と考えていたら小さなコンコンという音と絶対零度の気配がする。
やっぱりカイルだった。
ひいぃぃ…カイルの視線が怖い。
魔王なのかな?これが流行りの魔王様なのかな?
「お前な、ひと言相談しておけ。今日行くんだろ?」
相変わらずエスパー、いや、魔王だから考えが読めるのかも知れない……ガシッと頭を掴まれた!ギロリと睨まれ、嘘です嘘ですと首を横に振ると、くっくっと笑われた。
今日もツァールトに乗せて貰い向日葵畑を抜けて行く。まだ向日葵も寝ているように見える。
「ほら着いたぞ!」
「よくわかったね?カイルってすごいね!」
「当たり前だ。」
カイルに下ろして貰い、目的地を目指す。
「あれ怪しい!」
「ああ、そうだな。」
2人でそろりと近付いていく。
こちらの音が聞こえない方がいいのだ。
「いた!!」
「おお、結構いるな!」
居たよ居たよ!
『カブトムシ』と『クワガタ』!!
やっぱり夏は虫捕りだよね!
昨日、向日葵畑を散歩した時にカブトムシがいそうなコナラやクヌギのある雑木林を見つけていたのだ。
カイルは私があんまり熱心に雑木林を見ていたから絶対虫捕りに行くと踏んで、早朝に迎えに来てくれたらしい。
「かっこいいよね!」
樹液を舐めているカブトムシをひょいと掴んでカイルに見せる。
カイルもそうだなと言い、俺はこっちも格好いいと思うとノコギリクワガタを手のひらに乗せていた。
「カイルも子供のとき、つかまえた?」
「ああ、村の子供と捕まえて戦わせたり、飼ったりしたな。」
「わたしも飼いたいな!だめ?」
カイルが少し考え、すぐ死んでもいいなら飼ってもいいけど、ちゃんと飼うなら難しいなと言った。
確かに餌が難しい…と気付く。
スイカは水分が多いし、カブトムシゼリーなんて都合のいい物はこの世界で売っていない。具合が悪くても離してあげる雑木林もない。
何よりカブトムシは1年しか生きないもんね。
「じゃあもう少し見たら帰る!」
カブトムシを樹液に戻し、ノコギリクワガタにミヤマクワガタ、コクガワダを捕まえる。
カイルも違う木を見に行ったり、他の木を揺らし虫を落として楽しんでいる。
もうそろそろ帰る頃かな?と思い、最初に捕まえた大きな雄のカブトムシを再び捕まえて手のひらに乗せる。足がチクチクするのもまた良し。
「キミ、かっこいいよね。」
横から眺めていたカブトムシの艶々する黒い背中を人差し指でつるるとひとなでした後も角度を変え、眺めていく。なんと言っても格好いい角!それに触角がちょこんと出ているのも可愛い。
「これ見てみろ!」
カイルのはしゃいだ声に視線を向けると『黒いダイヤ』と呼ばれるオオクワガタを手に持っていた。
「すごい!大きいね。かっこいい!!」
8cmは超える巨大なオオクワガタを手に持つカイルは俺が見つけたんだと嬉しそうだ。気持ちはとてもわかる。
オオクワガタの薄べったさをじっくり観察する。
この薄い感じがいいんだよねとカブトムシを持っていない右手の人差し指ですぅーっと背中を撫でる。
なんと言ってもクワガタのつぶらな黒目!かわいい。
「はぁ…かっこいい。」
オオクワガタを見つめながら呟いたら右手のカブトムシがヒュッと飛んで、右胸辺りに引っ付いた。
角を少し動かしていて、見て見てと言ってるみたいで可愛い…。
「うんうん。キミもかっこいいよ!」
何だか愛着が湧いて来て、また右手の人差し指ですぅーっとつるつるの背中を撫でた。
ちょっと嬉しそうに見えた。気のせいだろうけど。
にこにこカブトムシを見ていたら今度はカイルの手のオオクワガタが左胸に飛んで来た!
「つるぺただから木と間違えられてるぞ!」
くっくっとカイルが笑っている。
「ちがうもん。こんな白い木ないもんね!」
今日の洋服は薄い白いブラウスだ。木目調でも茶色でもない。
変態カイル!べーと舌を出して言い返す。
左胸についたオオクワガタのつぶらな黒目を見ながら、ね?と聞いてみる。
返事はもちろんないけど、よしよしと背中の平べったさを堪能するようにすぅーっとひとなでする。
「はぁ…どっちもかっこいいね……。」
カイルがそうだなと真顔で言い、目を光らせた。
「どっちが強いか比べようぜ!」
「……見てみたいね。」
やっぱりカブトムシかなぁ?でもクワガタが勝つ時もあるもんねと思いながら胸についた2匹を捕まえてカイルに渡す。
カイルは樹液のある場所に2匹を対峙させるようにおいた。
2匹はしばらく睨み合っていたが、バッと空を飛び、また私の胸に引っ付いた……。
「お前な!つるぺたは昆虫に人気なんだな。」
くっくっとカイルが笑う。
失礼な!と思ったが、本当に木と間違えてる様な気もして来た……
「そろそろ戻らないと奥様に叱られるな。」
そうだねと頷いて、胸に引っ付いた2匹を樹液の場所に戻しながら、もう帰らなくちゃだめなんだと言った。
名残惜しくて2匹の背中をもう一度だけすぅーっと撫でた。
「バイバイ。」
と2匹のカブトムシとクワガタに別れを告げた。
ツァールトに乗りながら2匹の大きさと格好良さについてカイルと夢中で話した。
向日葵の花もうんうんと頷いているように感じた。
本当に楽しかったなと思いながら別荘に戻ると…
本物の魔王がいた…
「リマ!カイル!朝に移転魔法で帰るって言ってたでしょ!」
お母さんに魔王の如く2人で怒られた……。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
悪役令嬢の小説を読んでいるので影響されました。
次は魔法移転をする予定です。
今日も一日頑張りましょう◎