14.自然農法をやってみよう
改稿しました◎
マタルさんを見送り、次にやることは……と頭であれこれ考えていると、「リマ、おいで」とラルクに手をするりと繋がれて、気付けばお茶の準備が整った席に腰を下ろしていた。
……いつの間に? と首をひねると、ラルクがくすりと笑い、頭をぽんぽんと撫でて来る。
「リマは少し休憩しようね」
「で、でも……やることが……」
「じゃあ、やりたい事を教えて? みんなでやった方が出来ることは多いよ?」
「……うん」
ラルクが隣に座り「はい、どうぞ」とオレンジジュースを手渡してくれて、ひと口こくりと飲むと「美味しいっ……!」冷たさと新鮮な甘さが美味しくて、こくこくと一気に飲んでしまった。
思っていたより喉が乾いていたみたい……!
ラルクは私の様子を見て、「元気になった?」とくすりと笑った。
「リマは何をしたいの?」
「えっとね、大きく分けて2つかな。バトラスを減らすことと、アリがいないか見たいと思っているよ」
「アリ……?」
「えっとね……小さな黒い虫で、甘いものが好きで、行列で歩いて、巣にたくさんいる虫だよ」
「ああ……アントのことだね。アントは、ププリュの木と関係があるの……?」
この世界でアリは、アントと言うのか。
ラルクが首を少し傾けて聞いてくるのが、珍しくて、少しかわいいと思った。
うふふ……樹木の質問は大歓迎だよ!
「バトラスは、木の汁を吸っていて、身体から甘い汁が出るの。アントはね、その甘い汁が大好きだからバトラスを他の虫から守ってあげて、代わりに甘い汁をもらうんだよ」
このアブラムシとアリのようにどちらにも利益のある関係を相利共生と言う。小春の世界で有名なものだと、クマノミとイソギンチャクだろうか……?
ラルクが、なるほど……と言う顔をして頷く。
「だからバトラスが多いとププリュの木が弱るのか……」
「そうなの!」
「でもバトラスを減らせば、アントはいなくなるんじゃないの?」
「そうなんだけど……もしアントが、ププリュの木に巣を作っていると……中から枯れちゃうこともあるの。バトラスが多かったから……もしかしてププリュの木に巣が出来ているのかなと思ったの」
ラルクがと眉を寄せて難しい顔をするのを見て、私は慌てて首を横に振る。
「マタルさんに枝を切った部分を見せてもらったけど、不自然な穴はなかったから……多分、ププリュの木の中にアントの巣はないと思う。だけど……確認のために、ププリュの木の土や周りを見たいの」
マタルさんに切った箇所を見せて貰った時は、実はすごく緊張していた……アリの巣が出来た木は中がスカスカの空洞になって枯れてしまう。最悪な事態は避けられていた安堵の溜息をそっとついたのを思い出す。
「リマ、バトラスを減らすのは、どうするの?」
「2つ試してみるつもりだよ! マリィ、ミルクを霧吹きに入れて持って来て貰えないかな?」
マリィにお願いをすると、マリィもラルクも不思議な顔をしたが、マリィが「ラルク様、リマ様をお願い致します」と我が家に取りに行き、入れ違いにマタルさんが戻って来た。小脇にくるくる巻いた布を持っていて、あれが風の優しさなのかな……? うん、変な物じゃなさそうでよかったな……!
「リマ、ミルクを霧吹きに入れるのはどうして?」
「えっとね、バトラスに霧吹きでミルクをかけると、ミルクの膜がバトラスに出来て、息が出来なくなって死んじゃうんだよ! ププリュの木に、ミルクが残っていると、カビが生えて、違う病気になるから、ププリュの木をよーーく洗い流すんだ!」
小春の世界にいたら害虫駆除の農薬を撒くのが早いけど……この世界の農薬は、名前も効果もよく分からないし、魔力に関しては知識ゼロだもんね。その点、ミルクの霧吹きは、自然農法で使われていて、効果も安全性も安心なのだ。
マタルさんがふむ……と手を顎に置き「乾燥する時間が必要ですね?」と聞いて来る。「そうなんです!」と大きく頷いた。マタルさんの「では、始めましょうか?」の言葉を合図に、休憩をおしまいにした。
先にミルクの霧吹きを行ってしまうと、アリを見つけるのが難しいので、みんなに協力して貰い、ププリュの木や土の周りを重点的に確認をした。「よかった……! アントいなかったね……!」と嬉しくて、ぴょんと跳ねたらラルクに「よかったね」とくすりと笑われた。……子供っぽかった……?
マリィから霧吹きに入ったミルクを受け取り、マタルさんにププリュの枝が見えるように抱き上げて貰う。バトラスに向かって、霧吹きをシュッシュッ……と何度も押した。
ミルクの匂いが、もわぁ……とププリュの木を中心に辺り一面に充満し、私の腕が霧吹きの押し過ぎで疲れた頃、ようやくミルクの散布が終わった。満足した私は、「マタルさん、ありがとうございます」とお礼を言い、下ろしてもらう。
「リマ、よかったね。あとは乾くのを待つだけだね」
「あっ……! 待っている間に、バトラスを食べる虫を探したい!」
マタルさんが「その虫とは、コクシネルのことでしょうか?」と片手を開き、小さなてんとう虫を見せてくれた……!
この世界で、てんとう虫はコクシネルと言うみたい。
私が「そうです!」と大きく頷くと、ラルクがマタルさんに視線を送り、マタルさんが頷いた。
「リマ、コクシネルなら僕が用意するよ」
本日も読んで頂きありがとうございます(*´∇`*)















