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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
17歳は4年生のはじまり

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127.王子の合い鍵



 霜が降り、氷が張った朝、リマが登校中に霜柱を嬉しそうにざくざく踏む……「見て見て、霜の華」と散った紅葉に霜が降りた葉を、細くて白い指で宝物みたいに持ち上げると、僕に見せてくれる。

 少し鼻の頭が赤くなっているかな……? リマが宝物を持っていない手を、絡ませて繋ぎ、コートのポケットに入れる。勿論、僕のあげた指輪ごと、するりとリマの指を撫でるのも忘れない。途端に、リマの顔が真っ赤になる……本当にかわいい。



「ねえ、あの箱には何が入ってるの?」

「内緒……」



 真っ赤なリマに尋ねてみると、今度は悪戯っ子みたいな笑顔に変わり、人差し指を唇に当てる仕草をする。うん、かわいい。



 リマから1から31まで数字が書かれた可愛らしい箱を貰ったのが、数日前の別邸で会った時だ。

 小春の世界では、赤い服を来た白髭のおじいさんが子供達に内緒で贈り物をする日があるらしい……どうして内緒なのに目立つ赤い洋服を着ているのか不思議だ……? そのおじいさんが来る日を数える小さな贈り物が入っている箱を、年越しを数える箱にしたのと言っていた。「1日になったら毎日1個ずつ開けてね? 全部開けたらだめだからね……?」僕を覗き込むリマが可愛くて、「開けちゃいそうだな……?」嬉しくてわざと言うと、慌てた顔をするリマが可愛くて、何度も口付けを落とした。



 ◇ ◇ ◇



 例年よりも遅い、雪降らしの雷が鳴りそうな鉛色の空の日。

 1日の箱を開けると、リマの瞳の色と同じリスのキーリングとリマの字で書かれた手紙、「愛し子の家の合い鍵を作っています」が入っていた。……合い鍵に使って欲しいって言えばいいのに、恥ずかしくて書けないリマを思い浮かべて、笑ってしまう。



 リマの贈り物は、革の手袋、オレンジ味の飴、リマの最近好きなお菓子、お洒落な万年筆、幸運のどんぐり、綺麗な栞、深藍色のインク、刺繍ハンカチ……リマらしい色々な物が入っていた。



 雪降らしの雷もなり、ラシャドル王国は雪に覆われる。魔法学校も冬休みに入り、久しぶりにリマと別邸でゆっくり出来る今日の贈り物は「桃色の飴」だった。

 この桃味の飴は、甘い恋の味がする……だったかな?



 リマの「小春の小庭フリューリンクガーデン」はとても評判が良く、季節限定の回復薬ポーションも桃から葡萄や花梨に変わり、今は柚子になっている。最近のリマは、回復薬(ポーション)の女神と呼ばれている。


 ティエラの懐妊が分かり、リマの子供好きは加速しており、リマの花の咲いた様な笑顔で恋に落ちる瞬間を何度も目撃している……チェダに大人げないと言われても、弟みたい(・・・)がこれ以上増えるのも困るので、きちんと誰の女神か教えている……! リマに本当の弟が出来たらと考えると……妹だったらいいのに……

 まだ気が早いけど、僕たちの子供も息子じゃなくて、リマによく似た娘がいい……息子はきっと最大のライバルになると思う。……リマとの子供か……はぁ……かわいいだろうな……その前に…………



(アイス) (ヴァッサー)



 あっと思う間もなく、バッシャンと凍えそうな冷水が頭から浴びせられた……ジロリと睨みながら振り向く頃には、赤い光が僕を包み込み、洋服も髪の1本も濡れていない……



「熱でお困りかと思いまして」

「………」



 今日もマタルには敵わない……



 冷たく、空気の澄み渡った寒さの朝を迎える。今年も最後の日になり、「31」と書かれた最後の箱を開けると、「小春の小庭フリューリンクガーデン」、愛し子の家の合い鍵が入っていた……!



「ああ、もう……可愛すぎるでしょう……」



 愛し子の家の合い鍵を直接渡すのが恥ずかしくて、こんなに手の掛かる方法で贈ってくるなんて……「火花の魔法の後、小春の小庭フリューリンクガーデンで待っているね」とリマのかわいい文字で書かれた手紙を握り、しゃがみ込む。……リマにしては大胆でかわいいお強請りに、頬が緩むのを感じる……今日はリマの執事は、侍女のマリィと休みだと言っていた……2人きりでだよな……? 一気に自身の熱が高まるのを感じる…………



(アイス) (ヴァッサー)



 あっと思う間もなく、バッシャンと凍えそうな冷水が頭から浴びせられた……ジロリと犯人を睨みながら立ち上がる頃には、赤い光が包み込み、洋服も髪の1本も濡れていない……



「また熱でお困りかと思いまして」

「………」



 今日もマタルには敵わない……



 初日に貰ったリマの瞳と同じリスのキーリングに、合い鍵を取り付ける。リマリスと目が合うと、頬が緩むのが分かった。

 無事に兄上と火花の魔法を終え、リマの待つ愛し子の家に魔法移転をする。早くリマに会いたくて、逸る気持ちを抑えるように、移転の間の扉をゆっくり開ける……



「お、ラルク! 火花の魔法、お疲れ様。今年も凄かったな」

「ハルト様との火花の魔法、素敵でしたわ」

「綺麗だったよー」

「本当に綺麗だったわね」



「……みんな、ありがとう」



 チェダのにやにやした顔で、これがリマの企画した年越しの集まりだと気付く。やられたな……まあ、リマはみんなで集まったら僕が喜ぶと思って、企画してくれたんだろうけど? さて、どうやってお仕置き、いやいや、ご褒美をあげようかな……?


 バルコニーは、沢山のご馳走や飲み物、居心地の良いソファからは王宮の火花の魔法がよく見える。チェダが隣へやって来て、「リマ、すっごく張り切ってたぞ?」「ああ、目に浮かぶよ」「あんまり困らせるなよ……?」



「最後の国王陛下の火花の魔法が始まったよー」



 エイミの楽しそうな声にみんなの視線が王宮へと向けられる。僕はリマの横へ移動し、手をするりと絡ませる。リマが、はにかみながら握り返してくれて、頬が緩む。うん、かわいい。

 新年を告げる花火が打ち上がり始める……リマの瞳に吸い寄せられるように、顔を近づけ、唇が触れ合うだけの口付けを落とした。



「「「新年、おめでとう」」」



 みんなが帰った後、新年最初にした事は、かわいいリマと甘やかな口付けを何度も何度もしたことなのは、仕方ないと思う——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


アドベントカレンダーの話しを書きたいなと思っていて、でも途中からまとまらなくて、書き直しに手間取りましたm(._.)m

次は、魔法学校を卒業する予定です。


今日もお疲れ様でした。

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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ヘッダ
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