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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
17歳は4年生のはじまり

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121.愛し子の家

 


「最後は、カイルの気になるお店だよね?」

「ああ、愛し子の家って言われてる」

「……愛し子の家?」

「実際に見た方が早いと思う。ほら着いたぞ」



 愛し子の家と呼ばれる店舗物件は、淡いペールグリーン色の外壁の可愛い見た目の小さな建物だった。大きな横長の窓がついていて、中は見えないが、陽射しが柔らかく入っているみたいだ。木製の扉が、建物に木の持つ優しい風合いを足して、温かみを感じる魅力的なお店だった。横から見ると、小さいお庭もついているみたいで、ぐぐっと私のテンションが上がる……!



「カイル、素敵なお店だね! 早く中を見たい……!」

「そうだな、見れたらな」

「え……見れないの?」

「鍵はここに御座いますよ」



 ピオーネさんが、懐のポケットから真鍮の鍵を取り出してくれる。なんだ鍵が無くて中に入る事が出来ないのかなと思ったよ……! ピオーネさんが私の手のひらに乗せてくれた小さな真鍮の鍵は、複雑な模様を描いていた。今までは、ピオーネさんが店舗物件を開けてくれていたのに、どうして鍵を渡されたのかなと小首を傾げる……?



「愛し子の家は、家が人を選ぶのですよ」

「……?」

「お前がその鍵を使って、鍵が開けば資格があるんだ。開けてみろ」

「え……!」



 さらっと大事なことを言ったよね……? 開かなかったらどうしよう……と、真鍮の鍵を見つめて悩んでいると、「最後に店が開いたのは、50年以上前だね」と、ピオーネさんがパチっとウィンクして来た。「今更開かなくても不思議じゃないから気にするな」とカイルにもニヤリと笑われた。



「よし……やってみるね」



 2人に励まされた私は、木製扉の前に立った。ひとつ深呼吸をして、どうか開きますように……と祈りながら、鍵穴に、真鍮の鍵を差し込んだ。



 ……ぽわぁ……!



 鍵穴から淡いミントグリーン色の光が溢れ、同時に、カチリと鍵が開く小さな音が、耳と手の感触に響いた……一瞬、家全体が光ったように見えた……?



「開いた……みたい……?」

「そうだな」

「そうですね」



 驚きで、思わず呟いたのに、カイルもピオーネさんも普通に受け止めていた……不思議に思い、小首を傾げると、2人からは「お前(リマニーナ嬢)なら開けそうだと思っていた」と言われてしまう……



「わあ……! 素敵だね……」



 愛し子の家の中に入ると、先ほど見た大きな横窓から日差しが入りとても明るい。小花と葉っぱの模様の淡いクリームの壁紙が温かく、清潔感もある。いくつかの木製の棚と白く塗られた木製カウンター、その上に3つ並んだガラスのペンダントライト……優しく落ち着いた雰囲気だった。



「カイル、お庭も見てもいい?」

「庭があるように見えてたのか?」

「え……?」

「リマニーナ嬢、愛し子の家は、鍵を開けた人の望む家になると言われています」

「そうなんだ……?」

「愛し子の家には、空間拡張魔法や時間保存魔法など様々な魔法が施されているみたいで、前の持ち主は、1階のみでお店と居住をしていたと物件資料に記載されています。私も商業ギルドに勤めて長いですが、愛し子の家に入るのは初めてなんですよ」



 ピオーネさんが、パチっとウィンク付きで教えてくれた。確かに50年以上前から誰も入っていないのに、埃ひとつないなと納得してしまう。



「本当に使いやすそうなお店だね」

「確かに空間拡張魔法が施されてるな……」

「実際に見てみると、凄いものですね……」



 1階は店内の他に、大きすぎ狭すぎない清潔なキッチンと応接室と在庫を置くことができる部屋があった。……見た目が小さな建物なのに、こんなに部屋数が収まっていて、空間拡張魔法が施されていると知っても不思議な気持ちになった。



「2階に上がる前に、お庭を見てもいい?」



 お庭に続く扉を開けると……我が家(エディンリーフ)のお庭よりは狭いが、それでも充分に広いお庭だった……陽当たりも良く、しゃがみ込み、土に触れると、私を歓迎する様に、風が柔らかく頬を撫でていくのを目を閉じて受け入れる……



「カイル! ここに決めた……!」



 カイルを見上げて宣言すると、「ああ、いいぞ。2階はまだ見てないし、価格も聞いてないけどな?」とくっくっと笑われ、愛し子の家……すごく高かったらどうしようと青ざめる私を見て、「リマニーナ嬢、大丈夫だよ」とピオーネさんがパチっとウィンクして笑っていた。



「愛し子の家の買取価格は、金貨20枚なんだ」

「え……?」

お前(つるぺた)な50年以上前から開かない家だぞ?」

「あ、なるほど……」

「そうなんだ、時間保存魔法が施されているから商業ギルドの管理の手間はないけど、借り手や買い手がつく事が殆どないからね。リマニーナ嬢の回復薬(ポーション)の売上から商業ギルドに収める金額の方が魅力的だよ」

「……ガンバリマス……」



 ピオーネさんの商売人の一面を見て、カタコトになった私をカイルがニヤリと笑っていたので、むぅと睨むと、「ほら、2階も見るぞ」とカイルに背中をぐいぐい押される。


 愛らしい模様が彫られた白い手すりの木製階段を上がり、2階へ行くと、いくつかの部屋があり、休憩スペースになりそうな部屋、簡易キッチン、事務作業や打ち合わせに使えそうな部屋、そして奥にはゆったり寛げそうな大きなソファの部屋があり、その奥にまた扉があった……



「この扉の先も部屋なのかな……?」



 ソファの部屋の奥に部屋がいるかな……もうこれ以上の部屋数は要らないなと思いながら扉を開けると……



「ここって……?」



本日も読んで頂き、ありがとうございました!


なかなか更新出来ずにすみません。

次回でお店の話しは終わるつもりです。その次は…やっぱりアレを書きたいと思っています!


本日もお疲れ様でした。

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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ヘッダ
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