120.店舗探し
青い空に白い入道雲、魔法学校も夏休みに入り、植物たちも鮮やかな色と色を互いに際立たせる盛夏を迎えた。昨日は入道雲が夕立を呼び、大粒の雨を地面にたたきつける様に降った——
今日はカイルと商業ギルドへ店舗を探しにやって来た。副ギルド長のピオーネさんが店舗物件の案内をしてくれるという。応接室へ案内され、私とカイルが座るのを見て、ピオーネさんが口を開く。
「店舗物件を見に行く前に、少し説明しますか?」
「はい、お願いします」
カイルからも簡単に説明を受けているが、ピオーネさんからもきちんと聞いた方が良いと言われているので、お願いをする。
「商業ギルドが所有している店舗物件は、買取、賃貸があり、どの店舗物件も、買取、賃貸を選ぶことが出来ます」
「選ぶ店舗は、買取をお願いしたいです」
「今回は専門店街の店舗物件をご希望ということでいいのかな? リマニーナ嬢の回復薬であれば、大通りの店舗でも良いかと思ったけどね」
ピオーネさんがバチッとウィンクをして来る……あ、そうだった、軽いノリの人でした。
「大通りの店舗だと営業時間や日数の制約があるので……」
「確かにそうだね。専門店街の店舗物件だと最低金貨20枚からになるかな。よし、このまま話しても時間が勿体ないし、早速見に行こうか? ピオーネお勧めを3物件、選んでいます。もちろん、他の店舗物件も見ることも出来ますよ」
「よろしくお願いします」
大通りの店舗は、エディンリーフ店の様に大きな店舗が殆どで、営業時間や日数の制約が厳しく、多くの人を雇う必要がある。まだ私が学生な事や、今後、出産など長期休みの可能性を考えると、比較的ゆるい制約の専門店街がいいとカイルと話し合ったのだ。
賃貸ではなく、購入にするのもリマニーナ・エディンリーフの内に、個人資産で持つべきだと言うカイルのアドバイスである。
それにしても最低金貨20枚からか……やっぱり店舗を買うのは高いんだな……
チラリとカイルを見ると、ポケットから折り畳んだ紙をピオーネさんに渡すところだった。
「その3物件の他に、ここも見せて欲しい」
「……ほお、これは……」
「ここは最後で構わない」
カイルの言葉に納得した様にピオーネさんが頷く。何だろうと小首を傾げると、カイルと目が合い、「あとでのお楽しみだな」とにやりと笑われる。
◇ ◇ ◇
「カイル、すごくお洒落なお店だね」
ピオーネさんに案内された1つ目の店舗物件に足を踏み入れた。
外装は落ち着いた色のレンガで造られて、中は商品を置く棚とガラスのショーケースが設置されていた。元々は宝石屋さんだったらしい。十分過ぎる広い店内と奥にもう1部屋、2階もある。1階はお店、2階は居住に兼用できるようになっている。
「ここは広いな」
「少し広めの店舗になりますが、落ち着いた雰囲気が特徴ですね。設備は、商業ギルドで定期的にメンテナンスと掃除を行っているので直ぐに使えます」
「ここの買取価格はいくらだ?」
「こちらは金貨60枚ですね」
カイルとピオーネさんが、棚やショーケースを見ている間に、私の後ろで話している。……さすがカイル! 頼りになります。金貨60枚……か。
2階も見せて貰い、1つ目の店舗物件の見学を終えた。
「お洒落なお店だったけど、住むつもりはないかな……?」
「王子様に、ここに住むって言ったら腰抜かすだろ」
「じゃあ、カイル達が住むのは?」
「お前の世話は誰がするんだ?」
「あ、困るね……」
カイルと話しながら歩くと、2件目の店舗物件にたどり着いた。
「ここが2件目の店舗物件です」
「カイル、ここ可愛いよ!」
次の店舗物件は、淡いピンク色のレンガのすごく可愛らしいお店だった。
白い木枠のついている窓から日差しが入り、とても明るく感じが良い。お店の広さは1件目の半分くらいかな……? 以前は女性が好んで来る焼き菓子のお店だったらしく、内装も花柄やピンク色と、とても愛らしい。ただ、販売スペースよりキッチンがとても広い。回復薬を作るときに作業場所は欲しいが、ここまで広くなくてもいいかな……と思った。
「ここはお前が好きそうだな」
「うん! とっても可愛いと思うけど、キッチンが広すぎて落ち着かないかも……」
「意外と冷静だな? ここに決めたって言うのかと思った」
「リマニーナ嬢の雰囲気に合ってるでしょう? ここの買取価格は、金貨35枚だよ」
2階も上がって見せて貰うと、休憩するスペースと倉庫のような商品の在庫を置けるスペースがあった。この店舗物件は、居住する場所はなく、全てが店舗用みたい。
「在庫スペースが上の階なのは、不便そうだな」
「あ、確かに……」
さすがカイル! 私なら気付かなかったよ……頼りになるね、付いていきますと心の中で思っていると、「任せておけ」とニヤリと笑うカイルと目が合った。エスパーだね……
「ここが3件目の店舗です」
「……はい……」
ここまでの2つの店舗が素敵だったので、ギャップが凄くある……外観は、黒いレンガの建物にびっしりと蔦が絡まり、少し錆びついた鉄の扉の建物。悪い魔女が住んで居そうな雰囲気と言ったらいいのかな……扉に触れると、ひんやり冷たい。中を恐る恐る覗くと、うん……魔女が使いそうな竃があって……うん、これは……
「……ちょっと、怖い……かな?」
「いやいや、無しだろ」
少し考えながら答えると、カイルに突っ込まれた。「やっぱり駄目だったかい? 主な販売が回復薬だから効きそうな雰囲気かなと思って、念のためにさ」と、ピオーネさんがパチッとウィンクして来た……
怖さは求めていないので、中に入らないまま、店舗物件を後にした。最後にカイルが気になる物件を見に行くことになった——
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
気付けば120話……100話くらいで完結じゃなかったのかと、セルフ突っ込みしています♪(´ε` )
そして、そして、ようやくスペースの入れ方が分かりました!え、今更?と思うでしょうが、何故だかスペースを入れても反映されなくて、不思議だなと思うまま119話まで書いていたのです……まあそれも相変わらず自分のスマホのスペースは反映されず、ほかのスペースをコピペしているだけなんですが……笑。
ここからは回復薬の話しが少し続くと思います◎
よろしくお願いします!
今日も頑張りましょう(*^_^*)















