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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
5歳は異世界生活のはじまり
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12.レモンタイムの香り

少しずつ改稿しています。

この話から「//」の表現を使っていたみたいで、直すのがややこしい(´ε` )



 ああ……この世界にも同じ虫がいるんだね。

 私もお庭のププリュの木は、全く嬉しくない。



「……アブラムシ」



 ため息と一緒に呟いた。

 アブラムシは、小春のいた世界でも名前はよく耳にするような虫だけど、植物にとっては油断出来ない立派な害虫なんだよね。

 葉っぱについて、木の汁を吸って、木を弱らせてしまう害虫なの。更にアブラムシの排泄物は、違う病気の原因にもなるし、繁殖力が強いから気付いたら大量に発生することも多いやっかいな害虫なんだ……。



「リマ様? ……リマ様?」


「……うん? あ、ごめんなさい、マリィ」



 アブラムシについて考えていたらマリィの声が聞こえていなかった。「あのね……」とマリィに言いながら、ゆっくり問題の枝を指差した。



「アブラムシが思っていたより沢山いたからどうしようかなと思って……きゃあああ…………!」



 マリィの悲鳴か自分の悲鳴か分からないが、これは落ちる……!

 目をぎゅううっときつく瞑り、衝撃に備える……



 ……


 …………



 きつく瞑っている瞳の中にも、煌めく光が眩しいと思ったら、今度はぶわっと強く風が吹き上がり、自分が重力に逆らい、ふわりと浮かぶ感覚がした……!


 マリィから離れた感覚もあり、閉じていた目を少し開けると、ふわりと爽やかでほろ苦いレモンタイムみたいな香りが頬を撫でた……



「リマ、おいで」



 ラルクが両手を広げて、見上げていた。私も両手をラルクに伸ばすと、私はゆっくりラルクに向かって落ちて行き、ラルクに抱き留めてもらった。先程感じた爽やかでほろ苦い香りに包まれる。

 顔を上がると、心配そうに私を見つめるラルクの黄金色の瞳と目が合い、「リマ、大丈夫だった……?」私に優しく話しかけてくれる。遅れて、私はラルクに助けてもらったのだと気付いた。



「……っ! あ、ありがとう……だ、だ、いじょうぶだよ」



 脚立から落ちた事やラルクが助けてくれた事も、遅れて驚いてしまい、噛み噛みのお礼になってしまった……。



「本当に平気? リマにケガが無くてよかった……」



 黄金色の瞳に、安堵の色が浮かんだのを見て、私も知らない間に力が入っていた緊張が、ゆるりゆるりと溶けていくのを感じた……「ラルクが助けてくれたから、ケガはないよ。ありがとう」と今度は噛まずに、笑って、きちんとお礼を伝えることが出来た。


 あれ?

 マリィは……?

 私と一緒に脚立から落ちたよね……!

 私のせいで落ちたのに、一瞬でも忘れていた私はすごい酷いよ!



「……マリィ!」



 マリィの名を呼びながら周りを見渡すと、マタルさんがマリィを優雅に地面に下ろすところだった。マリィに怪我が無さそうで、ほっと息をつく。マリィを優雅に下ろしたマタルさんがこちらを見て「リマ様、お怪我がなくて何よりでございます」と優雅に微笑んだ。



「マタルさん、マリィを助けてくれてありがとうございます!」



 マリィに怪我がなくて本当に良かった……と思っていると、私の頭を優しく撫でる感触を感じて、そちらを見るとラルクが私を優しく見つめていた。



「マタルは優秀だからね。マリィも大丈夫だよ」

「うん。ありがとう!」



 ラルクの黄金色の瞳が、更に近付いて来て、先程頬を撫でた爽やかでほろ苦いレモンタイムの香りがますます強く匂い立つ……「……リマ」ラルクの小さな声が身体に響いて私に伝わった。



 ラルクに抱きしめられていた……!



 抱き締められたのは、はじめてで……恥ずかしくて自分の体が心臓になったみたいにドキドキと心臓の音が響いている中で、ラルクのぬくもりが、唯一安心出来るものな気がして……私もラルクの背中にリマの小さな手を伸ばして、抱きしめた。


 ラルクが一瞬息を飲んだ気配がしたけど、私はぬくもりが欲しくて、そのまま更にぎゅっと抱きしめた。「……ラルク、本当にありがとう」声が上手く出せなくて、囁くようになってしまったけど、きっとラルクには聞こえたと思う。



 私を抱きしめる力がぎゅっと強くなった……



 時間にしたら数秒か数分の事だったと思う。「ラルク様、リマ様がつぶれてしまいますよ」少しからかうようなマタルさんの声がした。



 ああああ……!

 きゃあああ……!

 マタルさんもマリィもいるのにラルクと抱き合ってる!



 慌ててラルクに回していた手を離したのに、ラルクの腕はそのまま抱きしめたままで、ラルクから離れられない……!



「……っ? ラルク?」


「もう少しこのままでいたらいいのに?」



 更にぎゅっと抱きしめられて、あわあわと慌てていると、「ラルク様、ほどほどにしませんとリマ様に嫌われますよ」とマタルさんの呆れたような声がした。



「そうだね。リマに嫌われたら困るね」



 ラルクが腕を緩めて、私の頭をぽんぽんと優しく撫でて、黄金色の瞳をいたずらっ子みたいにキラキラさせて笑っていた……ラルク、心臓が持たないよっ!

 顔に熱を持ったままラルクから少し離れようとすると、マリィが真っ青な顔で……



「リマ様、先程は申し訳ありません!」


「ううん? マリィこそ虫が苦手なのに、あんな近くで見て、大丈夫だった……?」


「私は大丈夫です。リマ様にお怪我がなくて本当に良かったです……」



 私のお願いのせいでマリィが怪我をしなくて良かった。「マリィが怪我をしなくてよかったよ。マタルさん、本当にありがとうございます」と再びマタルさんにお礼を伝えた。

 誰も怪我をしなくて良かったな! と呑気に思っていたのは、私だけだったみたいで…………

 




「ねえリマ、なんであんな危ない事をしていたか、教えてくれる?」

やっぱり話は進まないけど、ラルクとリマのやりとりが好きです。


次はププリュを進めるつもりです。



◇◇◇


R2.1.19

改稿した部分を読んで頂き、ありがとうございます!

今、新しい小説を始めていて、そっちを書きつつ、こっちも少しずつ改稿しています。

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