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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
17歳は4年生のはじまり

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119.執事のこれから



 夏至祭も終わり、植物(プランツェ)所属の活動に蝉の鳴き声が聞こえ始めた。朝顔の伸びすぎた蔓や葉の剪定を終えて、青々と青葉を茂らせた生命力溢れる夏木立(なつこだち)の日陰に入ると、優しい涼しさにフローリアと一緒にほっと息をつく。フローリアが少し考えた様な顔をした。



「リマ、貴方の執事はエディンリーフを離れますの?」

「……どうして?」

「個人的にお店を探していると噂で聞きましたの」

「カイルがお店……?」

「ええ、リマの執事を王宮へ連れて行くのは出来ませんでしょう?」

「うん……」



 ラルクと結婚する時、侍女の帯同は許可が出ており、マリィが一緒に来てくれるが、独身執事のカイルを連れて行くのは許可が下りなかった。それでも、カイルはエディンリーフ店に残るものだと思っていたので、フローリアの話は衝撃を受けた。


 植物(プランツェ)所属の活動を終え、マリィが待つ馬車へ乗り込み、勢いよくマリィに質問する。



「マリィ、カイルはどこにいる?」

「カイルですか?本日はエディンリーフ店でリマ印回復薬(ポーション)の打ち合わせを行っておりますよ」

「じゃあエディンリーフ店に寄ってもらえる?カイルに聞きたい事があるの」



 私の勢いに押された形で、エディンリーフ店へ向かって貰い、馬車が到着すると、当たり前の様にお店の前でカイルが待っていた。エスパーなのかな?



「カイル、エディンリーフ店を辞めるの?」

「アルベルゴ家のお嬢様ですか?」

「フローリアがカイルがお店を探してるって言っていたの」



 くっくっとカイルが笑い、立ち話しの内容ではありませんので、とエディンリーフ店の応接室へ案内される。マリィが私を落ち着かせる様に、ゆっくりと優雅な動作で、私の好きな紅茶を入れ終え、こくんとひと口飲む。甘くて優しいマリィみたいな味がした。


 猫かぶりをペイッと剥がしたカイルが口を開く。



「結婚した後、回復薬(ポーション)をどうしたい?」

「え………?今までと同じようにしたい……かな」

「第2王子の妃がエディンリーフ店に卸す事は無理だぞ」

「あ……私のお店を探してくれていたの?」

「まあな。店を開店するまでは手伝えるからな」

「開店するまで……なの?」

「そうだ、俺はエディンリーフ家に雇われてるからな。お前に雇われて、執事をしているわけじゃないぞ」

「…………そうだよね」



 当たり前の事を言われたのに、頭を殴られたみたいだった……カイルがリマ印回復薬(ポーション)の販売や交渉をしてくれているから、今まで、私は回復薬(ポーション)を作るだけで良かった。

 私だけで回復薬(ポーション)を販売するのは出来ないだろう……



「リマお嬢様の望むことを教えて下さい」



俯きかけた私にカイルが穏やかな声で尋ねる。その目は、揶揄(からか)うわけでも、好青年のふりをするわけでも無く、真摯に質問されたのが分かった。



 …………私の望むこと……?



 それを口に出しても良いのか躊躇うが、真摯に問われた以上、私も真摯に答えたいと思った。



「カイルに付いて来て欲しいし、回復薬(ポーション)販売を手伝って欲しい」



 これが本心だった。優秀なカイルは、エディンリーフ店の今後の重要な役割を担う筈だし、カイルの将来を考えれば、このままエディンリーフ店に残る方が良いと思う……だけど、私はカイルを信頼していて、回復薬(ポーション)販売を他の誰かに任せるのも考えられない、何よりこのままカイルが居て欲しいと思う……本心を伝えても、王宮の許可が出ない以上、無理だと思うけど、カイルに自分の気持ちを伝えたいと思ったのだ。



「リマお嬢様、畏まりました」



 カイルが王宮の交渉は任せておけと笑顔で言い、回復薬(ポーション)販売の準備で忙しくなるから王子様と会う時間が減るから覚悟しておけと告げられた。あれ?もしかして、もしかしなくても、大変な人にお願いしたかも……?と思ったけど、後には引けないなと思い、こくんと頷く……



 あれ?さっきまでの真摯なカイルがいない……?悪い笑顔でこちらを……いや、後ろを見てる……?後ろにいるのは……マリィだけな筈……?あれあれ?と小首を傾げる内に、カイルがいつの間にかマリィの横に並んでいた。



「マリィ、リマお嬢様(つるぺた)の言質は取ったぞ」

「……ずるいです」

「今更だな。返事は?」

「…………お受けします」



 マリィが頬を染め、破顔したカイルが、応接室の扉を開けた。お母さんが隠れていたみたいだった。何してるの、お母さん……



「奥様、約束通り、お嬢様とマリィの言質を取りましたよ」

「あら、隠れていたのに、やっぱりばれてた?カイルには敵わないわね。カイルにはエディンリーフ家のこれからの重役に就いて貰おうと思っていたのに、残念だわ」

「勿体ないお言葉です」

「本当よ?カイル、マリィ、おめでとう」

「ありがとうございます」

「奥様……ありがとうございます」



 ……私、完全に置いてけぼりだよね?えっと、マリィとカイルがおめでとう……?小首を傾げる私にカイルがくっくっと笑う。



「マリィがリマお嬢様の侍女として付いて行くからと、結婚の申し込みに頷いてくれなかったんだよ。で、リマお嬢様が俺を必要としていて、王宮に付いて来て欲しいって言質が取れたらって無茶苦茶な条件付きで、返事を貰ったんだよ」



「……カイルの好きな人ってマリィだったの?」



「リマは相変わらずね?カイルが貴方の執事になってからずっと付き合ってたわよ」

「そうなの……?」



 そんな前から付き合っていたのにも驚いたけど、全然気付かなかった自分にも驚いた……でも、そんなことよりも……大好きな2人が結婚する!



「カイル、マリィ、おめでとう」



「リマ様、ありがとうございます」

「お嬢様、ありがとうございます」



 笑顔で2人に告げると、カイルとマリィが幸せそうに見つめ合い、笑う姿はこちらも幸せな気持ちになった。

 カイルが私を見ると、ニヤリと笑い、こう言った。



リマお嬢様(つるぺた)次第だって言っただろ?」





 この後、カイルがあっという間に、マリィと一緒に王宮へ帯同する許可を得たのは言うまでもない——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


昨日、間違えて完結済みにしてしまいましたm(._.)m

すみません。

まだもう少し続くので、お付き合い頂けたら嬉しいです◎


今日もお疲れ様でした!

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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ヘッダ
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