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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
17歳は4年生のはじまり

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118/136

118.夏至祭の前夜



朝露でキラキラと輝く我が家(エディンリーフ)のハーブ(ガーデン)へ足を運ぶ。

この時間はハーブの香りが豊かなので、薬草摘みの花束を摘みたいなと思い、朝早く来たのだ。それにもうひとつ目的があって……


誰もいないのを確認して、裸足になった。ハーブ(ガーデン)は、落ち着くために、楽しむために、小石や松ぼっくりなどが敷かれた道を作ってある。この道を裸足で歩くと、太陽の恵みをたっぷり浴びた豊かなハーブの香りに癒される。裸足で歩くだけで開放的な気分になるし、凸凹のある松ぼっくりに足つぼが刺激されて、痛さもあったり、意外と気持ちよかったり。


ラベンダー、ローズマリー、ゼラニウムなどがきれいな花を咲かせている中、ふふっと歌いながら歩いていく。目的のセントジョンズワートの前で足を止める。


ラルクの黄金色の瞳の様な鮮やかな黄金色の小花は愛らしく、摘む前に思わず、自然とうふふと笑みが溢れてしまう。大切に少し摘むと、次はラルクの香りを思い出すレモンタイムを植えてあるハーブ(ガーデン)へ移動する。たっくさん植えてあるのだ。


薄藤色の小花を咲かせ、風に揺られるレモンタイムはとても愛らしく、少し多めに摘んだ。レモンタイムの横のレモンバームもレモンの香りが爽やかで、なによりラルクの爽やかさを思い出すし、丸い葉っぱが可愛い。うんうん、3種類でも既にかわいいぞ。



「まったく、執事を置いていくなよ」

「カイルおはよう」

「まあ確かに裸足で歩くのは、淑女のすることではないもんな」

「あ……」



くっくっとカイルに笑われる。小春の世界の感覚で裸足くらい気にならないのだが、こちらの世界で裸足で歩くことはまず無い。だから誰もいない時間に来たのだが……エスパーカイルにはお見通しだったみたい。



「ほら支度するぞ」



カイルがさっと膝に手を入れて、抱き上げる、所謂、お姫様抱っこの状態になり、あわあわと慌てる。



「足に傷がつくと困るだろ」

「……自分で歩けるから下ろして」

「お前の歩きだと進まないからな。しっかり捕まってろ」



カイルにお姫様抱っこされたままなのが、気まずくて、とりあえず思い付いた話題を口にする。



「カイルは今年薬草摘みするの?」

「ああ、今年はお嬢様(・・・)の庭を使わせてもらうつもりだな」

「…え!上手く行きそう?」



エディンリーフで働く人は、薬草摘みを我が家(エディンリーフ)のハーブ(ガーデン)で摘んで良いことになっているのだが、カイルは本命が出来たらなと言って、毎年摘んでいないのだ。



つるぺた(リマお嬢様)次第だな?」



くっくっと笑うカイルに小首を傾げる。私、次第……?



「……くしゅん」



先ほどまで暖かい陽気だったのに、急に肌寒く感じ、思わずくしゃみが出てしまう。寒さの余りカイルにひっつくと益々寒気が出て来る……風邪引いた、とか?



「リマおはよう」



パッと声のする方を振り向くと、ラルクが立っていて、とても驚いた。最近は王家の馬車で来る事はあっても、魔法移転する事は殆どなくなっていた。それに……今は朝の早い時間なのだ……どうして?



「リマをこちらへ」

「ベンチまでお運び致します」

「いや、婚約者の僕が運ぼう」



考えに耽っていたらしい……リマ?とラルクに呼び掛けられ、視線を向けると、ベンチに座っている状況だった。



洗 浄 (ザオバー)



ラルクの手が、青色に輝くと、私の裸足のままの足を包み込み……綺麗になった足は、カイルによって手早く靴を履かせられた。連携が絶妙過ぎて、2人にお世話をされている恥ずかしさも忘れて、見てしまった……



「リマ、もっと可愛い花を入れてくれない?」

「…え?」

「薬草摘みの花束」

「あ………これは……」

「僕と交換用じゃないの?」

「えっと……ラルクの夢が見たくて……ラルクの花束を作っていたの……」

「……リマかわいい」



破顔させたラルクにぎゅっと抱き寄せられる。やっぱりレモンタイムの香りがして、胸がきゅうっと甘やかで切なくなる。



「じゃあ一緒に選ぼう?」



こくんと頷くと、ラルクに手を引っ張られ、ハーブ(ガーデン)を2人で歩き出す。

ラルクに今摘んだハーブを伝えると同じ様に摘んでいく。



「リマはこれとこれとこれ、かな?」



ラルクの指差した、カモミールとすずらんと野ばらの花を加える。セントジョンズワート、レモンタイム、レモンバームを含めて6種類の花束ができた。



「あとひとつはどうする?」

「リマが可愛くなるからラベンダーかな?」

「……いじわる」



ラベンダースプレーを使った時に、色々恥ずかしい事を言った自覚があるので、むぅと睨む様に見上げると、リマかわいいとおでこに口付けを落とされる。髪をするりと梳き撫で、頬に手を添えられる。甘やかな予感に、瞳を閉じると、



「あー……そろそろ支度しないと間に合いませんよ?」



カイルの声で、パッとラルクから離れる。穴があったら入りたい……顔に熱を持つ私は、ラルクに隠れる様に、こくこくと首を縦に動かす。ラベンダーを摘んで7種類になった薬草摘みの花束を2人で交換した。同じ種類の花束でも、ラルクが摘んだ花束だと思うと、頬が緩むのが分かった。



慌てて支度をしても、植物(プランツェ)所属恒例、魔法学校の生徒達の薬草摘みをお手伝いする時間にはギリギリになってしまった……フローリアにどうしましたの?と聞かれ、真っ赤になった私を見て、チェダにやれやれと首を振られてしまったのはお約束……




その夜は、ラルクが夢に現れて、ラベンダー畑で甘やかな口付けを何度も何度もする夢を見た——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!



先日も誤字脱字報告をありがとうございます◎

嬉しいです!

バタバタしていて更新が遅れています……でも今年中に完結出来たらいいなと思っています(*^_^*)


今日もお疲れ様でした!

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