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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
17歳は4年生のはじまり

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117.薬草摘み



(フランメ) (ヴァント)



私の手が真っ赤に煌めくと、炎の壁を作り出し、私と周りを囲むように炎が燃え盛る……その炎の壁を維持したまま、魔法をもうひとつ生み出す……



火 炎 竜(ブレンメンドラーゴ)



私の手が真っ赤に煌めき、目の前に魔法の火炎竜が現れ、標的に向かって炎を吐き出すと、標的が真っ黒に焦げ付き消えるのを確認し、火炎竜を消す。



「リマニーナ・エディンリーフ、文句無しの合格じゃな」

「ありがとうございます」



4年生に進級した私は、火の上級魔法の授業中だ。今後の進路によって必要な魔法が違う為、4年生の多くの上級魔法は選択制になっている。

攻撃魔法が多い火の上級魔法は王宮魔導士を目指す者は必須科目になるらしい。

合格を貰った私は、最初に合格を貰ったラルクの待つ、暑さを和らげる魔道具を使った空間へと向かう。



「リマ上手だったね」

「ラルクありがとう!合格しないとマタルさんに火花の魔法を教えて貰えないもんね」



マタルさんに火花の魔法は、難しく危険があるから火の上級魔法の授業で全て合格を貰ったら教えてもらう約束になっている。火花の魔法で、ラルクと一緒に花火を打ち上げたいから頑張るぞと、気合いを入れる。


ラルクの手が頭をぽんぽんと撫でる感触に気付き、見上げると、黄金色の瞳にほんの少の甘やかさを宿しているのに気付き、ドキンと心臓が跳ねる。



慌てて、一歩下がると、ラルクが一歩近付く……



「ラルク、そういうの止めろって」

「なんだチェダ、合格するの早いな」

「なんだはこっちの台詞。ラルク、この授業必要ないだろ」

「リマがいるから必須だな」

「いやいや、クラスも同じ、選択授業も全部同じにするなよ!俺がラルクを止める役として同じ選択授業受けることになるんだよ」

「頼んだ覚えはないけど?」

「俺が他の奴等から頼まれるんだよ!」



チェダとラルクと同じクラスになるのは1年生以来だけど、2人はずっと同じクラスなのもあって、とても仲が良い。男同士の友情っていいなと思って、ふふっと笑うと、チェダにじろりと睨まれた。



「リマ、負けるな」

「う、うん?」



何か勝負をしていたかな?と理解出来ずに、小首を傾げながら答えると、ラルクにリマかわいいと頭をぽんぽんと撫でられ、チェダにやれやれと首を振られてしまった。



「まあいいや。リマ、夏至祭の打ち合わせするから放課後に集まるぞ」

「うん!チェダ所属長(・・・)

「その呼び方やめろ。ムズムズする」



チェダは図書室で調べたい事があるからと先に戻って行き、ラルクと直ぐに教室に戻ろうと思ったのに、気付けばいつもの(・・・・)人気のない木陰に立ち寄っていた……



「一コマ空き時間だからね。嫌だった?」

「……いじわる」



嫌じゃないって分かってるのに……ちょっと睨むと、ちゅっとおでこに口付けを落とされる。その後、少し頭を梳き撫でると、



「じゃあ戻ろうか?」

「……いじわる」

「そう?」

「…………」


ラルクが立ち上がろうとするので、制服の裾を摘まみ、ラルクを見つめる……



「……もっと一緒にいたい……」

「よく出来ました」



ラルクが嬉しそうに破顔させる。その途端、黄金色の瞳が甘やかになり、色香漂い、その色香に吸い寄せられる様に、目を閉じる。

一コマの空き時間、甘やかな口付けの時間になった……



「リマ、夏至祭は一緒に過ごそうね」

「……うん」



ラルクが嬉しそうに目を細め、くすりと笑う。最後に甘やかで優しい口付けを交わす。




夏至祭(げしまつり)は、夏至に行われるお祭りだ。冬の長いラシャドル王国は、緑が美しく、花が咲き誇ることを感謝する日なのだ。

夏至祭の当日、女の人は自分で作った花の冠を作るための花を摘むため、近くの森や林に行く。その後、焚き火を囲んでみんなで踊る。


でも、魔法学校の生徒にとって1番のお楽しみは「薬草摘み」だと思う。

夏至祭の前夜7種類の薬草や野花を集めて作る花束を、枕の下に置いて寝ると、夢の中に未来の結婚相手が見えると言われている。


自分で作った花束を置くのが基本だが、私の、僕の、夢を見ますようにと願い、意中の相手に送ることもある。魔法学校の生徒は、学校の庭の野花や薬草を花束にして、意中の相手に渡すことも多い。恋人同士の場合は、一緒に花束を作って交換をする。



「フローリアはレイモンド様と交換するの?」

「当たり前ですわ。毎年、レイモンド様の瞳の色が入った花束を貰いますのよ」

「わあ、素敵ね。レイモンド様を夢で見たことある?」

「もちろんですわ」



チェダと少し遅れて打ち合わせ場所に到着すると、アミーとフローリアが楽しそうに話しているのが聞こえた。私達に気付いたアミーに、



「リマはラルク様の夢を見たことあるの?」

「………ないの」



ふるふると首を横に振りながら答えると、3人に驚かれてしまった。

ラルクの夢を見たことはあるけど、夏至祭の前夜に夢で見たことはないんだよね……ラルクは毎年、私が現れるって言ってくれているだけに……たかが夢、されど夢……今年はラルクの夢が見れたらいいなと思ってるけど…………



「ラルク、今年は気合い入ってるだろうな」

「チェダ、人のことばかりではなくて、自分のことも考えた方が宜しくてよ?」

「……分かってるよ」





夏至祭の前夜に向けて、みんなの想いが巡るのだ——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


更新が遅くなりました。

書いては消してを繰り返していたら夏至まで季節が進んでいました。

しかも書ききれず…分けます(*_*)


今日もお疲れ様でした。

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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