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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
16歳は3年生のはじまり

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114/136

114.ラベンダーの花束




「もう……あれは反則だよ…」



私は火照った顔を冷ますために、我が家(エディンリーフ)のハーブ園にいる。王宮から戻ると、着替えもそこそこにラベンダー畑で、ラベンダー摘みをするのが習慣になっている。

初めて別邸から戻った日、火照りが引かず、ラルクの甘い口付けや言葉を思い出して全然眠れなかった……



ラベンダーを1本ずつ丁寧に摘んでいくと、ふわりと柔らかな甘さが漂い、心が落ち着く……



向日葵の花が嬉しかったこと…外で口付けをしたこと…一緒に住む話しをしたこと…喉仏にそっと触れたこと…もっとひっつきたくてソファで正面から抱きついたままでいたこと…おでこをぴたりと合わせて話しをしたこと……を思い出すと、自分のはしたなさに、恥ずかしくて叫びたい様な、体の奥がきゅううっと切なくなる様な、もうラルクに会いたい、触れたい、甘やかで切ない感覚になる………



またラベンダーを1本ずつ丁寧に摘んでいくと、ふわりと柔らかな甘さが漂い、心が落ち着く……これを何度も繰り返し、両手にラベンダーの花束が出来る頃…




バチン!と大きな音が鳴り、花の精霊が現れた……




「や、や、ややややあ……?」

「………?」



大きな音に驚いたけど、余りに慌てている花の精霊を見たら小首を傾げてしまった。どうしたのかな?



「え、え、えええーとねー、当たりの実をも、もももらいにー?」

「今朝渡したけど………?」

「あ、あー、そうだったねーうんーありがとうねー」



こんなに慌てた花の精霊は初めて見たので、驚くのを通り越して、心配になる。私の持っているラベンダーの花束を花の精霊にどうぞと手渡す。



「落ち着きますよ…?」

「………」

「ラベンダー摘みはどうですか?」

「………する」



花の精霊にハサミを渡し、2人でラベンダー摘みをする。

チョキン…チョキン…とハサミの音がして、先程よりも柔らかな甘さが濃厚に香り立つ……



「王子さまが約束の場所に来なかったらどうする?」

「何かあったのかなと思って、心配するよ?」

「ずっとずっと待っても来なかったら?」

「私が約束の場所か時間を間違えたかも………」

「そこでさー心変わりしたとは思わないの?」

「………」



振り向いても花の精霊は背中を向けたまま、ラベンダー摘みをしていて、表情が分からない……でも初めて見る真面目な花の精霊に何て声を掛けたらいいのか分からないまま、沈黙をラベンダーの香りとハサミの音が包んでいく……



「僕がさー春の精霊をとじこめたから、色々な精霊に怒られたんだー中でもねー火の精霊は、春の精霊と仲が良かったからすっごく怒られたんだー」

「…そうなんだ」

「うん…。毎日毎日僕のところに来てさー怒っていくんだよーでもさ、ある日、春の精霊が氷の精霊を待ってる間、遊べなくなったから私と遊ぶのよ!って偉そうに言われて、本当は励ましてくれてたんだよー」

「優しい精霊なんだね?」

「いや、怖いんだよー」

「ふふっ」

「あー信じてないー」



「火の精霊が好きなんだ?」

「あー……好きだった……なのかな?」

「火の精霊はもういないの?」

「はぁー……いると言えばいるんだー…でもいないと言えばいないー…」



禅問答の様な答えに小首を傾げると、花の精霊が僕の言葉を聞いて、何の植物(プランツェ)か当ててみてと真面目な顔で言うので、こくんと頷く。




「秋の季節に、君にぴったりな赤い宝石を一緒に見たいんだ……そこで待ってて欲しい」




………え?

………これ難しいよね?なぞなぞみたい…

赤い宝石…秋の季節……宝石みたいなってこと?

宝石と呼ばれる植物(プランツェ)だと……さくらんぼ、山桃、マスカット……秋に実る………!




「分かった!ザクロでしょう?」




これだと思って自信満々に答えたら、花の精霊がすっごく残念な子を見る様に首を振る。



「はぁ………違うよー」

「難しいね…夕陽に染まる紅葉とか?それとも赤い実のなるアキグミ?」

「はぁ………違うよー!秋の赤い宝石といえば、魔力(マジー)百合(リーリエ)に決まってるよー」

「あー!なるほど!」




魔力(マジー)百合(リーリエ)は盲点だったかも……!



魔力(マジー)百合(リーリエ)は、小春の世界だと、花の形は彼岸花(ヒガンバナ)だと思う。

彼岸花も花と葉が同時に出る事がなく、ある日、いきなり咲いているという印象があるが、魔力(マジー)百合(リーリエ)はもっと突然に咲く花なのだ。

花が咲き終わると、咲いた場所じゃない場所へ球根が魔法移転しているのだ……咲く場所を予想出来ない花なので、見つけると幸せになれると言われている。王宮庭師さんが魔法移転を制御する庭で育てている魔力マジー百合(リーリエ)以外、見たことがない。



——咲く場所を(・・・・・)予想出来ない花(・・・・・・・)なのに…どうやって行けばいいのかな…?




「どこで咲くのか分からないのに、行けないよ?」

「あ…………!」

「…………え?」





ああ…もうっ…と呟いた、花の精霊がラベンダーの花束に顔を埋める様に、ゆっくり倒れていった………

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


花の精霊編はもう少し…です。

なんとか書き終わりたいです…温かく読んで頂ければ嬉しいです(*´-`)


本日もお疲れ様でした◎

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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