113.王子と花の精霊
「あー……可愛かった……」
リマの為に育てた向日葵の花の前でしゃがみ込み、膝に顔を埋める。今日のリマの反応を思い出すと、可愛すぎて、しゃがみ込まずにはいられない。勿論、こんな姿、別邸でしか出来ないが……
「あれはグッと来ちゃうよねー」
音も無く現れた花の精霊に、仕方がなく立ち上がる。
「覗き見とは、精霊なのに趣味が悪いな」
「えー、覗かれてるのに、見せつけるような情熱的な口付けする方が趣味わるいよー」
花の精霊が音も無く現れる様になったのは、向日葵の種を蒔く頃からだ。
女の子は、僕に会うのに心の準備が必要でしょ?だそうだ。
「王子さまって見られると興奮するタイプでしょー前のアプリコーゼの里も情熱的だったよねー」
「前のは、消毒だ」
「えーヒドーイ!」
「氷漬けにされなかっただけ有難いと思うけど?」
大袈裟にぶるりと震える花の精霊に溜飲を下げる。
悪いやつではないけど、リマにちょっかいを出すのは困るので釘をさすのは毎回忘れない。
「それよりー僕の言った通り、綺麗なひまわりだったでしょー」
「それは感謝している」
向日葵の種を蒔こうとしたら、この花はね、たっくさんで仲間みたいに育てるか、ひとつだけに愛情を込めた方が綺麗に咲くよーと言い、ひと粒ひと粒を指差して、この種は背が高いかなーこっちは花が小ぶりだけど、色が綺麗だなーと意外にも丁寧に教えてくれた。それからは、別邸に現れる花の精霊と話しをする様になった。
「星の精霊に振られちゃったー」
「かわいい子のわがままってかわいいよねー」
「木の実の精霊って可愛くてさー」
花の精霊がやって来ては、恋の話をペラペラとしていく横で、僕はリマの可愛い笑顔を思い浮かべ、向日葵の世話をした。向日葵の芽が出た頃、花の精霊に質問された。
「どうしてリマなのー?」
「リマが好きだからだよ」
「もっと胸の大きな子とかー会話の弾む子もいるでしょー」
「リマの胸以外に興味もないし、リマを1日中見つめていいならそうしたい」
「へー胸に興味あるんだーむっつりー」
「花の精霊、黙って」
向日葵の葉が何枚か育ち、1度摘心して育てると、綺麗な花になるよーと言われ、園芸用ハサミで切った頃、花の精霊に質問された。
「リマが他のオトコを好きになるとこ想像したことあるー?」
「…………」
「わーーひまわりの葉っぱが凍るー」
それからも、やって来る花の精霊の軽い恋の話を流しながら、かわいいリマの為の向日葵に水をたっぷり与える。
花の蕾が膨らんで来た頃、花の精霊に質問された。
「リマがある日、約束の場所に来なかったらどうするー?」
「すごく心配する」
「ずっとずっと待っても来なかったらー?」
「何かあったのかと思って、必死に探す」
「心変わりしたとは思わないのー?」
「…………」
「わーーツボミが凍るーー」
それにしても、今日のリマはとびきり可愛かった…
恥ずかしがり屋のリマは、滅多に自分から口付けをしない。それが今日は別邸とは言え、外にいるのに、自分から口付けをして来たのだ……あれは、反則過ぎる……
部屋に戻ってからは更に可愛かった……
向日葵を育てた話しをせがまれ話すと、蕩けた顔で、大好きと何度も言われた……あとは、向日葵の種が出来たら一緒に住む庭で育てたいな…?と潤んだ瞳でおねだりするリマも愛らしかった……
リマが隣に寝てるのに、本当に、よく我慢したと思う………いや、我慢をしなくても本当はいいのだけど、王族の婚約は、普通の婚約とは違い、世継ぎを残すため、そういうことをしてもいいとはなっている……第2王子の自分の場合は微妙なところだけど、無し、ではない……
はー……止める自信がなくて、手を出せない……
「あー……可愛かった……」
「王子さまなのに、ニヤニヤしてるーやらしー」
「花の精霊、黙って」
心の声が漏れていた、そういえば、花の精霊がいたのを忘れていた。花の精霊と言えば、精霊の使いが色々噂をしていたな。加護を貰ってから精霊の使いの囁きが聞こえる様になった。
精霊の数が減ったのは、誰のせいだ、まったく。
リマが氷の精霊と春の精霊を早く出せないか悩んで、かわいい眉間にシワを寄せる姿を思い出す。いや、そういうリマも可愛いけど………
リマには、いつも笑っていて欲しいんだよね。だから……
「向日葵のお礼に、花の精霊の恋の悩みを聞くけど?」
「えー?今は、木の実の精霊と風の精霊と水の精霊とうまくいってるよー」
それは、恋、じゃない。
「うん、火の精霊の悩み、聞くけど?」
「………え?」
花の精霊の目が見開いたまま、固まった……
初めて、花の精霊の驚いた顔を見たと思った——
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
糖分あんまりなかったかもです……
112話をちょっと書き直す予定です。話しの内容はそのままの予定で、煮詰まり過ぎていたので、薄めてまいります( ´∀`)
今日もお疲れ様でした◎
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。















