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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
15歳は2年生のはじまり

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108.勇者のカーキ



「「「………しぶがき?」」」



みんなが小首を傾げながら私を見たが、食べた方が分かりやすいと思う。

たぬたぬに頼み、人数分のカーキの実を分けて貰う事にすると、途中でカイルがカーキを預かってくれる。皮を剥きたいが、果物ナイフがないなと思うと、カイルがナイフを差し出してくれたので、御礼を言って受け取ろうと思ったら、ナイフを高くに上げられる。

むぅ…と思い、ぴょんぴょん飛び跳ねると、くっくっと笑われた。



「リマお嬢様は危なっかしいので、使わないで下さいね?どうすればいいのか教えて下さいませ」

「……ヘタを残して、皮を剥いて欲しいです」

「かしこまりました」



あっという間に、カーキの皮を剥いたカイルに御礼を言う。



「本当はね、このヘタにヒモを結んで、2週間くらい外で乾かすの。今日はハズレの実じゃないって知って欲しいから魔法を使うね?」



「美味しくなーれ、美味しくなーれ………」



私の手がぱあっとミントグリーンに輝くと、皮を剥いたカーキを包み込む………





水分がいい感じに飛んだ『干し柿』が出来ました!




「フローリア、食べてみて?」

「……」

「…私が1番に頂いても?」

「レイモンド様、もちろんです。だって、これはフローリアからの婚約のカーキでしょう?」

「レイモンド様、ハズレの実なんて食べてはいけませんわ」

「リアが私の為に作ってくれたんだろう?食べさせてくれないか?」

「…レイモンド様………わかりましたわ…」



フローリアが干し柿をひとつ手に取り、レイモンド様の口もとに運ぶ。レイモンド様が嬉しそうに目を細め、フローリアの白くて細い手首を優しく掴み、干し柿をひと口食べた。



「……これは、甘いな」

「ええ?本当ですの?」

「ああ、リアも食べてみるといいよ」



レイモンド様が、フローリアの手に持ってい干し柿を優しく受け取り、今度はそれをフローリアの口もとに運ぶ。フローリアが顔を赤くして、恥ずかしそうにぱくりと食べる。

わ、これ、間接……だよね?見ちゃった!



「まあ、甘いですわっ」

「リア、みたいだな」

「もうっ、レイモンド様ったら…」

「しかも、これは……本当に勇者様のカーキではないのか?」

「ええ…これ、ひと口食べただけですのに、魔力が上がりますわね…」



パチン……!



「ごめんごめんー!当たりの実の食べ方、伝えてなかったー」



花の精霊が呑気な声で現れた。



「あれーまた会ったね?これって運命?きっと君と運命だよねー」



パチンと音がして、目の前に花の精霊の顔が、口が近づいて来て、え?え?と目をぎゅうと瞑る……何も起きないので、そろりと目を開けると、ラルクに抱き寄せられ、カイルが花の精霊と私の間に立っていた。



「もーまた失敗したー!あいつみたいなのが1人増えてるよー!」

「花の精霊にさせるわけないだろう」

「はいはい、わかったよー」



花の精霊が手を顔の前で振った。干し柿を見つけると、パッと笑顔になり、手を伸ばして、躊躇う事なくぱくりと食べる。



「当たりの実、ちゃんと美味しくできてるねー」

「これ当たりの実って言うの?」

「そうだよー!昔、暴れる竜がいてさー花がぐちゃぐちゃになって困ってた時に、ちょうど倒しに来た人がいて、負けそうだったから、この実を口に入れてあげたら、元気になって倒してくれたんだーその時は『勇者の実』って言われてたかもー!当たりの実はねー育てている人が望むこととー精霊の使いが応えたいこととーあとは、僕の祝福がないとできないよー」

「そうなんだ?」

「そうだよー僕の祝福に選んだ実だから当たりの実なんだー!このカーキ育ててた子、胸もまあまあ大きくて、可愛かったからさー久しぶりに祝福あげたんだー!あ、君は精霊の使いに頼めば作ってくれるよー」

「相変わらず……軽いね……」

「だーかーらー、可愛い子のお願いはさー聞かないとでしょう?まあ、いいや、君が当たりの実の食べ方知ってるみたいだから、僕、海の精霊と約束があるからもう行くねー!あ、お土産に当たりの実も貰っていくねー」



パチンと音がしたと思ったら、花の精霊が干し柿と共に消えていた………ぽかんとした顔のフローリアとレイモンド様の気持ちは分かる。精霊ってなんかこう、もっと神々しいと思うよね?それに、この前、星の精霊じゃなかった…?花の精霊ってチャラ精霊…なの、かな?




「……リア、ハズレの実じゃなかったな」

「……そうですわね…」

「……私は、リアと婚約したいと思っているのだけど…?」



「……(わたくし)もですわ……」




レイモンド様がフローリアを抱きしめる。レイモンド様がフローリアに何かを耳元で囁くと、フローリアが真っ赤な顔で頷くのが見える。

レイモンド様がフローリアの頬に手を添え、2人の顔がゆっくりと近づき、口付けを交わす。



……えっと、……



…いつまでも止まない口付け……



……目のやり場に困ります………




「リーマ、これ以上はやめようね?」




ラルクに目元を隠され、耳元で囁かれ、くるりと反転させられ、抱き寄せられる。

ラルクの香りがして、ほっと息をする。

友達の口付けは見るものじゃないね……




「リマったら、いつまで抱き合っているんですの?」

「…えっ?」



いつの間にか口付けを終えた、フローリアがぷんぷんしながら立っていた。あれ?私が怒られるの…?



「フローリア、ハズレの実じゃなくて、よかったね」

「……ええ、そうですわね…って違いますわ」

「えっ?当たりの実や勇者の実だって言ってたよ?あれ、もしかして、花の精霊の言葉聞こえなかったの?」

「聞こえましたわよ!」

「……?」



フローリアがまだぷんぷんしているので、小首を傾げる。



「もうっ、リマは(わたくし)の恩人ですわ……ありがとう」




その後、ハズレの実ではなく、勇者の実だと分かり、アルベルゴ家、オーベルジュ家が歓喜に湧いたと後から聞いた。

花の精霊が私の作った干し柿を持って行ってしまったので、フローリアが残ったカーキの実をひとつひとつ皮を剥き、干し柿にし、2週間後にフローリアが婚約のカーキをレイモンド様に渡し、2人の婚約発表が無事に行われた………




フローリアの作った干し柿は、2人の恋みたいに、甘い甘い味がしたとか———




本日も読んで頂き、ありがとうございました!



カーキの実の話は、最初に思いついた話で、どこで入れようかな?と思っていました◎

レイモンド様って無口じゃなかったのかーいと思ったりしましたが、あくまで、フローリア基準では無口なんだと思います。糖度高めな2人が好きです。



今日も頑張って行きましょう(*^_^*)

次から三年生編に入るつもりです◎

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