105.王子と雨の日
ひとつ前の、104話を書き直しました。
お時間がある方は、読み直して貰えたら嬉しいです。
ラルクが格好悪いのは嫌だなーと思いまして(*´-`)
ラルク視点です◎
最近、僕のまわりにかわいいリスが現れる。
リマリスだ。
リマリスはちょこちょこと顔を動かして、僕を見たり、考えたり、顔を赤くしたり、話しかけるか悩んだり、とても忙しい。
この数日、リマリスは僕に顔を赤くするような相談があるようで、僕のまわりをちょこちょこしていて、とてもかわいい。
リマリスから話しかけてくれるのを待っていたら、いつまでもかわいい相談が聞けないので、リマリスを膝の上に乗せる。真っ赤になるリマリスに話しかける。
「リマ、相談があるの?」
「……!なんで分かるの?」
目をパチパチして驚くリマはとてもかわいい。無自覚にかわいいリマリスになっているからだよとは言えず、少し笑い、髪を撫でながら先を促す。
「……ラルクは、赤い傘、…どう思う?」
首まで真っ赤になりながら上目遣いに聞くリマリスはかわいい。
赤い傘…?
入学前、リマが雨避けの魔法を使えなかったので、ピンクの小花柄の傘を贈ったのだが、それが気に入らない……わけないか。
リマが嬉しそうに傘を差す姿は何度も見ている。
僕は雨避け魔法を入学前に習得し、傘は使わない。それに、アプリコーゼの一件以来、通学は毎日一緒にしていて、雨が降っていれば、リマにも雨避け魔法をかけてあげている。
となると、思い当たるのはひとつだけ。
「小春の世界の話し?」
「………うん」
「あのね、……もうすぐ雨の季節でしょう…?今、一緒に通学してるでしょう…?……あっちの世界で憧れていたことがあって………」
更に真っ赤になり、もじもじするリマリス。最近のリマは身長が伸び、それに体つきも女らしくなって来た。こてんと頭と体を僕に預けられると、リマのふっくら柔らかいものが当たるのだ。それが嬉しくもあり、悩ましくもなって来た。
リマに前世の記憶があり、小春が19歳だと知った時は衝撃を受けた。
リマの前世に、恋人や愛を誓った人がいたと知ったら僕は氷の精霊の様に、嫉妬に狂うと思った。
幸い、小春は男性に縁がなく、前世も今世も、全て僕が初めてだと知り、嬉しくて叫び出したい衝動を抑えるのに必死だった。
「あの……小春の世界では、付き合っている2人が同じ傘に入ることを………相合い傘……と言うんだけど………」
ちらっと上目遣いで僕の反応を探るリマリス。
この数日、いや、新しい回復薬を作り出して、少ししてから様子はおかしかったかな?
相合い傘がしたいと僕に相談したくて悩んでいたなんて、可愛すぎて、くらくらする。
僕がなにも言わないので、不安に思ったのか、目に涙を溜めたリマリスと目が合う。
かわいいと目を細めると、決心したらしい。
「この前…少し大きな赤い傘を買ったの………わ、わたしと、…相合い傘してもらえませんか?」
◇ ◇ ◇
しとしと降る雨粒を、王宮別邸の窓から眺める。
リマが小春のいた世界ではププリュの雨と書いて、梅雨と言うらしい。
この梅雨の雨は、梅にとって恵みの雨。 この季節に雨が降ることで、梅の実は大きく膨らんでいく。恵の雨は植物にとってはもちろん、僕も待ち望んでいた恵の雨だ。
「 防 雨 」
リマの家まで王家の馬車で迎えに行く。馬車から降りる時、雨避け魔法を発動させておく。
赤い傘は大きめだが、リマが少し濡れてしまいそうなので、こっそり濡れない様にするためだ。
「おはよう、リマ」
「…おはよう、ラルク………ありがとう」
リマに赤い傘を差して、優しく呼ぶと、真っ赤な顔をして、でもとびきり嬉しそうに、はにかみながら傘に入って来る。ああ、抱きしめてしまいたい。
相合い傘は2人が寄り添わないと濡れてしまう。
背の伸びた僕とリマが並ぶと、リマは僕を見上げる形になる。潤んだ上目遣いでお礼を言うリマが可愛くて仕方ない。
リマの執事には、傘のまわりに雨避け魔法をかけているのが直ぐに分かったらしい。
リマはこの執事の事をとても気に入っている。アプリコーゼの実を沢山摘んでいたのも、新しい回復薬を作ったのも、この執事に日頃のお礼をするつもりだったと言っていた。
リマの執事に少しの敵意を持つのは仕方ないと思う。
リマを隠す様にすると、執事はなんでも分かっていますよと言う様にニヤリとした。
「ラルク、あの、赤い傘、恥ずかしくない?」
「恥ずかしくないよ。赤い傘が憧れなんでしょう?」
「……うん…ありがとう」
「濡れちゃうよ?」
「…うん」
リマが控えめに制服の裾を摘むので、傘を持つ僕の腕を掴むように誘導する。
魔法の言葉を使うと、リマははにかみながら僕に近づく。雨粒の音と2人の声しか聞こえない相合い傘は、密室の様な親密さが生まれる。
「今日は雨だから剣術所属に来る?」
「……行ってもいいの?」
「毎日でも来て欲しいくらい」
「………ありがとう」
嬉しそうはにかむリマは本当にかわいい。
リマと婚約発表をして、ようやく雨の日は剣術所属の見学に誘うことが出来た。あんな男だらけの所属にリマを勧誘しなくて本当によかった。
最近は、植物所属活動が早く終わると、放課後もリマとフローリアが2人で見学しに来るので、剣術所属員の覇気は高まっている。
「リマ、準備を終えたらクラスへ迎えに行くよ」
「…ありがとう。ひとりでも剣術場に行けるよ?」
「だーめ。また精霊の使いに連れて行かれちゃうでしょう?」
「……待ってるね」
「よく出来ました」
魔法学校の正門を過ぎると、みんなが驚いた様に僕達を見るが、その目は直ぐに僕の腕を掴み、はにかみ幸せそうに笑うリマに見惚れるのに変わっていく。
僕らは、赤い相合い傘を差して、ゆっくりゆっくり歩いて登校をする。
この日以降、ラシャドル王国の恋人達の間で相合い傘が流行りだしたのは言うまでもない——
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
少し前から傘の話しを入れたいなと思っていました。
次の話しで、この前後のリマ視点を書けたらなと思っています。
今日もお疲れ様でした◎
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。















