104.甘やかな仲直り
「リマから離れろ」
ラルクの低い声に周りの温度が下がったと感じたが、どうやら本当に温度が下がっている様で、アプリコーゼの枝が薄っすら氷付いていく……
「もーあいつみたいに独占欲の塊だなー」
花の精霊が、パチンと指を鳴らすと、私は何もない空中にひとり浮かんでいた…
え?
浮かぶ…わけないよね……?
「きゃあ」
落下する感覚に、目をぎゅっと瞑り、衝撃に備える……
…
…
…?
「リマ、大丈夫?」
「ラルク…ありがとう」
ラルクが受け止めてくれたので、ラルクの顔がいきなり近くにあって、黄金色の瞳に見つめられ、心臓がドクドク動き出す…
「ねーそろそろ僕のことも思い出してねー」
痺れを切らした様に、花の精霊に言われる。
「あのねーその子が魔力切れを起こして倒れていたのを僕が介抱してたわけ。結界も治癒しやすい様にしてただけなのー」
ラルクの黄金色の瞳に覗き込まれる。
「リマ、魔力切れを起こしたって本当なの?」
「…うん、実は…」
私は、精霊の使いに幹が裂けたアプリコーゼの樹に案内され、新しい魔法で治したこと、魔法で魔力を使い過ぎて倒れたこと、アプリコーゼを治したお礼に花の精霊に加護をもらったことを話した。
「花の精霊、すまない」
「もういいよー」
ラルクが誤解をした事を謝ると、花の精霊がおもむろにアプリコーゼの実をひとつ手に取り、口付けをして、ぽいっとラルクに投げた。
「これキミが食べたらいいよー」
「…これは?」
「少しだけど、僕の加護が付くよー。この子は、深めに加護付けたからねー男が弾かれると使いものにならなくなるみたいだよー」
「……礼を言う」
「………?」
後半がよく分からなくて小首を傾げると、花の精霊にあとで聞いてみなーと言われたので、ラルクにあとで教えてくれる?と聞くと、目を逸らされてしまった。ラルクのいじわる。
「昔、キミみたいに独占欲が強いやつを少ーしからかったら、魔力を暴走させちゃったからねーあの後、他の精霊に怒られちゃって大変だったんだー。代わりじゃないけど、そのおわびかなー」
えっと、それって建国物語の氷の精霊と春の精霊の話しだよね……なんか色々、花の精霊のせいなんじゃないの……?思わず、じと目で花の精霊を見た私は悪くないと思うの。
「もーちがうよー!かわいい子に花を贈るのは当たり前でしょー、むしろ、礼儀だよー!ねー?」
「僕はリマにしか花は贈らない」
「………ありがとう」
「もーそういうとこー!あいつそっくりー」
思ってもいないタイミングでラルクに甘い言葉を貰い、頬に手を当てて顔の熱を逃していると、ちゅっとおでこに口付けされる……
「もー僕のこと、忘れてるでしょー」
花の精霊がパチンと指を鳴らすと、いきなり目の前に居て、花の精霊の唇が私の唇に近づく……
いやだと思い、思わず目を逸らすように瞑る……
「許すわけないでしょ」
ラルクが私を花の精霊から守るように距離を置いてくれていた。
パチンと指が鳴ると、最後に見た花の精霊は、失敗したーまたねーと笑顔で手を振っていた……
ラルクと私は、あっという間に、アプリコーゼの里に戻っていた——
◇ ◇ ◇ ◇
「…んんっ…ん……」
折角戻って来たアプリコーゼの里ですが、まだみんなと合流出来ていません……
「…リマ、僕がなんて言ってたか覚えてる?」
「えっと、精霊の使いに連れて行かれない様に、ひとりにならないでね……て言ってた…」
「どうして、精霊の使いに連れて行かれてるの?」
「……ごめんなさい」
「すごく心配したよ…花の精霊の結界が強くて、リマにこのまま会えないかと思うと気が気じゃなかった…」
ラルクの黄金色の瞳に、後悔や心配の様な、不安を乗せている様子に、私も心が締め付けられる様に苦しくなる……
私がラルクにこんな顔をさせていると思うと、言うことを聞かないで勝手なことをした後悔が襲う…
「…本当にごめんなさい」
ラルクに抱きつくと、ラルクも強く抱きしめてくれる。爽やかでほろ苦いレモンタイムの香りがして、やっと戻って来たと安心する。
「アプリコーゼの樹を助けるのはいいけど、自分が倒れたりしたらだめだよ」
「…うん」
「困ったら必ず僕に相談して」
「…うん」
「リマの大好きな樹を治せる魔法を使えるようになったの?」
「…うん」
「小春のなりたかった木のお医者さんだね?」
「…うん」
「リマ、おめでとう」
甘やかな声色に、ラルクを見上げると、黄金色の瞳に甘やかな蜜がたまっているようで、どちらからともなく甘やかな優しい口付けを交わす。
「……」
「……」
ふたりで見つめ合うと、黄金色の瞳が目を細め、近付いて来る。
私は嬉しくて、甘やかな予感にそっと瞳を閉じる。
口付けの合間に漏れるのは、甘やかに互いの名前を呼ぶ声と甘やかな吐息だけ………
ラルクの首に腕を回し、夢中で口付けをする……
…
…
…
「リマ、そろそろみんなが心配するから戻ろう?」
「…うん」
甘やかな仲直りをして、私たちは集合時間に少し遅れて、みんなの所へ戻った———
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
アプリコーゼ編はこれで終わりです(^_^*)
二年生編はあと2つ話しが書けたらなーと思っています。
今日もお疲れ様でした◎
金曜日、疲れた気持ちに糖度を補給したくなりました。
お休みなさい。















