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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
15歳は2年生のはじまり

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103.花の精霊


「あれ?ここどこだろう…?」


蝶々さんの桃色の粉に誘われてアプリコーゼの実を沢山摘んだのは良かったけど、帰り道はどっちかな?とりあえず、来た道を戻れば戻れるかな?

精霊の使いの蝶々さんの声は聞こえないけど、私の言っている事は分かるかな?


「精霊の使いさん達、帰り道がどっちか分かる?」


話しかけると、さっきまでひらりひらりと優雅に舞っていた精霊の使い達は、慌てた様に私の周りに集まって来る……腕を引く様な、背中を押す様な、更に前を案内する様な、なんだか何処かへ連れて行こうと必死な様子に、小首を傾げる。


「…連れて行きたいところがあるの?」


小首を傾げながら話しかけると、正解と言うように、嬉しそうに私の頭の上をひらりひらりと回り、桃色の粉を振りまいてくれる。

ふと、ラルクに注意をされていた事が頭をよぎるが、直ぐに戻れば大丈夫だよね…?と思い、精霊の使い達について行く事に決める。悪意みたいなものは感じないし、どちらかと言うと必死な様子が気になってしまう。


「案内してくれる?」


精霊の使い達に話しかけると、1番大きな蝶々が桃色の粉を煌めかせながら案内を始めてくれたので、見失わない様について行く。


しばらく歩くと、アプリコーゼの里から離れた奥地に来たみたいだった。人の手入れがされていない場所まで来てしまって、ちゃんと戻れるかな…?帰り道も案内してくれるよね…?と不安になった頃、私を案内していた精霊の使いの他の精霊の使い達が勢いよく奥に向かって飛んでいく。

案内の蝶も早く早くと焦る様子に、私も慌ててついて行くと……



大きなアプリコーゼの樹の太い幹が裂けていた…



裂けた幹に精霊の使い達が、桃色の粉を煌めかせ振り撒き、癒しの力を使っている様子なのだが、裂け目が大きすぎて、効果は出ていないみたい。



「これは…ひどい……」



アプリコーゼの樹の根元に近付くと、裂け目を見せてもらう。お花見遠足の数日前に、アプリコーゼの里に激しい雨風があったと聞いた…その突風で大木のアプリコーゼの樹が裂けたのかもしれない……でも…



「精霊の使い達が頑張っていたから、まだ大丈夫だよ」



幹の裂け目が乾いてしまうと、元に戻すのは難しくなるが、精霊の使い達が裂け目に絶え間無く、桃色の癒しの粉を振りまいているおかげが、裂け目は乾いていない。

前世ならば、ここに補修を促す薬剤を散布し、添え木を当てて、ぐるぐる巻いて固定する……が、この世界は魔法がある分、薬はあまり発展していない……固定する為の紐もないし、どうしようかな?


少し考え出すと、がんばれと言う様に精霊の使いが私の周りを桃色の粉を煌めかせ舞った。



「そっか、想像すればいいんだ」



魔法は想像力と強く思う気持ちがとても大事。

想像出来ないもの、強く願わないものは、魔法として発動しない。逆にいえば、強く願い、きちんと想像が出来れば、意外となんとかなる。

魔力の高い小さな子が、自分の欲求で、風や氷を出すのと同じ。


前世の知識をイメージする。

手順やどういう薬剤を使うのか、それを行った後にアプリコーゼの樹がどうなるのか、どうやって治るのか……



アプリコーゼの樹が治るように………




アプリコーゼの樹の裂け目を優しく撫でる……




私の想いを込めて、するりと出てきた言葉は小さな頃にお母さんにかけてもらったおまじないの言葉だった……





「痛いの、痛いの、飛んでいけ……」





私の手がミントグリーン色に柔らかく輝くと、その柔らかい光は、アプリコーゼの幹の裂け目を包み込む………




まだ、だめ……もっともっと裂け目がとじるように……もっともっと………治るように……





どれくらい時間が経ったのだろう………




時間感覚もなくなり、ただただ、アプリコーゼの幹の裂け目が治る様に、祈るように願うように…




「ああ…もう大丈夫………」




アプリコーゼの幹が治ったのを見届けた私は、意識を手放した——






◇ ◇ ◇







気持ちのいい感触……


頭を優しく梳き撫でる感触に思わず、すり寄る…


…あれ?





「…………どなたですか?」




意識が浮上した私の目の前に、菜の花みたいな黄色のくるくるパーマ、ミントグリーンの瞳の美青年がいた。



『やっと目覚めたねー星の精霊と星の花摘みに出かけていたら、アプリコーゼの精霊の使いが慌てて来たからさー何事かと思ったら君が倒れていたからねー』


「…………えっと、言葉が通じないのかな?」


『あーあいつの加護があるのか…まったく千年もサボっているのに、独占欲だけは強くて困るなー。でも、君、人間なのになかなか可愛いねー。もう少し、胸がふっくらしてると更に好みだけど、まあ仕方ないかなー』


「……え?」


言葉が通じない美青年の顔がぶつぶつ言いながら近付いて来たと思うと、いきなり私の口に美青年の口をぶつけて来た。

え?なんで?あれ?と思っている間に、ちゅ……ちゅ……と混乱する頭に口付けの音が聞こえて来る……



「いやあっ!」


やっと今、この美青年に口付けをされていると理解した私は精一杯の力で押し返す。その時に、初めて、私がこの美青年の膝の上で横抱きされていることに気づいて慌てて降りようとするのに、力が入らない……


「へぇ、そんな反応されるなんて傷ついちゃったなーでもまあ、加護は付けたから僕の声は聞こえるー?」


「な、な、な、なにするんですか!ヘンタイ!さいてい!………あ、聞こえます…え、カゴ?え、加護?あ、加護!あれ?あ!ああっ!今のは精霊の加護を与えてくれただけ?あ、その、誤解して、ごめんなさい…」


「…あー君ってちょっと…まあ、そういうことでいいよーあいつの加護が多かったから、深めに加護をつけたよー僕は花の精霊。君がアプリコーゼの樹を助けてくれたみたいだから、そのお礼だと思ってくれればいいよー。今ので、僕の声も、僕の精霊の使い達の声が聞こえるはずだよー」


「精霊の使いの声…?」


この美青年が、花の精霊だと言われれば、確かにそう見える。だけど、ちょっとノリが軽い…よね?

周りを見ると、私のまわりに沢山の桃色の粉を煌めかせる蝶々たちが舞っている……


「ありがとー」

「助けてくれて、ありがとーなのー」

「なまえはなーに?」


「わぁ…!話してることが分かります!」

「よかったねーみんな、君のことが好きみたいだねー。でも君っていい匂いがするねー僕も好きだなー」


花の精霊が、私の頭をくんくん嗅いで来て、かなり恥ずかしい。


「あーそうだ、彼は君の知り合い?」


花の精霊が、パチンと指を鳴らすと頭の中に、映像が流れた……




ラルクが透明な見えない壁に魔法をかけている様子が見えた……





「…ラルク!」

「君の知り合いなら、来てもらった方がいいかなー僕の結界を破る勢いで魔法を使うから結界張ってるの、疲れちゃったんだー」



花の精霊がもう一度パチンと指を鳴らすと目の前にラルクが現れた…!




「リマ!」

「ラルク」

「いらっしゃーい」



花の精霊の呑気な声が、辺りに響いた——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


アプリコーゼ編が長引いておりますが、もう少しで終わるので、お付き合い頂ければと思います。

私の中で、花の精霊はチャラ男なイメージです(´∀`*)


今日もお疲れ様でした◎

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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