102.アプリコーゼの里
メンテナンスが入る直前にUPした物は、書き直しました。
「わあ!すごい綺麗だね」
「リマ、少しは落ち着いたらどうですの?」
「フローリア、それは無理だよ。もう少し近くに見に行こうよ」
「もうリマったら。でも綺麗ですものね…まあ仕方ないですわね」
「うふふ、フローリアありがとう」
今日は魔法学校の春のお花見遠足に来ています。
毎年2年生は、アプリコーゼの里で、魔木アプリコーゼの開花を楽しみ、その後アプリコーゼの実を摘むのです。
魔木アプリコーゼの魔力は実ではなく、その愛らしい花にある。精霊の使いは蝶々たち。蝶々達に導かれる様に一斉に咲き始め、精霊の使いの振りまく魔力の粉に癒しの力があるので、ラシャドル王国でとても大切にされている。
前世では、杏は桜より前の春に花が咲き、初夏に実を付けていたが、ラシャドル王国のアプリコーゼは春に花が咲くと、1週間後には実を付けるのだ。陽当たりによって開花の時期が異なる為、午前にお花見をして、少し移動して、午後は実を摘む……とっても楽しいお花見遠足なのです!
「はぁ…本当に綺麗だね………」
「リマったら、さっきからそれしか言ってませんわ」
「だって綺麗なんだもん」
アプリコーゼの木の近くに行くと、桃色の花の周りに舞う様にしていた精霊の使いの蝶々たちが私たちの近くに遊びにやって来た。懐こいのか私の肩や指先に止まったり、周りを舞いながらキラキラ煌めく桃色の癒しの粉を振りまいている様子は神秘的だった……
「リマ、そろそろ戻らなくては」
「…うん……あと少しだけ…」
「リマ!そっちは帰り道じゃなくて、奥ですわよ」
「……うん……あと少しだけ…」
はぁ…本当に綺麗だな。アプリコーゼの花も蝶々の舞も幾ら見ていても飽きないな。少しずつ蝶々さんが私の周りに増えて、おいでおいでとしているみたい……こっちに行くの…?
桃色の粉が道しるべみたいなので、魅入られる様に歩いていく……
この季節、みんながお花見をする為にアプリコーゼの里に来るのが分かるな。来年は我が家のアプリコーゼの花を見に来たいな。アプリコーゼの山を持っているなんて、この前初めて知って驚いた……もっと早く教えてよ、お父さん…!
はぁ…本当に綺麗だな……ぐいっ?
「リーマ」
「……え?……ラルク?」
ラルクが急に現れただけでも驚いたのに、むにっと両頬を手で添えられ、顔が近くて、一気に顔に熱が集まる………
「リマ、フローリアが困っているよ。ほら行くよ」
「……うん」
「リマ、この前言ったこと覚えてる?精霊の使いに連れ去られない様にひとりにならないでね」
こくこくと頭を縦に振る私に満足したのか、くすりと笑うと頭をぽんぽんと撫でて、ラルクとフローリアに挟まれて、お昼ご飯に向かう。
アプリコーゼの精霊の使いは、いたずら好きで、気に入った人を桃色の粉で魅力し、連れて行くと伝えられている。
ラルクに春の精霊の加護を持つと花の精霊の使いに好かれやすくなると聞いたけど、花の精霊の使いに話しかけられた事はないので、ラルクは心配性だなと思っている。
クラス毎に集まるので、ラルクとの別れ際…
「ちゃんとフローリア達と一緒にいるんだよ」
「……うん」
「はぁ…同じクラスならずっと一緒に居れたのに」
「……」
ラルクがぽんぽんと頭を撫で、黄金色の瞳に心配の色をたっぷりと乗せて覗き込まれる……顔に熱が集まる…
「……気をつけるね…」
「うん、本当に気をつけてね」
ラルクがもう一度頭をぽんぽんと撫でた後、念を押す様に気をつけてねと言い、自分のクラスへと戻って行くのを見送る。
私はフローリアとクラスの女の子が集まっている席に座る。
「リマ、さっき見てましたわ」
「ラルク様ってリマの前だと、あんな甘いお顔をされるのね」
「何を話していたの?」
「もうっ!ダリアにミモザったら、リマが困っているわ」
「フローリア、だって気になるじゃない」
Bクラスはフローリアのお友達のダリアとミモザが居て、私も仲良くしているのだけど……みんな恋の話しが大好きなんだよね。
「でも、そうね、2人は見つめ合う様に話していたから何を話していたかは聞こえなかったの」
「フ、フローリア?」
「もうっ!リマの惚気に付き合っていた私は聞く権利があると思うわ」
「「そうよね、そうよね」」
「えっと………精霊の使いに連れて行かれないように気をつけてねって……ひとりにならない様にって…言われたの」
小春の時は恋話は聞く専門だったので、話すのがこんなに恥ずかしいなんて……両頬に手を当てて、熱を逃す……
「「「…………」」」
みんなが顔を赤らめたり、まぁと溜息をつくのが見えて……呆れられたかな…?
「……心配性だよね?」
「とんでもない!愛されてますわ」
「ラルク様がリマを溺愛しているのは本当ですのね」
「はぁ…羨ましいわ」
「でもフローリアだって、レイモンド様に何か言われてないの?」
「それは……まあ……」
「言われてるでしょう!私も言ったからフローリアも教えて」
「「そうよね!そうよね!」」
ミモザとダリアのハモリが気持ちいい程だね。真っ赤に染まったフローリアが両頬に手を当てながらもじもじする様子はとってもかわいい。
「レイモンド様は、その無口な方ですから……気をつけて……と、あとは、その……左手に口付けをされましたわ」
「「………!」」
ミモザとダリアが声にならない声をあげて、両手を頬に当てて身悶えている。これはなにか特別な意味があるのかな……?小首を傾げると、ミモザとダリアに生温かい目を向けられる。……なんだろう?
「リマはまだ…よね…?」
「……きっとそうよね、まだリマには早い気もするし…」
「レイモンド様は年上ですもの」
3人が納得する様にうんうんと頷く様子に、益々訳が分からなくて小首を傾げる。うん…これは、きっと恋話あるあるなんだろうな…あとで…ラルクに聞いてみたらいいのかな…?
「リマもフローリアも愛する殿方を哀しませないように、精霊の使いに連れて行かれないようになさいませ」
ダリアが茶目っ気たっぷりにそう言うと、みんなでくすくすと笑い合った。
「さあ私達もご飯を食べましょう」
「そうね、移動の時間になってしまうもの」
恋話しをたっぷりして、お昼ご飯を食べ終えた。
その後、馬車に乗り込み、少し山を下った場所で、アプリコーゼの実を摘みを始める。
「リマ、どんな実がいいんですの?」
「精霊の使いのお勧めが1番だけど…アプリコーゼの実が、濃い橙色になっている物を選ぶといいよ。あと、表面に傷や、あたって柔らかくなってる部分などが無いのかな。手に持った時に実が締まっていて、皮に張りがあり、しっかりと香りが立っている物を選ぶと美味しいよ」
アプリコーゼの実を摘み始めると、精霊の使いの蝶々たちがひらりひらりと遊びに来て、桃色の魔力の粉を振りまく……何度見ても美しい神秘的な様子にため息をつく…
「この実が美味しいの?」
蝶々たちがお勧めのアプリコーゼの実を教えてくれるので、お礼を言いながらひとつひとつ摘んで行く。
ひとつ摘むと、またひとつ、お勧めの実を教えてくれるので、桃色の粉に誘われる様について行く。
「フローリア、リマは?」
「ラルク様、リマが気付いたらいなくなってしまいましたの……」
「……魔力の流れがある……あちらからか…」
ラルクとフローリアが私の心配をしている事は知らず、その頃の私はアプリコーゼの実はそのまま食べても甘酸っぱくて美味しいし、ジャムにしても美味しいから沢山の摘んで帰りたいなと思っていた。
カイルが好きだって言っていたから日頃の感謝を込めて、お土産にしよう。それに植物所属員にも持って行きたいな。
蝶々さんのおかげで、持っていた籠はアプリコーゼの実で沢山になっていたので、もうそろそろいいかなと思い、ふと周りを見渡すと、ひとりになっていた…………
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今日もお疲れ様でした。お休みなさい。















