10.人気デザイナーの洋服
2話を書き直しました。
なかなか定まらずちょこちょこ書き直しています…。
「……かわいいっ!」
私は鏡の前でとっても感激していた……!
お母さんがププリュのお世話をするのならばと、用意してくれた園芸用のお洋服が、とっても可愛かったのだ。
小さなフリルのついた丸襟の白いブラウス、ボタンは薄いピンク色の花型。胸元に小さなププリュの花と実の刺繍が刺してある。
そして、この世界で初めてのパンツスタイルのサロペット……!
サロペットは優しいセージグリーン色、胸ポケットは甘く見える様に少しひだを寄せてあり、足下の裾はぐるりと葉っぱの刺繍が施されている。
靴はミルクチョコレート色のショートブーツ。
帽子は、白いレースの大きなリボンが結んである麦わら帽子。今日の私の髪型は、同じ白いレースをゆるく結んだ三つ編み。
鏡の前に立った私は、「すごく可愛い……!」を何度も繰り返し、くるくると色々な角度からこの可愛い園芸用の洋服を見ていた……!
小春の樹木医になりたいって夢は叶わなくて……
樹木医の勉強していたと言っても、大学1年生の講義の殆どは、一般科目の座学や必修科目の語学の授業が中心だった。2年生になって、ようやく少しずつ実地の講義が始まった所だった。
だから小春の知識は、園芸が趣味な人と同じくらいのレベルだと思う……。
お母さんとお父さんは、私に樹木医として期待しているわけじゃない……と分かっているけど、こんなに素敵な園芸用のお洋服を用意してくれて、私はこんなに愛情を注いでくれるリマの両親のところに生まれてきて良かったな! と思っている。
「お母さん……こんなに素敵なお洋服を用意してくれて、ありがとう。本当にうれしい!」
嬉しくてお母さんにぎゅっと抱きついた!
お母さんも「どういたしまして」と優しく抱きしめてくれた。その後、ちょっと悪戯っ子みたいな顔をして、
「うふふ。リマがとっても張り切っていたから、昨日作ってみたのよ? リマが気に入ってくれて嬉しいわ」
「えっ……? このお洋服……お母さんが、昨日あれから作ったものなの……? ププリュの刺繍は、もしかして、お母さんかな?と思っていたけど……」
「色々な効果を付与しておいたの。ププリュの刺繍の糸は、魔力回復の素材が入っているわ。ププリュの木は、稀に魔力を吸い取るみたいだから……おまじないね? 帽子のレースと髪留めのレースは、体力回復の素材よ。あと帽子のリボンに付いている魔石は、日焼け予防の効果があるのよ」
「……すごい! がんばってププリュのお水あげるね!」
「リマ、頑張るのはいいけれど、体調には気をつけて作業するのよ。私もヘリオスも心配しているのを忘れないでね?」
お母さんの優しい気持ちが伝わって来て、胸がじわりと温かくなる……「ありがとう……」とお母さんに力一杯抱き着いて言うと、帽子の上から優しく頭を撫でてくれる。「リマは甘えんぼさんね? リマにとっても似合っているわ。王都で人気のデザイナーの私が作ったからかしら……?」とくすくす笑っていた。
そうだった……!
お母さんは王都で人気の『ティエラブランド』のデザイナーさんでした。
「そうそう、これもあるのよ」
お母さんが手渡してくれたのは、小さなトートバックが2種類。
浅葱色と浅緑色のトートバックに、ププリュの花と実の刺繍が刺してあり、中にスコップや園芸用のハサミなどの園芸道具が入っていた。
「ラルクの分も作ってくれたの……? お揃いだね!すごく嬉しい。ラルクと一緒に使うね、ありがとう!」
「どういたしまして。色も同じにしようと思ったのだけど、ヘリオスがお揃いはまだ早い……と言うから、色は変えたのよ?」
お母さんが苦笑いしながらこっそり教えてくれた。
お父さん、変なとこでヤキモチ焼くんだね……?
お母さんにきちんと「ありがとう」とお礼を言って、マリィと一緒にププリュの木に出発することにしました!
ラルクがお庭に来るのは、もう少し後だと思うから先にププリュの活動をしておく予定なんだ!
よし、頑張るぞっ……!