殲滅②
紹介
とりあえず、円座になる。
「リツ・サイトウです、魔法使いです」
「マリです。魔法使いです。こっちがグリフォンのショウで、カラーシープのノゾミです」
「メエメエ~」
「ローズでございます。剣士でございます」
皆さん、ご挨拶。
「ルナです」
「ア、アーサーです」
私とアーサーもご挨拶。
アルフさんは省略。知り合いだしね。
「ご丁寧にどうも。マルコフです『ハーベの光』リーダーをしています。で、こっちが」
金属の鎧を身につけ、盾を持ち、アーサーくらいの背でガッチリした男性を指す。彫りの深い顔立ち。
「うちのタンクのバラック」
「どうも」
短く答えるバラックさん。
「こっちは剣士のイレイサー」
「よろしく」
軽く答えたのは、革鎧の細身の剣士。
「以上です」
「リーダー、リーダー、僕は?」
バーンは無視される。
「私は『紅の波』リーダーフレナだよ。うちのタンクはサリナ、私の妹だよ」
フレナさんより大柄だが、よく面差しの似た赤毛の女性。盾を持っている。ペコリ、と頭を下げる。
「こっちは剣士のエレ」
レイピアを下げたすらりとした女性。ニコッと笑う。
「魔法使いのキャリー」
「こんにちは」
杖を持ち、ほわっと笑うキャリー。
「斥候のララ」
最後は犬耳の少女。なぜか、私、睨まれる。あら? 何か気に障るようなことしたかな?
「おやめ、ララ」
フレナさんに窘められる。
「ふんッ」
「ごめんね、愛想なくて」
フレナさんが謝ってくる。まあ、いいけど。
「ほら、バーンと辺りを見といで」
渋々、犬耳少女はバーンと共に森に入る。
「調査はどんな具合だ?」
アルフさんがマルコフさんに聞いている。
「確かにゴブリンは多いから『巣』があると思うが、いまいち場所が分からないんだ、多分、この辺りだとは思うがな」
私の袖をマリ先輩がちょいちょい引く。
「ねえ、ゴブリンの『巣』あったら、どうするの?」
「規模にもよりますが、殲滅ですね」
殲滅、と呟くマリ先輩。
「あの、なんでしょうか?」
「お前奴隷なのに、いい鎧着てるな」
「本当、いいわね」
イレイサーとエレがアーサーを囲む。
「あ、これ、あの時のコブラの皮じゃん」
「なかなかの出来だろう?」
「え? アルフ、皮まで扱うの?」
イレイサーが驚いている。うん、私も驚いた。
「いいなあ、俺にも作ってよ」
「職人ギルドに頼め。もう、コブラの皮は鎧にするほど残っとらん」
「くうっ、羨ましい」
「す、すみません…」
恐縮するアーサー。
「この槍もかっこいいね。ねえ、お姉さんにちょっと見せてよ」
エレが薙刀に注目し、アーサーにウインク。困り顔のアーサー。
「あ、あの、これはルナさんからお借りしてますので」
ちらり、と私を見るアーサーとエレ。
私は首を横に振る。それを見て、けち、とエレ。
「アルフの奴隷?」
フレナさんが聞いてくる。
「儂じゃない」
「じゃあ、誰が主人?」
「私です」
リツさんが手を上げる。
「失礼だけど、随分若い主人ね」
「いろいろありまして、はじめは家の管理のためでしたけど。アーサー君には才能がありまして」
照れてる、アーサーが照れてる。
「へぇ、誰が育てているの?」
「アルフさんとルナちゃんに任せてます」
「え、ルナちゃん、Jランクだよね?」
一斉に視線が集まる。
アルフさんが説明してくれる。
「ルナは剣術スキルが儂より高いしな。ドワーフの剣術より人族の剣術が合うだろうしな」
「なるほど、ルナちゃんは本当に優秀なのね」
「うっふっふ」
なぜか、胸を張るマリ先輩。
それからしばらく探索に出たバーンとララを待つ。
「メエメエ~」
「かわいい、こんなになつっこいのね」
キャリーがノゾミを撫でる、サリナも優しく撫でている。うん、癒し担当だね。
こちらはアーサーがべたべたイレイサーとエレに触られている。鎧ね、鎧。
「本当にいいなあ、お前、闇属性あるのか?」
「あ、はい…」
「ねえ、ちょっと、お姉さんとお話しない? その槍持って」
「ひいっ」
アーサーが怯える。
「もう、やめなエレ」
フレナさんが嗜める。
「だって、この子かわいいもん」
エレがいたずらっ子みたいに舌を出す。
「ピイピイ」
ショウが突然鳴き出す。
何事?
「帰って来たな」
アルフさんの言葉に、私の気配感知にも反応あり。
「すごいな、アルフの気配感知は」
マルコフさんが感心する。
「儂、片目だから、余計に高くなったみたいだ」
バーンとララが慌てて戻って来た。
「リーダー、やっぱり『巣』あったよ。しかも結構大規模」
うわあ、いるいる、ゴブリン、わじゃわじゃいる。
風下からゴブリンの『巣』を覗く。う、くさ。
「ポーン、ナイト、ルークに、奥にジェネラルがおるな」
アルフさんが声を潜める。
「キングは?」
フレナさんが聞く。
「分からんが、この規模だしな。いてもおかしくない」
ゴブリンキングか、前世で一度対峙したな。みんなで連携して倒した記憶がある。
「どうする?」
バーンがリーダーのマルコフさんにお伺い。
「アルフ、行けると思うか?」
「ギリギリかな。始めに魔法で数を削れば行けるだろう。マリ、ショウに魔法を使わせられるか?」
「はい、大丈夫です」
それを聞き、アルフさんがマルコフさんに頷く。
「アーサー、こいつを持っとれ。近接戦は槍は不向きだ。いいか、ルナより小さなゴブリンはお前でも相手はできるが、ルナより大きいのは、正面からやりあうな、必ず援護をもらえ。リツ達も気をつけてくれ」
「「「「はい」」」」
アルフさんは足につけていたナイフを渡している。私は二代目を持つ。
「アーサー、常にリツさん達の近くで」
「はい、ルナさん」
結界効果のある鞘はノゾミに背負わせる。
「アーサー、常に身体強化を使え、もしもの時は儂らは殿だ」
「はい」
盾を出したが、アルフさんの手が持ち手に入らなかった。うーん、不謹慎だが、本番のドワーフの盾戦見たかった。私が装備、軽いなあ。
よし、こんな時の加護だよね。
「我が守護天使バートル様、皆を御守りください」
私の声にララが鼻で嗤う。
「はんっ、守護天使なんかに祈ってやがる」
「おやめ、ララ」
フレナさんが鋭く言う。
「なら、私も。我が守護天使リリィ様、皆を御守りください」
「じゃあ、私も。女神ガイア様、皆を御守りください」
リツさんもマリ先輩も続く。本物の加護持ちだからね。
「自分はヴォルフ様、御守りください」
「儂はハバリー様だな。皆を御守りください」
「私はデルフィン様、皆を御守りください」
アーサー、アルフさん、ローズさんも続く。
僕も祈ろとバーンもモゴモゴ。つられたのか何人か祈りを捧げる。
よし。
「いいか?」
魔法職が頷く。
火魔法はアルフさん、アーサー、フレナさん、キャリー。風魔法は私、リツさん、マリ先輩、ショウ、イレイサー。ローズさんも雷で参戦。
全員が呪文の詠唱に入った。
読んでいただきありがとうございます