表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/386

受け入れ⑦

皮鎧

 私は工房のドアをノック。

「アルフさん、おはようございます。朝ごはんですよ、アルフさん」

 もう一度ノックするが、返事がない。ドアノブを回すが鍵がかかっている。

「アルフさん、アルフさん」

 おかしいな、いるはずだけど。あ、もしかしたら中で倒れてないよね。まさか、ね。

 ………

「アルフさん、アルフさんッ」

 あ、まずいかも。どうしよう、鍵は、あ、リツさんが持っているはずだから、それを借りよう。

 私が屋敷が向かおうとすると、ガチャンと鍵が開く音。

「よう、ルナ」

「アルフさん大丈夫ですか? 返事がないから」

「すまん、うつらうつらしてた」

 ドアから顔を出したのは、寝起きのアルフさん。眠そう。

「徹夜したんですか?」

「まあな、だが、アーサーの鎧できたぞ」

 アルフさんが工房に入れてくれる。

「ほら、いい感じだろう?」

 トルソーに着せられた黒い皮鎧。おお、本当にいい感じ。籠手やすね当てまである。

「カッコいいですね」

「後は付与だが、これはリツ達に頼むかな。儂は皮には付かんし」

「一晩でよくできましたね」

「調子がよくてな。ふあぁ」

 アルフさんがあくびをする。さすがに連続徹夜はきついみたい。

「あの、朝ごはんどうします? 寝ます?」

「いや、頂こう。腹減っとるし」

 目をこするアルフさんと、台所に戻る。

「あの、アルフさん」

 アーサーが駆け寄ってくる。

「おうアーサー、工房に鎧あるから、サイズ確認しておけよ」

「自分は奴隷なのに、鎧なんて…」

 恐縮するアーサー。

「気にするな」

 ポンポン、とアーサーの肩を叩くアルフさん。

 朝ごはんの準備済んでる。

 ピザトーストとスープだ。

 しきりに恐縮するアーサーをホリィ一家が待つ部屋にやり、私達も朝食となる。

 いただきます。パクっ。

 うん、ホワイトソースとキノコが合う。パンも美味しい。パクパク。

 あ、そう言えば。

「ゴブリンと従魔の件どうなりました?」

「あ、そうね。ルナちゃん知らなかったわね」

 リツさんが紅茶を一口。

「ゴブリンの件は調査依頼を出すって。辺境伯様にも報告がいって周辺の警戒をしてもらうって。城門を出る人達にも注意してくれるって」

「そうですか」

 パクパク。

「従魔は?」

 マリ先輩がスープを飲んで答えてくれる。

「無事に登録できたわよ」

 マリ先輩の話は続く。

 グリフォンの名前はショウ、カラーシープはノゾミにしたと。カラーシープは珍しくないが、やはりグリフォンには驚かれたようで、注目の的だったようだ。まあ、アルフさんがさりげなく、ガードしていたようだけど。冒険者ギルドの職員いわく、このグリフォン、カラーレス・グリフォンらしく、劣化個体らしい。グリフォン自体の生態は正確にわかってはないが、劣化個体とわかった時点で親個体は育児を放棄し、次の繁殖に励むらしい。

「ショウ、もう大丈夫だかね」

 マリ先輩が、優しくショウに声をかける。

 グリフォン、ショウだね、頭をマリ先輩の手にすりすり。うん、かわいい。魔物の世界もシビアだね。

 ショウとノゾミは、マリ先輩特製の餌を平らげている。蒸した野菜だ。

「なあ、アーサーの鎧の件で、少しいいか?」

 アルフさんが二枚目のピザトーストを食べて、リツさん達に話しかける。

「儂は革系に付与は苦手でな。任せたいんだが」

「大丈夫です。何をつけた方がいいですか?」

「土の補助だな。後は、魔法防御か衝撃吸収か、そうだな、自動修復出来るか? コブラの皮だから、かなり硬度はあるし、軽いしな。硬化や重量軽減はいらんだろう」

「わかりました」

 リツさんが早速どうするか、マリ先輩とローズさんと相談開始。

 アルフさんは朝食後、シャワーを浴びて就寝。リツさん達はアーサーの皮鎧の調整に入る。

「わあ、よく似合うじゃない」

 フォレストダークコブラの皮鎧を身につけたアーサー。うん、髪も黒だし、綺麗な鱗模様によく似合う。籠手やすね当ても全て着けると、うん、冒険者だ。

「そ、そうですか?」

 リツさんに言われて顔を赤くするアーサー。

「サイズはよろしいようですね」

 胴回りの細かいチェックをするローズさん。

「手は痛くない? 足は大丈夫?」

 マリ先輩が、手足のチェック。

 わあ、かわいいリツさんマリ先輩、美人のローズさんに囲まれ、アーサーがわたわたし始める。うん、かわいい。

「アーサー君もブーツ作った方がいいかしら? デザインはアルフさんと同じで」

「あの、リツ様、自分はこの靴だけで、十分です」

「でも、走り回るなら、それじゃね。靴底減りそうだし。そうだ、アルフさん、まだコブラの皮持ってるかしら? 起きたら、聞いてみましょう」

 アーサーの装備が揃っていくなあ。

 しきりに遠慮するアーサーそっちのけで、三人の話が進んでいった。


「メエメエ~」

 ノゾミが庭を走り回る。

「待ってノゾミちゃん~」

「ノゾミちゃん~」

「きゃははは」

 そのノゾミを追いかけるちびっこ達。

 ショウは近くに芝生に伏せて寝ている。さすがに劣化個体とはいえグリフォン、怖いようで、母親のホリィさんからも近くによらないように注意されていた。

 私はアーサーと剣の稽古をして草むしり。

「え、薙刀に魔力流せたの?」

「はい、絞ってと言われたので」

 昨日のゴブリンとの戦闘を聞いてみると、なんと、魔力を流せたと。さすが魔力操作を持つだけはあるのか、二代目を使いこなすのに結構苦労したのに、なんだか悔しい。

「あの槍すごいですね、ゴブリン切るのになんの反動ないから」

「衝撃吸収の付与があるからね」

「あれもアルフさんが?」

「違う人よ、頂いたの。アーサー、あの槍、あんまり人に知られたくないから話さないでね」

「あ、そうなんですね、わかりました。今、リツ様が持ってます」

 良かった素直で。

 三人は工房に籠り付与の作業している。

「アーサー、魔力系のスキルあるから、付与もできそうね」

 草をむしりながら話をする。

「付与ですか? どうでしょうね、やったことないから分かりません。ルナさんは?」

「私はダメね。リツさんに教えてもらったら?」

「リツ様のお手を煩わせたくないです」

「そう」

 草をむしる。むしる。

 一瞬アルフさんの顔が浮かんだが、今は忙しいようだしね。負担だね。私が教えられたらいいんだろうけど。残念。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ