受け入れ④
ペット? いいえ、家族です。
私はシャワーを浴びて、着替える。シャツとカーディガン、膝上までのハーフパンツ。
「皆さん、居間にいらっしゃいます」
ホリィさんが濡れたタオルを預かってくれる。
私はお礼を言って、居間に向かう。
「ルナちゃん、ちょっといらっしゃい」
居間に入るとリツさんに捕まり、こんこんと説教されました。
「いいルナちゃん。あんな格好でうろうろしてはいけません。せめて何か羽織りなさい。いい、親しき仲にも礼儀ありよ。わかった?」
凄い笑顔のリツさんに言われて、ちょっと怖くて、はい、と返事をする。
「アルフさんもですよ」
「儂もか?」
「そうですよ」
リツさんのこめかみがピクピク。
「儂、無実」
「何かいいました?」
「いいや、何も」
アルフさんに明後日の方向を向く。
「メエメエ」
私の足元にカラーシープの子供が寄ってくる。反射的に手を出すと、はみはみ。かわいい。
「ところで、このカラーシープとグリフォンはどうしたんですか?」
グリフォンの背中を撫でているマリ先輩に聞く。天地の王者と呼ばれるグリフォン。高い知性、強力な魔力、強靭な体を持ち、誇り高いグリフォン。
「ぴすぴす」
鼻から変な音を出し、マリ先輩に大人しく撫でられている。なんか、イメージが、グリフォンのイメージが崩れる。
しかし、色が変だ。体毛の色が、白一色だ。普通は鷹の頭が白、獅子の体は深い茶色なのだが。よくみたら、まだ若い個体のようだ。
「えっとね、実は…」
四人は城門を出て、薬草の取れる場所に移動。城壁近くで、比較的安全、一般市民も薬草や野草等を探しに来るような所。定期的にトウラの騎士団遠征と、冒険者ギルドも時期が被らないように、巡回を行っているからだ。
そこで薬草を探していたら、急にマリ先輩が、
「声が聞こえる」
と、言い出した。
マリ先輩がしきりに言うので、そちらに向かった。もちろん安全域でも、ローズさんとアーサーは警戒していた。
向かった先にいたのは、このグリフォン。回りにゴブリン、合計13匹に囲まれていた。ゴブリンは次々体が見えない刃で切り裂かれていた。風魔法だろうな、グリフォンは魔法の使える魔物だし。だか、やはり数が多かっのか、グリフォンは手こずっていた。当然のように助けようと、マリ先輩が飛び出そうとしたがローズさん静止。
「でも、助けないと」
「ここは私が、アーサー、周囲の警戒を」
ローズさんがアーサーに指示。リツさんがアイテムボックスから薙刀をアーサーに渡し、ローズさんはナイフを構える。
マリ先輩がグリフォンに声をかけながら、ローズさんが斬り込む。
無傷のゴブリンはいなかったため、あっという間に片付いたが、やはり、後ろに控えていたマリ先輩とリツさんにゴブリンが向かったためアーサーが迎撃。うん、よくやったアーサー。
「ルナさんとアルフさんに比べたら」
らしい。アルフさんはそうだとしても、私、そんな?
で、ゴブリンを始末してマリ先輩がグリフォンに駆け寄り浄化とヒールを発動。
「大丈夫?」
優しくマリ先輩が撫でると、すり寄って来たらしい。いや、マリ先輩、相手魔物よ。すり寄って来たからって、ダメでしょ、
「この子、かわいい、連れて帰る」
「いけません、マリ様」
マリ先輩がグリフォンを抱き締めて訴える。ローズさんは冷静に返す。
「リツちゃん、ダメ? ちゃんと世話するから」
なんて話していたら、グリフォンの後ろから、このカラーシープが出てきて、リツさんは一発で落ちた。
マリ先輩曰く、どうやらこのグリフォンとカラーシープはお友達らしい。このカラーシープを守ろうと、グリフォンはゴブリンを蹴散らしていたらしい。
…捕食者が、捕食対象とお友達? なんか変だか、マリ先輩は断言してるからそうなんだろう。
「ちゃんと世話するなら…」
「ありがとうリツちゃん」
ローズさんは最後まで反対したが、すがり付いてきたカラーシープにノックアウト。
「で、連れて帰って来たの。ね、ルナちゃん、かわいいでしょ?」
「いや、かわいいですけど。それより、そんな近い所にゴブリンが10匹以上いたことが異常でしょう」
「え、そうなの?」
マリ先輩が首を傾げる。
「ゴブリンは基本的には臆病なんですよ。田舎の村ならまだしも、こんな城塞都市の近くでは見られません。魔の森近くなら分かりますが。定期的に討伐や遠征なんかされているなら尚更ですよ。しかも数が多いですよ、普通多くても10はいきません」
そう、ゴブリンは上位種ならまだしも、基本的には魔の森からあまり出ない。必ず複数で行動し、自分達より弱い個体を狙う。グリフォンなんて、相手にしない。
「じゃあ、なんでいたの?」
「可能性として、ですが、『巣』があるかもしれません。もしかしたら上位種がいて、それの指示でこのグリフォンとカラーシープを襲ったのかも。数も多いし、上位種がいれば、おそらくまだ残っている個体がいるかも」
「そうなの? 冒険者ギルドに話した方がいいかな?」
「そうですね、早急に、私、着替えてきますから」
「ルナはここにおれ、儂が着いていく」
黙って聞いていたアルフさんが手を上げる。
「でも」
「病み上がりは大人しくしておれ。それにこいつらの従魔登録もせんといかんだろう? カラーシープはともかく、グリフォンなんて、登録せんかったらトラブルの元だ」
確かに、そうだね。
カラーシープは比較的飼育されている魔物で、性格も温厚。その毛は上質で高級、私のレギンスやカーゴパンツもカラーシープの毛でできている。
「帰って来たばかりで悪いがいいか? 一般人が襲われたらことだしな」
アルフさんが腰を上げる。
「そうですね、誰かが、襲われたら大変」
マリ先輩達もアルフさんに続く。マリ先輩が立ち上がると、その足にすがり付くカラーシープ。マリ先輩はカラーシープを抱き上げる。
「なついているから、マリ先輩が従魔にしたってことですか?」
「そうみたい。ステータスにも追加されてた」
さっとマリ先輩に寄り添うグリフォン。見ただけでそんな感じだよね。
まさか、テイマーの資質もあるなんてびっくり。
マリ先輩がステータスを見せてくれた。
マリーフレア・クレイハート レベル8
16才 人族 魔法使い 錬金術師 テイマー
スキル・火魔法(14/100)・風魔法(10/100)・土魔法(19/100)・光魔法(18/100)・無属性魔法(6/100)・魔力感知(28/100)・剣術(9/100)・棍術(8/100)
従魔・グリフォン ・ワンカラーシープ
加護・女神から見出だされた者
「それかねルナちゃん。ちゃんとゴブリンの耳、切れたよ。リツちゃんもよ」
マリ先輩がすごいでしょ、と、言ってくる。
ちらっとローズさんを見ると頷いている。
「わかりました、戦闘許可出します」
「ありがとうルナちゃん。行ってくるね」
読んでいただきありがとうございます
ブックマーク登録ありがとうございます