表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/386

閑話

閑話です。

 私はマリーフレア・クレイハート。前世は日本の女子高生だった。飲酒運転の車に跳ねられ高校2年の春に死んでしまった。

 思い出した時は確かにショックだったけど、優しく頼りになるお父様、厳しいけど本当は誰よりも愛情深いお母様、かわいい弟シュタム。いつもサポートしてくれるローズ、沢山の優しい使用人達に囲まれ私は幸せ。

 前世の共働きで一生懸命働いていた両親や、しっかりもののお兄ちゃんやお姉ちゃん達、そしてお菓子作りの上手のおばあちゃん、元料理人のおじいちゃん。大好きな家族。

 会えないのは寂しい、けど、今の家族も大好き。

 前世の記憶がなぜあるか分からないけど、使わないと損、損よ。きっと役に立てるはずと、お父様にいろいろ言って見たら、はじめは相手にされなかったけど、必死にプレゼンしたわ。やっと聞いて貰えたら、再現に手間取ってたみたい。

 そんな中、ナリミヤ様と出会う機会があり、お互いに日本人だと直感、ビビっと分かったわよ。でも、内緒にしてもらった。だって、気味悪いとか言われたり、今の家族に何があったら嫌だしね。

 ナリミヤ様のアドバイスで、魔道具は飛躍的に発達し、比例してクレイハート家の財政も増えたらしい。いくらか分からないけど。

 まあ、ジェイムズ様はね、はじめから、なんか引っ掛かることはあったけど、これはまた今度。

 今はそんなことよりも、この、かわいい生き物よ。

「タスケテ」

 お玉を握りしめて、見たことのないくらい、不安そうな顔のルナちゃん。

 いつもあんなに余裕綽々なルナちゃん。ゴブリンの耳を平気な顔して切り落とし「これが出来ないと、戦闘許可出しません」なんて言っていたのをルナちゃん。学園でも、女の子なのに騎士みたいな礼をしていたルナちゃん。ナリミヤ様のお宅で、身を呈して私達を守ってくれたルナちゃん。

 そんなルナちゃんが、お玉握りしめて青い目をぐらぐら揺らして訴えてきた。

 かわいい、かわいい、かわいい。

 シュタムだってかわいかったけど、最近生意気なのね。

 前世は末っ子だったから、欲しかったねよ。

 かわいい妹が。

 学園でローズからもらった巾着のお礼のクッキーを食べた時から、ルナちゃんは私のストライクど真ん中だった。

 だってだってだって。何でもないって顔してたのに、クッキーを口に入れたから、青い目を開いて、くうううぅぅぅ、みたいな顔したのよ、かわいいのなんの。あ、この子、私の妹にならないかな? なんて本気で思ったわ。でも、ルナちゃんはクッキーを一枚しか食べなかった。弟君と妹さんにあげたいって、なんていい子なの。で、めちゃくちゃかわいい。そんなルナちゃんが、助けを求めてきた。ここは答えたくてはならない、私はルナちゃんのお姉ちゃん(自称)なんだから。

 リツちゃんもそんな感じで、すぐにルナちゃんの側に。多分、リツちゃんにとって、ルナちゃんはかわいい姪っ子ちゃんの位置かな。ルナちゃん、リツちゃんの作る料理を何でも美味しそうに食べるんだもの。すぐに、リツちゃんもルナちゃんのかわいさに落ちちゃった。

「何か足りない、分からない」

 動揺しているかわいいルナちゃん。

 鍋にはブラッディグリズリーのワイン煮込み。問題なさそうだけど、ルナちゃんは何か足りないらしい。

 確かに高価なブラッディグリズリーのお肉だし、何よりアルフさんの好物らしいしね。

 美味しく作り上げたいよね。

 このアルフさん、かなり鍛治師として優秀。そして、何より格好いい。背丈はあるし、穏やかなイケメンだし、始めは槍なんて持っているから冒険者だと思ってたけどね。

 うちのルナちゃんが、去ろうとするアルフさんの手を握るんだもの。ぴーん、ぴーん、ぴぴーん、と、来たわ。これは、一肌脱がなくては。すぐに、私、リツちゃん、ローズの連合結成。いまだに、作戦起動中。

 でも、アルフさんにはみんな感謝している。だってルナちゃんを助けてくれた。ブラックトレントやブラッディグリズリーから守ってくれて、魔の森からルナちゃんを抱えて連れ帰ってくれた。知り合って間もないほぼ他人にそこまでしない、きっとアルフさんもルナちゃんが気になっているはず。ルナちゃんの話を聞いてそう思ったねよ。だって、普通「ルナもおるしな」なんて言わないわよ絶対。当のルナちゃんはちょっと鈍いみたいだけど、まあ、それはおいおい。

 あ、鍋、グリズリーのワイン煮込み。うーん。どうしようかな、

「ケチャップ」

 リツちゃん案。

「味噌」

 私案。両方採用されました。

「あとは愛情よ」

 その言葉に首を傾げるルナちゃん、考えて納得してくれていた。灰汁を採り、焦げないように時々鍋をお玉でゆっくりかき回す。何時間も。一人で。

 無事にアルフさんの口に合ったみたいで良かった。ルナちゃん、グリズリーのワイン煮込みの前を行ったり来たりしてたしね。

「旨いぞ、ルナ」

 アルフさんの好印象のポイントが上がっている、胃袋掴んだか? 浅いかな? いや、まず、初印象はよしよし。

 どんな経緯か分からないけど、アルフさんも無事に冒険者登録したみたい。きっとルナちゃんだね。今度はじっくり聞かないとね。

 まあ、アルフさんのステータスには、びっくりだった。よく、うちに来てくれたなあ。年がちょっと離れてるけど、人族にしてみれば、見たまんま二十歳くらいだろうし。なんとかなるでしょ。だけど、本職鍛治師ギルドが忙しいみたいで優先なのは、仕方ないよね。とにかく、私達との接点があれば、ルナちゃんが着いてきますよアルフさん。

 水の日マルシェでお魚が売り出されるから、ルナちゃんにお留守番してもらう。もちろん、作戦ですよ。二人きり作戦ね。

 でも、帰って来ても台所にはいない。どこかな、てなんとなく工房のドアを開けると、ルナちゃんの手を握るアルフさん。

 あ、お邪魔ね。

 私はドアは閉めて、リツちゃんとローズに報告して作戦に調整が必要になってくるかな。

 あわててルナちゃんが誤解だって訴えてきたけど、ちゃんと分かってるわよ。照れ隠しだって。

 さ、連合で、今後どうするか話を詰めないと。今度はどんな服にしようかな? 料理のレパートリーはリツちゃんに任せて、ルナちゃんの身支度はローズ担当。

 うふふ、うふふ、楽しみ。

 我らのルナちゃんの為に。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ