受け入れ準備④
付与の価格
昼食後、アルフさんは帰って行った。
それを見送って、三人は急いでシャワーを浴びて、身支度を整える。私は留守番かと思ったが、マリ先輩の笑顔に負けて、新しいワンピースを着る。あのリツさんのワンピースを改良されてた。スカートは別の布の足し、同じ生地で太めのベルトでウエストを絞め、首元の赤いリボンはなくなり、ちょっと大きなボタン。多分ましだ。うん、お子様から、背伸びしている子供みたい。
ローズさんによるヘアスタイルをあっという間に整えられる。準備を確認し、いざ、鍛治師ギルドへ。
「ようきた嬢ちゃん達ッ」
鍛治師ギルドマスターが槌を振り回し迎え入れてくれる。危ないって。アルフさんが襟首を掴んで、止めている。
「ギルドマスター、言ったと思うが彼女達には決して無理はさせんでくれよ」
「おう、そうだったな。嬢ちゃん達。儂は鍛治師ギルドマスター、バルハだ。アルフから話は聞いとると思うが、まあ、とりあえずこっちに来てくれ。細かい報酬の話を副ギルドマスターから聞いてくれ」
あのおじいちゃんドワーフね。
アルフさんが応接室に案内してくれる。
「いらっしゃい。お嬢さん方」
応接室には、優しい笑顔のおじいちゃんドワーフ。
「まあ、お座り。儂は副ギルドマスターのダビデじゃ。早速で悪いが付与が使えると?」
「はい。無属性の物理防御、魔法防御、硬化強化なら全員使えます」
リツさんが、代表して答える。
おじいちゃんドワーフ、ダビデさんが私を見る。
「私はできません」
「そうかい。では、属性付与は? 魔石は必要かな?」
ダビデさんが聞いてくる。これは先ほどアルフさんが釘を刺していた。リツさんは全属性を使用できるが、知られない方がいいだろうと。確かに全属性なんて、持っているのは、リツさんとナリミヤ氏くらいだろうし。
「小なら、魔石はいりません。私は火と水と土、光です」
リツさんがスキルレンジが10越えているものを上げる。
「私も小なら魔石は必要ありません。私は火、風、土、光です」
マリ先輩も答える。
「私は雷しか使えませんので。使えるのは無属性です。魔石は必要ありません」
ローズさんは申し訳ないように答える。
ダビデさんは、ほっほっほっと笑う。
「これは頼もしい。闇以外は揃っとる。お嬢さん方はさぞ優秀なのだろうな。さて、アルフから絶対に無理はさせるなと言われておるからな。まずは報酬の話をせんとな」
ダビデさんが報酬の説明をする。
基本的に小の額だ。
・無属性 物理防御 魔法防御 硬化強化 一つ付与毎に10000
・無属性 衝撃吸収 重量軽減 一つ付与毎に20000
・各属性補助 一つ付与毎に35000
・各属性 衝撃斬波 一つ付与毎に80000
・光属性 自動修復 一つ付与毎に100000
「それと、1日鍛治師ギルドで働いたら、別に5000出そう。どうかなお嬢さん方」
付与って、やはり高額。中の額が聞けない。二代目やナイフ、ラウンドシールド、薙刀、一体いくらするんだろう。最後にもらったあのロングソード、まだ怖くて詳しく見てないけど、しばらくマジックバックから出番はない。
以前、ギルドマスターのバルハさんがアルフさんに言っていた。
「鍛治師一本で行ける」
なるほど、このことか。
「私達、毎日は来れないんですが、よろしいですか?」
「来てくれるなら、それくらいは大丈夫じゃ」
鍛治師ギルドは水の日は、炉を休ませるため受付と売店のあるロビー以外は休みだ。
三人は相談。ホリィ一家とアーサーの受け入れを控えているため、それまでは来れて3日となる。
「おお、来てくれるか。助かるよ。では、今日やって見てもらってもいいかい?」
「「「はい」」」
三人はダビデさんに連れられ作業場へ。私は後ろで邪魔にならないように控える。
そこに並んでいるのは、鎧、兜、籠手、すね当て、盾。
………何体分? 少なくても10体分はあるよ。
「これは?」
リツさんかダビデさんに聞いている。
「これは中隊長クラスの鎧一式だよ。そうだな、アルフだと4、5日かかる」
パーツが多いからね。特に鎧は。一式に一度に出来ないのだろうか? こっそりマリ先輩に聞くと、魔力関知が高くないとムラが出るらしい。なので一つ一つに付与をしていくと。誇り高い職人気質のドワーフだから、妥協なんてするわけないし。
アルフさんで4、5日か。
本当にあのナリミヤ氏は、規格外なのね。
「鉄と魔鉄がメインでな、ミスリルを少し混ぜてある。付与は無属性の物理防御、魔法防御、重量軽減を。盾には、魔法補助をつけてほしいのが、7枚。土が3枚、火が2枚、風が2枚」
ダビデさんが説明してくれる。
「まず、一式してみましょう」
リツさん達が作業に取りかかる。
私は手持ち無沙汰だ。まあ、こんな格好だしね。
お茶でも、準備しておこう。
三人はなんとか分担しながら付与をかけていくが、その日1日で一式が終わらなかった。兜や籠手、すね当てはなんとかなったが、鎧と盾で躓いていた。やはり、付与をかける面積や重量の関係かは分からないが、魔法補助のつけない盾に悪戦苦闘。結局アルフさんがストップをかける。
「これで終いだ、よかろう? 副ギルドマスター」
「ほっほっほっ、もちろんじゃよ。お嬢さん方、ようやってくれた。受付で今日の報酬を受け取っておくれ。アルフや、家まで送ってやってくれ。それから、お前も今日は上がれ」
「いいのか?」
「構わんさ、しっかりな」
パチリ、とおじいちゃんドワーフ、ダビデさんがウインク。あ、かわいい。アルフさんは、ちょっと驚いたがすぐに笑顔を浮かべる。
「感謝する」
「ほっほっほっ」
私達はアルフさんに促され受付に向かう。
三人は受付で今日の報酬をそれぞれ受け取っている。
アルフさんも、タオルとエプロンを外し、いつもの槍を持つ。いつみても重そうだな。
「どうしたルナ?」
「あ、いえ」
槍をチラチラ見ていたため、気付いたアルフさんが私の顔を覗き込んできた。相変わらず優しい赤い目。近い、近い。
「槍、重そうだなって」
私は顎を引いて、少し引く。
「これか? まあ、魔鉄製だからな。持って見るか?」
「え、いいんですか?」
「ああ、ほら、重いぞ」
アルフさんが、槍を私に傾ける。
いいのかな? でも、気になっていたし、ちょっと失礼して。
「ありがとうございます」
柄を持つと、やはり太いし、うわ、重い。ダメだ、持ち上がらない。危うくよろめくと、アルフさんが槍を持つ。
「重いだろう?」
「はい、よく振り回せますね」
「まあ、ドワーフは他の種族に比べて筋力あるからな」
確かにそうだけど。そういえば、私を抱えて魔の森から、町まで運んだし、すごい筋力と体力。レベルも高いし、その補正もあるだろうけど。
「ルナちゃん、お待たせ、帰りましょう」
マリ先輩が本当を受け取って声をかけてきたのて、私はアルフさんまと一緒に、マリ先輩達と鍛治師ギルドを出た。
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