受け入れ準備②
ランク
「ねぇ、ルナちゃん、スタンピードって、魔物が沢山出てきて、町とか襲うんだよね?」
生地屋を出て、リツさんが聞いてくる。
「そうです」
「冒険者も、戦うの?」
「そうです。でも、低ランクは後方支援です。リツさん達は、後方支援ですよ」
「ルナちゃんもだよね?」
リツさんが心配そうに聞いてくる。
「私のスタートランクによりますが、アルフさんは駆り出されるでしょうね」
「そう…」
リツさんが沈んだ顔で呟く。
「何とかしてそれまでにグレイキルスパイダーの生地で装備品作らないと」
リツさんが考え込み、マリ先輩やローズさんと相談している。
「ルナちゃんに、革の鎧はどうかな? 籠手とかすね当てとか。なるべく動きを制限しないように」
マリ先輩が意見を出しているが、
「まず、皆さんの装備品揃えてからにしてくださいね」
私が言う。カラーシープのレギンスとカーゴパンツだけで、十分なんですよ。
「何を言っているの? 最優先よ」
「そうよルナちゃん」
リツさんとマリ先輩が当然の様に言う。
「まず、ブーツね、帰って測りましょう」
「お揃いにしましょうね」
二人の中で計画立案される。
まあ、いいか。楽しそうだし、かわいいし。
屋敷に帰って再び工房へ。
足のサイズを測られる。粘土に足の裏の形まで。
全員のサイズを測定し、デザインを開始。
シンプルなローズさんのショートブーツとなり、型紙作成。
靴底は型紙通りに裁断し、錬金術で細かい形成。他のパーツを合わせて、錬金術をローズさんが発動。
ショートブーツと中敷きが出来上がる。
ショートブーツはキリングボア、中敷きはホーンティア。
全員分制作し、中敷きの付与は小の自動修復と浄化。ショートブーツには小の物理防御と衝撃吸収。
試着してみると、すごくぴったり。
「すごく履き心地がいいです」
軽くジャンプしても、衝撃が伝わらない。
魔石を使えば、もっと付与ができるらしいが、私がブラックトレントの魔石を出したが、受け取ってもらえなかった。トレント材だけは、闇魔法のスキルが高い、アーサーの槍の柄予定として、リツさんのアイテムボックスに納められた。
そこで本日の作業終了。
夕食は焼き餃子にコンソメスープ、ご飯だ。さんざん包んだ餃子。
楽しみにしていたから、早速一口。速攻で口を火傷しました。あっつう、あっつう、でも肉汁が、野菜の甘味と合ってて、美味しい。あう、火傷さえしてなければ、もっと美味しいはずなのに。
しかし、この醤油とビガネーを混ぜた浸けダレがいいアクセントがいいな。パクパク。
「まだ、餃子があるから、スープにして、揚げ餃子にしましょう。今度、焼売とか春巻きとか作りましょうか」
「いいね、飲茶」
リツさんとマリ先輩がまた美味しそうな話をしている。
「ごま、欲しいわね。タケノコは無理ね。あっても時期的に無理ね」
「そうね、あ、明日マルシェにいきましょう。ごまくらいあるかも、ごま油とか錬金術で作れないかな」
「いいわね。香りがいいし」
リツさんとマリ先輩の美味しい話が進む。
何でもお手伝いしますよ。パクパク。
それから、ラーメン、焼きそば、中華丼、甘酢あんかけ、バンバンジー、なんだろうきっと絶対美味しいはず。
次の日。
朝からマルシェに向かい、いろいろ購入した。
季節は秋に変わりつつあり、様々な食材が並ぶ。
あちこち回り、ごまを無事手に入れた。結構な量を買ってました。
しかし、新鮮な食材が並んでいる。
少なくなっていた牛乳やバター、卵に、様々なチーズ。
「カボチャのグラタンにしましょうか、スープにしても美味しいし」
リツさん、いくつカボチャ買うの? まあ、お店の人は嬉しそうだし。
それから、栗やリンゴ等を購入。
「パイにしましょうね。アップルパイにパンプキンパイに、あ、栗もパイもしましょう。ミートパイも作りましょう」
何でもお手伝いしますよ。
硬いカボチャも、一刀両断しますよ。うっふっふ。
「帰って色々作りましょう」
了解です。
大量の食材がリツさんのアイテムボックスに納められる。
屋敷に帰り、昼食を取り、リツさんはパイ生地作り、マリ先輩とローズさんはごま油を製作。私はひたすら皮剥きだ。
リンゴにカボチャに何でも来いだ。
だんだんだんだん。
リツさんは鍋に切られたリンゴと砂糖を入れる。もう一つの鍋にカボチャとコンソメスープを入れる。大きな蒸籠には、私が切ったカボチャが入っている。
「ルナちゃん、リンゴは焦げないように混ぜてね。カボチャも時々見てね」
「はい」
了解です。
まぜまぜ。
「リツちゃん、ごま油、うまくいったよ」
マリ先輩が嬉しそうにガラス瓶に入った琥珀色の液体を掲げる。
「すごいわ、リツちゃん。これで中華が充実するわ」
なんだろうチュウカって? 異世界言葉だろうけど、きっとおいしいもののはず。
「今日の夕食はチャーハンにしましょう。卵スープね、あ、蒸籠があったから、蒸し野菜もつけましょう」
本日も豪華メニューです。
リンゴよし、カボチャよし。
カボチャはそれから潰して牛乳を入れてしっとりスープになる。リツさんと味見。うわあ、優しい甘さが広がる。
「うん、甘い」
リツさん納得。
「ジョッキでいけます」
キリッと感想を述べる。
「うふふ、ルナちゃんったら。作り方は大丈夫? もう一回作れる?」
「大丈夫かと」
「じゃあ、お願いね」
「はい」
再びカボチャを鍋に二つ。グツグツ。
蒸されたカボチャをリツさんが潰しているので代わり、ある程度形が残った感じになる。
よし、こんなもんかな?
リツさんと交代し、私は鍋に。
砂糖やら牛乳を混ぜパイ生地に包む。リツさんのパイは長方形だ。リンゴも同じようだ。マリ先輩とローズさんは栗の処理をしたあと、パイ製作に参加している。ひき肉やキノコが入ったパイだ。うん、美味しそう。
次々にオーブンで焼き上げ、リツさんのアイテムボックスとローズさんのマジックバックに入る。
あ、お腹減ってきた。
なんて思っているとマリ先輩が声をかけてくれる。
「ルナちゃん、ちょっと休憩しよう」
待ってました。
「はい」
カボチャのスープを仕上げて、そそくさとテーブルに着く。
「はい、出来立てアップルパイとミルクジェラートよ」
ローズさんの紅茶もばっちり。
「いただきます」
まずは熱々アップルパイを、あ、シナモンの、あっつう、香りが合う。リンゴ、甘い。隣のジェラートは確か氷菓子だよね? ぱくり、あ、濃厚なミルクの味が広がる。熱々のアップルパイと冷たいジェラート。正反対なのに、すごい相性がいい。
「なんだか、マリ先輩とローズさんみたいですね」
私は感想を述べる。
「どうして、私達なの?」
「えっと、ですね、どちらも美味しんですが、一つであるより、二つであった方がより美味しいというか、相性がいというか。すみません、上手く説明できなくて」
「いいのよ、ルナちゃん」
マリ先輩は嬉しそう、ローズさんもさっと紅茶を追加してくれる。
「次はレーズンを入れてみましょう。パイ生地を多目に作っておけば、使い勝手がいいかもしれない。あとは餃子の皮ね。春巻きの皮もレンジがないけど作ってみようかしら、あれもアレンジきくし」
リツさんが食べながら、次の構造を練る。
お茶の後、リツさんはマリ先輩とローズさんにパイ生地を任せ、大量の餃子の皮を作り上げた。それから春巻きの皮に関しては、リツさんは悩んだ末に材料を混ぜて伸ばして、加熱と乾燥を調整した錬金術で案外簡単にできたので、これまた大量に作っていた。
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