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受け入れ準備①

チョキチョキ

「じゃあ、ルナちゃん、お願いしても大丈夫?」

「はい」

「ここまで切ったら、この箱に入れてね。次はこの箱ね」

「はい」

 リツさんがクリスタム産の薄茶を渡す。その布には線が引かれている。この線通りにハサミで裁断するのだ。これくらいならできる。はず。

 チョキチョキ。チョキチョキ。

 サイズ的にアンナ達の服かな? うふふ、小さくてかわいい。お揃いのワンピースだね、きっとかわいいだろうな。

 チョキチョキチョキチョキ。

 工房の奥でマリ先輩とローズさんが次々に服を錬金術で作っている。最初は裁断せず、全部錬金術でしようとしたが、魔力の燃費が悪く裁断してしたらかなり消費が押さえられたようで、裁断してから錬金術となった。

 チョキチョキチョキチョキ。

 リツさんはタオルやフキン、シーツ類を作っている。

 まあ、ルドルフは小さいからね、シーツいるね。

 チョキチョキチョキチョキ。

 チョキチョキチョキチョキ。

 しばらくチョキチョキして、ようやく一段落。

 次のエリアに取りかかる。

 チョキチョキチョキチョキ。

 あら、なんか、サイズがおかしい。アーサーにしては、大きいよ。

「リツさん、これは?」

「ああ、アルフさんのよ。あれだけのお肉頂いたんだもの。これくらいはしないとね」

「確かに」

 でも、いつ採寸したんだろう? しかし、さすがに大きいな。

「とりあえず、シャツとズボンはカーゴパンツにしましょう。後はゆっくりめのパジャマね。ねぇルナちゃん、アルフさんは火と土魔法を使えたわよね」

「はい」

「じゃあ付与は火と土ね」

 太っ腹リツさん。カラーシープで付与か。

 私のレギンスとカーゴパンツも付与が先日無事着いた。元々、小の風魔法補助があったが、小の火魔法補助、自動修復、物理防御。大盤振る舞いだ。付与のせいか、元々明るいオリーブ色が、落ち着いたカーキ色だ。………買ったらいくらだろう? 生地だけで1mで10万でしたから。うーん、うん、やめた。

「属性のあるカラーシープの生地があれば、一番なんだけどね」

 まあ、無い物ねだりだね。トウラの生地屋には無属性はあったが、カラーシープの生地は品切れで入荷待ちの状態だった。

「とりあえず、グレイキルスパイダーの生地が扱えるまでの繋ぎな感じかな?」

 贅沢な繋ぎだな。でも、アルフさんにはそれ以上にお肉頂いたているからね。さ、裁断しましょう。

 チョキチョキチョキチョキ。

 チョキチョキチョキチョキ。

 しばらくチョキチョキして、お昼休憩を挟み、チョキチョキ。

 やっと、一段落する。ふー。

「ルナちゃん、これ着てみて、カーディガンよ。朝晩冷え出したから」

「あ、ありがとうございます」

 マリ先輩が白いカーディガンを差し出してくれる、確かに朝晩冷え出したもんね。ゆったりサイズのカーディガンを着てみる。

「温かいです」

「いい感じね。皆の分も作った方がいいわね。でも、毛糸足りないわ」

「じゃあ買いにいきましょう。靴も作らないと。革が必要ね」

 あ、私の出番だ。

「革は私が狩って来ます」

「あはは何言ってるの? 最近アルフさんに保護された子が」

 リツさんの容赦ない突っ込み。

 私は返す言葉がない。

 確かにブラッディグリズリーがあんな浅い所に出た理由も分かってないしね。多分、ブラックトレントとの戦闘音と私の血の匂いだと思うけど、ね。

「とにかく生地屋に行きましょう」

 リツさんの号令で屋敷を出る。途中で冒険者ギルドに寄り、リツさんマリ先輩、ローズさんは連名で薬草を提出する。失効したくないからね。リツさんのアイテムボックスで保存されていたホウリン草を無事提出。これで1ヶ月は大丈夫。

 それから生地屋を回る。

 毛糸や革をチェック。

 三件目でリツさんの鑑定のお眼鏡に叶うものが出てきた。

「こちらはキリングボアです」

 懐かしい名前が出てきた。

「頑丈で軽く、よくブーツや鎧に使用されます。こちらはホーンティアの革です。柔らかく、こちらも靴やコート等に使用されます」

 真剣な表情のリツさんに、店主は一つ一つ丁寧に説明してくれる。

「キリングボアはルナちゃんのブーツにいいわね」

「え、私?」

「そうよ、ぼろぼろじゃない」

 う、確かに、ライドエルから履いているから結構ぼろぼろだ。

「じ、自分で買いますよ。ブラックトレントの買い取りしてもらったし」

 そう、33万の臨時収入があったのだ、靴くらい買えます。

 首を振る私に、リツさんは何を言っているの?みたいな顔。

「ルナちゃんはスピードを生かした戦闘スタイルでしょ? 合わない靴なんてダメでしょう」

「えっと、オーダーしますから」

 そんな話をしていると、店主がおずおずと話に入ってくる。

「あのお客様、今は靴の職人が不足しておりまして、オーダーしてもかなりお時間がかかるかと」

「靴職人も、ですか? やっぱり、ミュートがらみですか?」

 私聞くと、店主は少し驚いた顔で答える。

「よくご存知ですね。はい、そのミュートに職人がかなり移動したのですが、そのミュートで処理できなくなり、こちらに仕事が回って来ています」

「なんで、そんなに仕事が多いんですか? 鍛治師ギルドも忙しいようですし」

「少し前にナインザッハからの難民を、開拓農民として受け入れたけことですね。まだ、ミュートはトウラ閣下の管轄下ですから。あの方は行き場のない、力ないものには、優しい方ですから。その人工増加に近くの魔の森が影響したのか、最近、スタンピードの恐れが出て来まして」

「スタンピード?」

 俗に言う、魔物が氾濫し、町や村を飲み込むのだ。

 定期的に魔物を間引いたりする事で、発生を防いだり、例え発生しても小規模になる。

 まあ、大事は大事だ。冒険者や騎士達が共同てあたるが、被害を甚大だ。下手したら町や村は全滅だからね。

「森が悲鳴を?」

「いえまだです。しかし、お若いのに、森が悲鳴なんて言葉をよくご存知で」

 前世の記憶です。小規模のスタンピードに当たった事があるのだ。

 スタンビートの前、魔物を宿す魔の森やダンジョンは、常に小さな音を出す。とても小さな音。それを悲鳴というのだ。滅多に起こらないスタンピードのため、そんな事を知っているのはスタンピードを経験した者か、高い気配関知を持つ冒険者や騎士くらいだ。

「まだ、その兆候はないようですが、遅くても再来年、早ければ来年ですね」

 それで備える為に、準備に忙しいのね。

「そうですか」

 来年、私は成人してる。スタートランクは分からないが、恐らくアルフさんは確実に駆り出されるはず。低ランクは後方支援で、打ち漏らした魔物を対応するから、マリ先輩達は、後方支援だね。

 なんて考えている間に商談成立。

 キリングボアとホーンティアの革、両方をお買い上げ。結構な量だ。どうやら、全員分作るようだ。

 合計12万です。何足作るのかな?

読んでいただきありがとうございます

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