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歓迎会④

 冒険者ギルドに着き、買い取りに窓口へ。今日はざわざわされなかった。

 それぞれ冒険者ギルドカードを提示すると、女性職員は直ぐに対応してくれた。

「まず、ブラックトレントですね。葉は合計30000、幹等は250000、樹皮は上質でしたので50000、全て合わせて33万です。カードへの振り込みでよろしいですか?」

「はい」

 さすがにブラックトレント。高額。

 私のギルドカードを水晶にかざし、入金終了。

「こちらにブラックトレントの実と魔石です」

 カウンターに出されたのは、一抱えある袋と布に包まれた私の拳より小さな黒い魔石。おそらく闇属性がついているんだろうな。色付きなんて、初めて見たけど。

「ブラックトレント材は倉庫です」

「はい」

「すまんが、儂の分は鍛治師ギルドに回してくれ」

「かしこまりました。次にブラッディグリズリーですが、毛皮は300000、肉は全部で3450000です。全て合わせて375万です」

 聞いて私、絶句。

「結構いい値だな」

 あっけらかんなアルフさん。

「はい、毛皮はキズが少なく、また、肉が新鮮な事が高価になった理由ですね。本来、ブラッディグリズリーなんて市場に出回りませんしね。それがさらに高価な理由です」

 ちょっと待って、もらったお肉と肝まで買い取りに出したら下手したら700万超え???

「あの、因みにモモ肉はおいくらするんです?」

 私がカタカタしながら聞く。

「グラム3000ですね。これは買い取り価格ですから、店頭に並べばもっとしますよ。なんせ、片モモ肉だけで60キロはありましたから」

 モモ肉だけで180万? 半分鍋に入っているよ。鍋に。あれ、ひと鍋、えっと、45万? え、嘘でしょ。しかも昨日夕食に食べちゃったよ。

「ロースが一番高価ですよ。グラム5000だそうです。何せ体重が500キロ超えの大物ですしね。私もここに務めて初めて見ましたし」

 女性職員の声がすりぬける。あ、いかん、気絶しそう。

 昨日作った冒険者ギルドカードに入金しているアルフさんの袖を引く。

「どうしたルナ」

「肉、肉、返します」

「何を言っとる? ワイン煮込み楽しみにしておるんだぞ」

「でも、でも」

「いいから、いいから。さ、トレント材受け取って行くぞ。リツ達が待っとるだろうしな」

 私はアルフさんに手を引かれ、倉庫に。木材となったブラックトレントをマジックバッグに入れる。

「アルフさん、あの、ブラックトレントの魔石、もらって下さい」

 私はブラックトレントの黒い魔石をアルフさんに差し出す。多分これくらいじゃ全然足りたいだろうけど。しかし、アルフさんは笑って受け取ってくれない。

「グリズリーの魔石だけで十分だ。それに家賃は安いし、旨い飯に風呂、その上、炉を使わせて貰うしな。これくらいはな。それに、ワイン煮込み以外のグリズリー料理食わせてくれるんだろう?」

「好きなだけ食べてくださいよ。本来はアルフさんのものですから」

「それは、楽しみだな」

 本当に楽しみにしているのか、アルフさんは始終笑顔だ。

 私は完全に保護者に手を引かれる子供と化して、リツさん達の待つ屋敷に向かった。

 リツさん達になんて説明しよう。


 帰って説明すると、案の定がリツさんは天を仰ぎ、マリ先輩は開いた口が塞がらない。ローズさんは相変わらずだが、一瞬目を見開いた。

 アルフさんは気にするなって感じで、残りの肉は受け取らないし。

「旨い飯を食わしてくれるんだろう? なら問題ない」

「アルフさんがそう仰るなら…」

 結局、肉はこちらで管理し、アルフさんのリクエストに答えることに。

 鍛治講座の前に、あまり顔色が優れないアルフさんに、ローズさんが特製のお茶を出す。ウサギの角にハチミツ入りの紅茶だ。アルフさん用に作られた新しいカップで出される。お茶請けは昨日焼いたクッキーと何故か私の巻いた不恰好なロールケーキ。マリ先輩の巻いた果物のロールケーキの方が見た目いいのに。

 アルフさんはお茶を飲んでほっとした表情を見せる。

「ルナがクッキー作ったのか?」

「ピーナッツ砕いただけです」

「そうか」

「ロールケーキはルナちゃんが巻きました」

「巻いただけです。歪んでますから」

 さくさく、アルフさんはクッキーを美味しそうに食べ、ロールケーキも全部平らげた。良かった食欲あるみたい。

 ちょっと話をして、鍛治講座開始。

 私はお邪魔だから、鍋を出し、もうちょい煮込むことにする。しかし、買い取りに価格にはびっくりだ。多分、マジックバッグで時間停止していなければ、こんな額ではないのだろうが。

 この鍋、45万かあ。家賃9か月分だよ。

 灰汁を慎重に取り焦げないようにして、と。あ、いい匂い。こんなものかな? 鍋を再びマジックバッグへ。

 追加のお茶を準備して、工房へ。

 炉の前で、四苦八苦している三人。アルフさんは苦笑い。

「なんか、マーブル模様になってる」

 マリ先輩が汗だくになりながら魔力を込めているが、上手くいっていない。リツさんも似た感じ、ローズさんに至っては余り溶けてない。

 アルフさん曰く、経験の差らしい。

 確かに鍛治を始めて数日だしね。アルフさんは多分、子供の頃から鍛治に関わっていたろうし。

「どうぞ、お茶です」

「すまんな」

「どんな感じです?」

「さあな、魔道炉を使いこなせて、金属を理解できたら、早いと思うがな。ちょっと時間がかかりそうだ」

「何を作っているんです?」

「ステンレスだと」

「聞いたことない金属ですね」

「儂も今日聞いた。錆びに強いらしい。ナリミヤ殿のレシピはあるがな。まず、鍋やフライパンを作りたいと」

「へぇ、アルフさんはつくれたんですか」

「まあな。配合が分かれば、錬金術を併用すれば難しい事じゃないからな、ほら」

 小さなインゴットを見せてくれる。

 鈍い銀色だ。

「なんで見ただけで、作れるんですか?」

 マリ先輩がチートだと訴える。

「儂は五つから親父達の槌の音を聞いて育ったんだぞ。お前達が見ただけでできたら、儂は鍛治師廃業せんといかんだろう」

 でしょうね。

 マリ先輩が返す言葉がない。ちょっと悔しそう、かわいいけどね。

 結局できず。まあ、そうだよね。

 夕方になり、鍛治講座は終了。

 アルフさんの歓迎会となった。

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