表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/386

歓迎会①

家賃

「ただいま戻りました」

「あ、お帰りルナちゃん」

 工房のドアをノックし、開ける。

 近くにマリ先輩がいて、笑顔で迎えてくれる。

 リツさんもローズさんも迎えてくれる。

 ああ、ほっとする。

 工房の中央のテーブルの上に大量の布、近くの小さな棚には出来上がった服。

「リツさん、アルフさんが来てます」

「あら」

 私が言うと、後ろからアルフさんが顔を出す。

「よう、リツ」

「アルフさん、いらっしゃい」

「悪いな作業中に、差し入れありがとう、旨かったよ」

「いえいえ。ルナちゃんの恩人ですもの」

 さっとローズさんがお茶の準備に入る。

「あの、リツさん、実は…」

 私はアルフさんの冒険者登録の経緯を説明する。

「まあ。そうなんですね。もちろん大歓迎ですよ」

 リツさんが手を叩いて喜んでいる。

 ローズさんがお茶を出す。

「だが、儂は鍛治師ギルドとの関係もあるから、そう、冒険者に専念はできんぞ」

「全然大丈夫です。私達も今冒険者は休止しているようなものだし。あ、そうだ。アルフさん、うちに来ません? 部屋、空いているし」

「うーん…」

 アルフさんはローズさんのお茶を啜る。手が大きいから、取ってを持たず、カップを縁辺りを直に持ってる。

 やっぱり、小さいな。

「確か、奴隷が来ると。ルナに聞いたが」

「はい。女性とその子供三人、男の子一人です」

 うーん、と悩むアルフさん。

「リツ、ちょっと条件があるがいいか?」

「はい」

「まず、儂は鍛治師ギルドが優先」

「それはもちろんです」

「ここに来るのは構わんが、その男の奴隷がくるまでは伸ばしてもらえんか?」

「それは、構いませんが」

 最後に、と。

「儂、いくら家賃払えばいい?」

「えっと、もらっていいんですか?」

「さすがに、タダではいかんだろう。確か食事付きって言っていたし」

「では、ルナちゃんと同じ5万で」

 え、みたいな顔のアルフさん。

「安くないか? 儂、この体だから食べるぞ。もうちょっと」

「アルフさんには、武器や装備でご相談に乗ってほしいし。アーサー君が冒険者になるなら、男同士だろうからいろいろお願いしたいし。この値段で。あ、炉も必要時使ってもらって構いません」

「本当にこの額でいいのか?」

「大丈夫ですよ」

 アルフさん、本当に大丈夫なのかって顔。

 分かりますよ、アルフさん。私も始めそんな感じだったし。

「なら、お言葉に甘えるが、あ、儂そろそろ帰らんとな。茶、ご馳走になったな」

「アルフさん、アルフさん」

 私はアルフさんの袖を引く、付与のことだ。

 しかし、アルフさんは首を振る。

「それは、また、今度な。リツ、明日の昼過ぎに来るな」

「あ、はい」

「私、迎えに行きます。トレントの買い取りもあるし」

「なら、待っとるぞ」

 頭、ポンポン。

 もう、慣れてきた。

 玄関までアルフさんをみんなでお見送り。

「じゃあな。ルナ、楽しみにしとるぞ」

「はい、きっと美味しくできますよ」

 何の事かわからない三人。後で説明しなくては。

 アルフさんの広い背中を見送って、振り返ると、すごい笑顔のリツさんとマリ先輩。

「さ、ルナちゃん、おうちに入りましょう」

「ローズ、フルーツタルト、まだある?」

「はい、ございます。お茶の準備を」

 素早い動きで、私は屋敷のなかへ。

 さっと、お茶の準備が整う。

 作業、いいのかな?

「さ、ルナちゃん、フルーツタルトよ。フルーツの下にはカスタードがあるの」

「わあ、綺麗ですね」

 マリ先輩が差し出したのは、宝石のように輝くフルーツが載ったタルト。オレンジにブルーベリーにリンゴにマスカット、あ、高級品のイチゴまで。なんか、高そう。

 ローズさんが紅茶を出してくれる。

「さ、話ながら、ルナちゃんの話を聞きましょうね」

 わあ、怖い。

 目が怖い。

 仕方ない話すか。

「昨日トレントの件のあと、ブラッディグリズリーに襲われましまて」

「「「はあ?」」」

 三人の口からちょっと間抜けな反応。

 私はフルーツタルトを一口。オレンジの部分。オレンジの酸味もいいが、下のカスタードとクッキー生地の美味しいこと。うふふ。他のフルーツはどうだろう?

「それをアルフさんが、倒して、冒険者ギルドに解体依頼をだしたんです。そこで、肉と肝を私にくれるから、アルフさんが、グリズリーのワイン煮込みが好きみたいで、作ってくれと。なのでリツさんお願いします」

「何を言ってるの? ルナちゃんが作るのよ」

 リツさんや、何を言ってるの?

「私に出来ませんよ」

「だって、雰囲気的にアルフさん、ルナちゃんが作るの楽しみにしてるみたいじゃない?」

「リツさん達なら、美味しくできるって言ってあります。大体、私熊系なんて食べれるなんて知らなかったし」

「私だって熊鍋くらいしかしらないわよ」

 お互いにえーみたいな感じで言葉のやり取り。

「まあまあ、とにかく、お茶してから、お肉の確認しましょう。ねぇ、他に何かなかった?」

 マリ先輩に話を振られる。

「そうですね」

 ブルーベリーの部分を一口。甘酸っぱい。

「冒険者ギルドで」

 マルコフさんとフレナさん、後はバーンの事を説明。

「あ、そうそう。鍛治師ギルドの副ギルドマスターから、豆もらいました」

 マジックバッグからおじいちゃんドワーフから貰った白い袋を出す。

「マリ先輩、これでお菓子できます?」

「見せて。あ、ピーナッツだね。まず、クッキーにしましょう。ルナちゃんも一緒に作りましょうね」

「あの、私は作るのは、その」

「作るよね」

「…はい」

 かわいい笑顔で迫られ仕方なく頷く。

「じゃあ、ワイン煮込みも行けるんじゃない?」

 リツさんが言い出す。

「無理ですって」

「確か、お母さんが作っていたって言ってなかった?」

「ほとんど手伝ってないですよ。下の妹が台所に入らないように、ストッパーしてましたから」

 そう、火を使うし、刃物もある台所。ジェシカは好奇心旺盛だったから危なかったから、外で遊んでいた。

「なら、一緒に作りましょう。何となく覚えているんでしょ。多分、向こうのワイン煮込みとレシピは行けると思うし。ね、作りましょうルナちゃん」

「………はい」

 逃げられない笑顔のリツさんに迫られ仕方なく頷く。

 えっと、どうやって作ってたっけ? 確か、前の日から仕込んでいたはず。玉ねぎを切って、ハーブと一緒に一晩おいて、焼いて、ワインを入れて煮る。だったはず。うん、自身ない。

 マスカットの部分を一口。甘い。甘いけど、カスタードとは違う甘さ。

「アルフレッド様はお酒はダメだったのでは?」

 新しい紅茶を注いでくれたローズさんが聞く。

「煮込みは大丈夫のようです」

「左様ですか」

 さて、最後にイチゴを回そう。

「ねぇルナちゃん。鍛治師ギルドってどんな感じだった?」

 マリ先輩が興味津々で聞いてくる。

「忙しいようです。アルフさんに頼りにしている所がありますし、副ギルドマスターはなんか勘違いしてるし」

「勘違い?」

「はあ、なんかアルフさんの宣伝してくるし、西通り東通りに物件があるとか、子供は三人くらい余裕持って養えるとか、あと」

 デートは楽しかったかい?

 は、言わないでおこう。

 アルフさん、迷惑だろうね。

「ちょっと勘違いした方でしたね。悪い人では、ないかと。あれ、皆さん?」

 一斉に顔を合わせる三人。

 ゴニョゴニョ。

 振り返る三人。何故か輝く表情の三人。ローズさんまで、目がキラキラ。

「何ですか?」

「ルナちゃん、お茶終わったら、お料理しましょうね」

 有無を言わせない笑顔のリツさん。いや、かわいいけどさ。

「さ、エプロン着けてね。クッキーは簡単だからね」

 嫌とは言わせない笑顔のマリ先輩。いや、かわいいけどさ。

 ローズさんに姿勢を向けると、悟りの表情。

 はい、受け入れます。

 最後に残したイチゴをぱくり。あ、甘い、すごく甘い、酸味がごくわずか、しかし、甘い。あ、飲み込んでしまった。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ