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トレント①

戦闘

流血表現あります、ご注意ください。

 私は城門を出て、北に歩く。一時間程では到着。

 魔の森は魔物が多いが、恵も多い。薬草や木の実、ハーブ、日常生活で使われる木材などが、普通より質が高い上に成長速度が高い。その脅威と恩恵。そのバランスを取りながらトウラの人は生きている。

 森に入ってもすぐに魔物と遭遇するわけではない。しばらくは浅いと呼ばれている比較的魔物と遭遇しない域が続く。

 私は初代をマジックバックにいれ、二代目を下げる。鞘の消音と結界効果か、自分の足音が小さくなる。

 進むにつれ、お馴染みのゴブリンにコボルトと遭遇、撃破する。一度衝撃斬波を使ってみたが、まだコントロールが悪いのか、ゴブリンの体が真っ二つに別れ、近くの木々を巻き込んだ。混戦になったら使えない。敵も味方もスパスパだ。

 だいぶ歩き回るが、トレントは見かけない。

 ガセだったかも。まあ、よくあることだね。

 どうしようか、もう少し歩き回るか?

 結構ゴブリンやコボルト狩ったけど、武器の性能が良すぎていまいち実感がない。

 途中水分補給し、マドレーヌを口に入れる。ちょっと大きな箱を渡されたが、中にびっしりマドレーヌが詰まってた。どれだけ食いしん坊だと思われているんだろう?

 パクパク、パクパク。

 プレーンに紅茶にブルーベリーにオレンジに、ドライフルーツ入り。一通り食べる。くぅ、美味しい。

 お腹が満たされる。

 よし、もう少し狩ろう。リツさんには2ヶ月分の家賃は払っているが、お金はないよりまし。

 さあ、出ておいでゴブリンや。

『ねえ様こわい、いや』スマイル全開。マリ先輩達いないから、いいよね。

 しかし、何故か出てこないゴブリン。狩りつくした分けないよね。

 だいぶ歩き回るがいない。ちょっとお腹減ってきた。リツさんのお弁当、この辺で食べるか。どこか適当な場所を探していると、私の気配感知と索敵が小さく反応する。ゴブリンじゃない。

 慎重に歩を進める。

 森の木々が少し開けた場所に、黒い木が立っていた。

 ブラックトレントだ。太い幹によく見たら人の顔、まだ若い顔だから若いトレントかな? 葉まで真っ黒だ。魔物の生態はよくわからない。

 行けるか? いや、そうじゃない、行こう。

【風魔法 身体強化 発動】

【火魔法 武器強化 発動】

 魔力を操る。やはり魔力感知を上げてて良かった。

 カラーシープのカーゴパンツのお陰で、動きに余裕ができた。リツさんに感謝だ。

 我が守護天使バートル様、御守りください。

 よし、行こう。

 私は火魔法で強化され刀身を赤くした二代目を握り直し、身を低くしてブラックトレントに向かって駆け出す。

 ブラックトレントもこちらの動きに気がついたのか、根を唸らせるようにして、鞭のように伸ばしてくる。

 捕まるものか。

 私は風魔法で強化され、一気にブラックトレントの目前に迫る。

「はッ」

  ザクッ

 二代目が、手応えと共にトレントを切り裂く。

 だが、一刀両断とはいかなかった。もう一撃加えようとしたが、横殴りに降られた枝に吹き飛ばされる。

 地面に叩きつけられ、息が詰まる。

 起き上がると、ブラックトレントが大きく自身を唸らせた。

 まずい。

 あわてて近くの木の後ろに駆け込むが、遅かった。ブラックトレントが硬い木の実を飛ばし、頭に肩に直撃し、あちこちかする。

 激痛に近いが、大丈夫、意識ある、まだ、やれる。あの赤髪エルフの攻撃に比べたらまだましだ。頭からだらだら血が流れてくるが、気にしていられない。

 身を隠した木の近くに、いくつも木の実が着弾。しかも枝で叩きつけるように隠れた木を攻撃してくる。衝撃が伝わり、細かい枝が体を傷つける。

 まだ、ましだ、あの時に比べたら。

 私は集中する。魔力を操り、タイミングを見計らう。

  ミシミシ

 隠れていた木が、嫌な音を立て始める。

 タイミングを見間違うな。

 メリッと、音がして、ブラックトレントの攻撃が止む。

 今だ。

 私は木から飛び出し、二代目を再び振るう。ざっくり切り裂いた筈だか、まだ足りない。

 枝の攻撃が来る、私は衝撃斬波を放って回避する。

 いかん、肩に一発食らってて、思ってた威力じゃない。

 しっかり切り飛ばせなかった枝で、私は再び地面に転がされる。

 もう少し、もう少しだ。

 私は再び起き上がる。ブラックトレントもかなりぐらぐらし始めている。

 もう一撃、もう一撃で倒せる。

 狂ったように枝を振り回すブラックトレント。あの隙間を縫って、もう一撃。

【風魔法 身体強化 発動】

【火魔法 武器強化 発動】

 魔力を流す。うねる根を蹴り飛ばし、私は三度目の接近。

  ザクッ

 まずい、浅い。

 振りかぶった黒い枝、視界に入る。

 直撃コースだ、避けられない。

 防御、間に合わない。

「アースランスッ」

  ガツンッ

 横から錐状の土が飛び出しブラックトレントの枝を吹き飛ばす。ああ、きっと戦闘音に気付いた冒険者か。そんなことを思った瞬間、大きな影が、ブラックトレントにぶち当たる。

 え? なんで、こんなところにいるの?

 激しく息を切らし、私の前に立ったのは、今日は鍛治師ギルドに顔を出すと言っていたアルフさんだった。

 疑問はあるが、それどころじゃない。私はカツを入れ立ち上がる。

「下がっとれッ」

 アルフさんが怒鳴る。その音量に思わず、後ずさる。

 構えた穂先は見ただけで分かるくらい魔力を纏っている。赤い、火魔法。

 大地を抉るように踏み込み、火を纏った槍を、私が切りつけた隙間に狂いなく捩じ込む。

 アルフさんの筋肉が唸りをあげる。

「はあああぁぁぁぁぁッ」

  メリメリメリメリッ

 梃子の要領で槍を動かす。ブラックトレントは枝を振るが、空を切り、大きく傾く。

 嘘でしょ、どんな腕力よ、いくら私が切りつけたと言っても、相手は魔物よ。普通に動かない木じゃないのよ。物量だって半端じゃないのよ、それが、傾いている。

 地鳴りを上げて、ブラックトレントが倒れる。

 アルフさんは息を整え、ブラックトレントを柄でつつき、動かないのを確認し、こちらに振り向いた。

「さて、なんで、こんな所でトレントなんぞ、相手にしとったんだ?」

 左の赤い目を細めて、いろいろぼろぼろな私を見やる。

 うわぁ、怒っている。

読んでいただきありがとうございます。

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