鍛治②
お迎え。
ちょっと短め。
「うふふ、ぴったり」
リツさんが優しく笑う。マリ先輩もどやって顔しないの。ローズさんは満足そう。
はあ。
昼食後に、わくわくと輝く期待したマリ先輩の目に負けて、私は青色ふんわりワンピースを着てみた。
似合うのか? 鏡ないけど、ワンピースに着られてる感が半端ない。
「さ、ルミナス様、こちらに」
促され、椅子に座るとローズさんによるヘアセット。ワンピースと同じ生地のリボンで飾られる。
いい感じと叫ぶマリ先輩とリツさん。ローズさんは納得の表情。
「今度はローズのデザインでいきましょう」
あのマリ先輩。
「確かにクラシックなデザインだけど、ラインをきれいにしたらばっちりよね」
あのリツさん。
「生地の紺色を使用しましょう」
あのローズさん。
「あの、盛り上がっている所申し訳ないのですが、脱いでいいですか?」
「「「は?」」」
揃った、三人揃ったよ。
いや、あのね。
「今からアルフさん迎えに行くんですよ。汚れたら申し訳ないから」
「何言っているの? それで迎えに行ってね」
リツさんの言葉に私は目を剥く。はいぃ? この格好で。
「いや、あのですね」
「ルナちゃんってわかるようにしたのよ」
マリ先輩まで。
「どんな汚れもこの浄化君があれば大丈夫です」
浄化君片手にローズさんまで。
「あの、ちょっと、恥ずかしいというか」
そう言うと、マリ先輩がよよよと泣く。
「せっかくルナちゃんに合うから作ったのに」
えーそんなぁ。
まあ、これ着ても誰も私なんか見ないか。でも、ちょっと恥ずかしいのはかわりないし、うーん。
「明日、コロッケ食べたいな」
ぼそっと呟く。
「いいわよ、好きなだけ食べてね」
マリ先輩が笑顔。嘘泣きだとわかってたよ。しかし、よし、言質取ったぞ。
いつもの剣を下げたベルトをして、と。
ガシッ
「なんですかリツさん?」
「まさか、それ着けていく気?」
リツさんがすごい笑顔で迫ってくる。
「外しなさい」
「はあ? なんで?」
「いいから、外しなさい」
「でも、ないと不安というか」
「はい、これ着けて」
渡されたのは、太ももにつけるタイプのベルト。ナリミヤ氏のナイフが下がっている。こんなのも作ったの?
鬼気迫るリツさんに負け、太ももにベルト装着。スカートに隠れてわからない。
「ポテトサラダ付けてくださいね」
「任せて」
どんと胸をたたくリツさん。く、胸のボリュームの差が。
三人に見送られ、私は屋敷を出た。
「何とか着てくれたわね」
見送ったルナの姿が見えなくなり、ほっと息をつくリツ。
「作戦成功」
うっふっふと笑うマリ。
「しかし、良かったのでしょうか?」
ローズは心配そうに言う。
「あんなに着飾ったら、絡まれないでしょうか?」
「確かに、その心配があった」
マリは完全に忘れていたようだ。
「大丈夫でしょう。人通りもあるし、ルナちゃん自身強いし」
リツは心配していない。
「とにかく、アルフさんにいい印象を与えないと」
ぐっと拳を握るリツ。
昨日、ルナが見せた行動は、三人の保護欲を掻き立てた。普段、未成年とは思えないような落ち着きのルナが、完全に年相応の少女の顔をした。
戸惑い、困惑、恥じらい、いろいろ混じった表情に、三人はきゅんきゅん。
恐らくアルフに好意を抱いているのでは、と、完全にお節介を焼くことになり。まずはかわいい服からと、昨日の夜に錬金術を駆使してワンピースを制作。思ったよりいいできで、三人の制作意欲を刺激しまくった。しかも、ワンピースはルナにぴったりだったし、何より似合っていた。
ちょっと角度を変えたら紺色に見える髪に、青い目、無駄のない体つきは華奢。ルナ自身気づいていないが、美少女と言っても過言ではない容姿をしている。いつも、冒険者の格好に、ぼさっとした髪で隠されているが、ちゃんとした服を着て髪を整えただけで、変わりようが激しい。それで更に三人の保護欲に火がついた。
私達がしっかりしないと、ルナは嫁にいけない。
完全にお節介だ。
しかし、三人は変な使命感に燃えていた。
「ルナちゃん自身は似合ってないと思っているようだけど、いろいろ作ってみましょう」
マリがデザイン画をチェック。
「そうね、あと、料理も出来るようになれば、ポイント高くなるわ。ルナちゃん、料理に対して苦手意識あるから、まず簡単なものからね」
リツは頭の中でもレシピをチェック。
「大丈夫ですかね? アルフさんがいい方ならいいのですが」
「「それなら大丈夫よ」」
ローズの杞憂に、マリとリツは声を揃えて答える。
何故か、マリとリツの中でアルフは好印象だ。ローズ自身も、絡まれた時に助けてもらった経緯から、好印象を持っていたが、二人ほどの信頼はしていなかった。
(ルミナス様が傷つくことがないようにしないと)
ローズはそれだけが心配だった。
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