思わぬ①
ミーナから無事帰って来て、比較的に穏やかに過ごす。毎日の戦闘訓練は変わらず継続。
寒さが身に染みるようになっている。
年越しの屋台に、また参加が決定している。マルコフさんとフレナさん達も手伝ってくれるって。
今年も後少しだ。それから結局年明けてから、フィーラ・クライエに挑むことになった。地竜の咆哮に挑むには、どうしてもレベル不足が解消していない。ついでにコーヒーやカカオのゲットもある。地下の畑は、残念金髪美形が渡してくれた転移門あるから、毎日帰れるからね。
今年は何を出すのかな?
なにやら台所で、リツさんとマリ先輩が作業している。ショウがぴったりマリ先輩に張り付いてる。くっ、私も張り付きたいっ。
「いい感じね」
「そうね」
リツさんがなにやらギザギザの型に入れて焼いていたのを取り出す。うーん、バターの香りが。
「ワッフルよ。バターとブラウンメープルよ。さ、味見してみて」
はいはいっ。
ブラウンメープルは、ホワイトメープルより安価だけど、手に入りやすい。販売価格をギリギリまで下げたいって。
まずはバター味。ぱくっ。バターの香りが鼻をくすぐる。生地ももちっとしている。
「どうかしら?」
リツさんがちびっこ達に、バター味を小さくして渡している。
「三個はいけます」
きりっ
「ふふ、いい感じね」
リツさんが綺麗に笑う。アーサーがブラウンメープル味を食べながら、うっとりと見ている。
「生地はいいわね。後は焼き場をどうにかしないと」
マリ先輩が、コンロの上にある型を示す。確かに、せいぜい2つ焼くのが精一杯。錬金術チームが会議に入る。私はブラウンメープル味をぱくっ。あ、ホワイトメープルと違う、甘さの中になにやら苦味がある感じだけど。ホワイトメープルはすっきりした甘さだったなあ。リツさん、ホワイトメープルのワッフル焼いてくれないかなあ。マリ先輩曰く、カフェメニューでは、ワッフルにクリームや果物を添えて、苦味をフォローするって。そっちも気になる。そわそわ。ショウもそわそわ。
屋台にはワッフルと回転饅頭を出すって。さ、お手伝いしよ。
数日後、回転饅頭の焼く台を改良し、ワッフルバージョンができる。すぐに特許を取りに走ってた。試運転も問題なかったし、せっかくだから戦闘訓練に来ていたマルコフさんとフレナさん達もお茶に、リツさんがお誘いする。
「すまないリツ君、なんの手土産もないのに」
「いつも頂いてばっかりね」
「お気になさらないでください。ミカエル達の戦闘訓練ではお世話になっていますから」
リツさんが食堂にご案内すると、そそくさと着いてきたよ。
「こちらはワッフルです。バター味とブラウンメープル味ですね」
さ、とお皿に並ぶ2枚のワッフル。紅茶やコーヒーをローズさんとリーフが手分けして配膳する。私? 食べる係よ。
「まずは味見してください。それからクリームやジェラートや果物、ソースを添えますから」
あ、豪華になるっ。でも私は味見はすでに済んでるっ。
「ルナちゃんは何がいい?」
マリ先輩が聞いてくれる。やった。
「えっと、バター味のワッフルに、ミルクジェラートに、マンゴーとブルーベリーのソースがいいです」
サーシャが胸焼けするって呟くが無視をした。
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