大地の皿⑤
「頂いていいのかいっ?」
「はい。ナリミヤ先輩から頂いたワープストーンや、蜘蛛達の助けがなかったら、こんなに香辛料を確保出来なかったですから」
大地の皿から出た次の日の夜。残念金髪美形が蜘蛛達を迎えにやって来た。ワープでね。もう、驚きません。
残念金髪美形はそれはもう嬉しそうにスープカレーを食べてる。
「ばくばくっ、くっ、美味しいっ。気軽に食べに来たいけど流石に無理だしっ」
あんた、忙しくないの? あちこちにとんでもないコネがあるんじゃないの?
「あ、そうだ、これあげるよ。ワープストーン、10階に2回行けるよ」
また気軽に渡すな。
「でも、頂いてばっかりだし」
と、リツさん。
「いいよ。僕じゃ、材料手に入れても、どうにも出来ないから。また、新しいのができなら食べさせてね。あ、このスープカレーも絶品だったよ。出来たら次に会う時までにこの鍋に…………」
おずおずと鍋を出す残念金髪美形。
「ふふ、分かりました。次はいつ?」
「えーっとね。来年かな。実はね」
と、内緒で内緒じゃない話が始まる。
「ワイバッハ覚えてる?」
ああ、確か、北と南で分裂。北は第三王子、南は第一王女が納めたって。そもそもあれは第一王女が、考えの合わない第一王子を毒殺して、王様とお妃様を薬漬けにしたってやつね。
「またキナ臭くなってきてさ」
えー。
「南を納めている王女が、王様とお妃様の奪還と耳障りのいい言葉を並べているんだ」
いやいや、実の兄を毒殺して、親まで薬物中毒にして。何をほざいているんだ?
「考え方の違いだね。第一王子は、今からはある程度周辺諸国との国交が必要と考えて推し進めていたんだ。もともと鎖国状態だったからね。何か有事があった際に、困るのは国民でしょ? 少しでもその憂いをなくしたいし、国内の経済発展とかにも繋がるからって」
うーん、私は間違ってないように思えるけど。
「それに大反対したのが第一王女ってわけ。鎖国主義の塊である彼女は、他所からの介入は、自分達が搾取され、奪われるだけって。第一王子は、そうならないように、外交官を育てていたのに、全員殺しちゃったんだ」
うわっ、なにそれっ。
「しかも、第一王子の考えに賛同していた王様とお妃様は洗脳されてるって監禁。それで内戦、第一王子が毒殺」
はぁ、とため息をつく残念金髪美形。
「第三王子が彼の意思を引き継いでくれたからいいけど、あのままだったら泥沼化してたよ」
現在薬物中毒となっていた王様とお妃様は、残念金髪美形の治療を受けて、静かな王城の離れにある離宮で穏やかに過ごしているそうだ。王様は定期的に国政に参加、主にアドバイザーとしている。お妃様は表向き毒の影響で療養しているとされているが、第一王子の遺児達と第三王子の子供達の教育に熱心に取り組んでいる。自分の生んだ子供達の争いは自分にあるからと、二度と表舞台にたつことはないって。
「で、僕第一王子とは仲良しだったから、彼の遺児達の為にも、今、北ワイバックを守っている第三王子達の為にも出来ることしようと思ってさ。しばらくは連絡は控えると思う。地下の畑はお任せになるけどいいかな?」
「はい、勿論」
「じゃあ、僕これで失礼するね」
残念金髪美形は口元をふきふきして、蜘蛛達を連れて帰って行った。
「アルフさん」
「ん? なんだルナ」
「これって、私達聞いてもいい話でしたかね?」
「あはは、どうだろうな」
アルフさん、乾いた笑みを浮かべた。
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