大地の皿③
「まあまあ、皆、ありがとうっ」
マリ先輩が興奮している。
同行した蜘蛛達がせっせと香辛料を探してきて、マリ先輩に献上している。
「はい、ご褒美よ」
アップルパイを渡してる。
「新作のレーズンとシナモン入りよ」
くうっ、私だって、私だってっ。
ショウがデカイ鹿を捕まえて、マリ先輩にアップルパイもらってるし。
何か、何かをないかな? 何かいないかな? ハムどもでもいいっ。
「ルナ、落ち着け」
アルフさんが魔鉄の槍を拭きながら諭すように言ってくる。
只今、大地の皿、15階。
蜘蛛達はサイズはあのグレイキルスパイダーに比べて小さいけど、優秀で、斥候として役立ち、戦闘になれば援護に徹している。
頼りになる。
この階にはセーフティゾーンがないため、結界効果のあるテントが大活躍だ。毎日シャワー浴びれるから嬉しい。
「さ、お疲れ様、お茶が入りましたよ」
おやつ時間になり、リツさんが笑顔で呼んでくれる。
は、行かなくてはっ。
テント内は広々として、まずは居間みたいな感じね。中央に足の低いローテーブルがあり、絨毯が敷かれている。椅子とか置いたら場所を取るので、絨毯に直に座る。
ローズさん、アーサー、リーフがお茶を配ってくれる。
ワクワク、なんだか、いつもの香りとは違う。
「チャイよ」
と、リツさんが説明してくれる。スパイスを使った紅茶みたいね。
「苦手な方は、いつもの紅茶をローズさんが入れてくれますよ」
はーい、と返事あり。
お茶受けは、マダル芋のパウンドケーキだ。
いただきます、きりっ
チャイを一口、あ、シナモンの薫りが。うん、美味しいよ。マダル芋は安定の優しい甘さ、パクパク。
「今日中にはボス部屋に到着するだろうが、リツ君どうする?」
マルコフさんは紅茶を傾けながら、確認している。
「16階から上級者向けでしたね」
「そうだな。挑んだ事はないが、かなり悪路だと聞いたぞ」
「問題はありません。ショウの馬車がありますから」
パクパク。
「ナリミヤ先輩から、地図の写しももらっているので、ボス部屋までまっすぐです」
普通は歩いて進むけど、うちにはショウがいるからね。
マルコフさん、フレナさん、リツさんがリーダー会議を行う。
今日はボス部屋まで移動して、状況に応じて挑むか判断。明日朝に再度ボス部屋に挑んでから16階に移動する事に。
おやつが終わり、片付けて移動する。
ボス部屋までショウの馬車でって思ったけど、ミカエル達のレベルアップが必要だから、徒歩で進む。
鹿系、蛇系の魔物が多い。私達が後は鳥系もいるけど、片っ端からショウと、サーシャ、リーフが弓で仕留めている。鹿や蛇には私達が援護してミカエル達が対応して、無事に倒している。
「マスター、タオセタ」
「マスター、オノガアタッタ」
「マスター、タテデフセゲタ」
「マスター、ツヅケテマホウガウテタ」
「マスター、ヤヲタクサンウテタ」
「みんな、凄いわっ」
うーん、ボキャブラリーが増えてる。
動きもずいぶんいいし。
ドロップされたお肉や革、牙、角を回収する。その間、蜘蛛達は香辛料やハーブを取ってきてる。ノゾミもなにやら探している。なんだろ? 黒い塊。
「リツちゃんっ、これもしかしてっ」
「トリュフよーっ」
リツさんの形相がっ。
結局、その日、ボス部屋には行かず、トリュフ探しに没頭することになる。
「リツさん、これなんですか?」
「茸の一種よ。薫りがいいでしょう?」
くんくん。
「なんだか、芳醇な薫りが」
「そうよ、薫りを楽しむだったかしら? 私もそんなに食べたことないけど、いろいろ試して見ましょう」
総出で探したら、次の日1日かけて箱一杯になった。
「これ、高いの?」
バーンが興味津々だ。
「これだけあれば、ちょっとした家が買えますよ」
「「「「「ぶっ」」」」」
噴き出している。
「こ、これ、そんなにするのっ」
バーンが手にしていたトリュフを慌て戻している。
「聞いたことあるが、高級品だぞ」
アルフさん知ってたんだ。
「アルフ、先に言ってよっ」
方をすくめるアルフさん。
「皆さん、たくさんありがとうございます。今日の夕飯でこれ使いますねー」
リツさんがにっこり。
わ、私、お手伝いします。
夕御飯は残っていたブラッディグリズリーのステーキに、トリュフソースがけ。スープとサラダはアーサーの畑の野菜を使っている。それからマリ先輩のパン付き。
しっかりディナーだよ。
だけど、やはり高級品トリュフ、薫りが素晴らしい。ぺろりと食べてしまった。ソースはパンに染み込ませて、一滴も残しません。
「このソース、絶品だな」
「そうね。止まらないわ」
好評だ。
わいわい食べながら、夜は更けていった。
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