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決別②

 あれから数日経ったが、何も変わらず日々は過ぎていく。

 ナリミヤ氏からも連絡があり、一応女達は反省しているから、全員戻ってきた。

 だが、きちんといろんな配慮してから。現在、リツさんは常に小さなピアスをしている。ナリミヤ氏作成の警報器だ。後、屋敷には、大きな警報がなる魔道具も設置した。

 リツさんの誕生日も無事過ぎて、更に数日ごマルコフさん達はミーナ、フレナさん達はミュートへの馬車護衛依頼があり、先日出発。直ぐに帰って来ると言っていた。

 毎日の戦闘訓練に、たまに魔の森に行き、穏やかに日々が過ぎていく。

 私は新たに建てられた通称コーヒー小屋で、作業していた。

 最近、コーヒーの売れ行きがいい。いつもは不定期で月に一回か二回、鍛冶師ギルド、商人ギルド、職人ギルド、冒険者ギルドのどれかで販売しているが、徐々に人気が出て販売回数を増やせないか打診があった。特に商人ギルドからは、常時販売できないか、と言われている。でも、その常時販売に問題が。販売ブースは処理されたコーヒーの計り売りと、その場で淹れるのをしているが、商人ギルドはその場で淹れるのを毎日できないかといってきた。販売個数は少なくてもいいからと。

 結局、自分で淹れるより、その場で淹れたてが一番と。めんどくさいだけじゃない?

 リツさん、マリ先輩曰く、入れ方に問題があるのでは、と。

 なので、ローズさんのコーヒー教室が開かれることに。

「よし、こんなものかしら」

 大量に処理されたコーヒー豆を、リツさんがアイテムボックスに入れる。

 数日間集中してコーヒー豆の処理をしたので、おそらく一年間はあるようだ。ナリミヤ氏の焙煎の魔道具と錬金術で処理したからできたことだ。

 明日は鍛冶師ギルドでの販売だ。


 私はお留守番だ。

 錬金術チームと、アーサー、リーフ、ジェイドさんが販売に向かう。ジェイドさん、不器用さんなのに、何故かコーヒーを淹れるのが上手。見送って、留守番組は戦闘訓練だ。

 私とサーシャの模擬戦を、膝を抱えて見ているミカエル達。まだ、慣れない。

 戦闘訓練の後、畑の整備や、地下の畑のチェック。蜘蛛達がせっせと働いている。

 思ったより早く帰って来たが、様子がなんだかおかしい。一緒にアルフさんまで帰って来た。いつもならもう少し遅いのに。

「どうしたアーサー、真っ青だぞ」

 サーシャが心配そうにきく。確かにアーサーの顔色が悪い。

「何かありました?」

 私はなんとなく分かっていたが、アルフさんに聞く。

「来たんだよ、アーサーの父親がな」

 やっぱり。

「まあ、儂が追い払う前に、鍛冶師ギルドの連中に叩き出されたがな。アーサーはリツの奴隷なのは周知の事実だ。そのリツには付与の件では、ギルドは恩があるからな。『丁重に』お帰りいただいだぞ」

 槌を振り回す義理堅いドワーフ達が目に浮かぶ。

 アーサーがリーフに連れられて、屋敷に入っていく。私達も続く。一旦居間に集合。

「そもそもお金が欲しい理由はなんなんです? やはりあの兄の為にですか?」

 よく、顔は覚えていない、黒髪のアーサーの兄。

 どうやら、叩き出されたアーサーの父親を、アルフさんが捕まえ、殺気駄々漏れで聞き出したそうだ。

「そうさ、アーサーの兄の為に金を用立てろ、とな。アーサーがあちこちの騎士団からスカウト来ていることも関係あるしな」

「え? 何で?」

「アーサーがスカウトされる理由は支援魔法だ。それに、戦い、身を守るだけの戦闘スキルもある」

 まあ、そうだね。

「それをだしに、スカウトが来た騎士団に兄を売り込んだが、話にもならなかった。アーサーの兄は、あまり成績はよくないからな、本当にあのアーサーの兄かと、疑われたりしたそうだ」

「似てないですもんね」

「それが気に食わんかったんだろうな。アーサーの父親は、今まで兄の方がかわいいようでな、奴隷として売ったアーサーに対して悪かったなんて気持ちがない」

 殴りにいこうかな。

「だから無神経にいってきたんだよ。兄の為に、アーサーが与えてもらった物を、全部渡せ、とな。兄がもう少しで騎士学校卒業するか、武装一式を揃える為に、と」

「ぶん殴りに行きましょう」

「ええ、そのつもりよ」

 私が反射的に言った言葉に、リツさんが答えてくれる。そこには、真っ黒な笑みを浮かべるリツさん。

「あの人は、アーサー君の大切な思い出までも踏みにじったわ」

 話を聞くと、アーサーの父親は、母親、つまりアイリーンさんとうまくいってなかったそうだ。アイリーンさんは優れた魔法使いなのに、自分は全くその才能はなかった。アイリーンさんに劣等感を抱き続けて、アイリーンさんにそっくりなアーサーをそれだけで毛嫌いした。それから長子優遇していた事を咎められたことにも癪にさわった。自分の行いじゃないか、と思うけど。

 だから、アイリーンさんが病でいなくなって精々した、後は目障りなアーサーを自分そっくりの大事な長男の為に使って何が悪いと。

 話を聞いていて、イライラしてきた。

「だから、明日行くわよメーデンに。一発ガツンと、しないとね。ガツンをするのはアーサー君よ。そうしないと、アーサー君も心残りだしね」

 そうだよね、アーサーがぶん殴りたいはず。

 アルフさんも来週まで、休みを貰ったと。

「実際にアーサーにちょっかいかけてきたんだ。アーサーの両親には、相応の罰が下るが、その前に思い知らさんとな、自分達が何をしたかを」

「そうですね」

 本来、主人がある奴隷に手はだせない。手を出せば罪に問われる。これはあまり前の、周知の事実だ。そのアーサーの父親は勘違いしているんだろう。アーサーの所有権はまだ、自分達にあると。だが、借金奴隷として売った時点で、アーサーとの関係は完全に終わっているんだ。

「まず、メーデンに移動して、白熊町長さんにお願いするわよ」

 はい、リツさん。

 こうして、メーデン行きが決まった。

読んでいただきありがとうございます

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