表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
364/386

三度目の決闘④

「うわぁぁぁぁん、ねえ様ぁぁ」

 ジェシカが泣く、堪えます。

 さっき口に溜まった血を吐き出したらこれだ、見ない処ですべきだった。

 全員治療班のヒールを受ける。真っ青な顔で飛んできたマリ先輩のミドルヒールで、ほぼ完治したんだけどね。だけど、ジェシカが泣く、私を心配したんだろうけど。堪えます。

 フレナさんは現在治療を受けて座っている。マルコフさんも落ち着いた。

「情けないわ、あれしきの事で」

 と。サリナが心配してますよ。

 実はアルフさんは脳震盪を起こしてて、安静中。

 あれだけ、殴られたらね。お父様に必死に謝ってた、私を守りきれなかったと。

 だけどお父様は、アルフさんを責める道理はないと。『決闘』の舞台に立てば、ただの戦う人間だ。身を守るなかった、私に非があると。

 まあ、そうだね、ザ正論。

「ジェシカ、私は大丈夫だから、ね」

「ぐずぐずっ」

「まったくお前は…………」

「申し訳ありません、お父様」

「脇の締め方が甘いわよ」

「はい、お母様」

「姉様、お願いだから無理しないで」

「ごめんエリック」

 ソフィア嬢まで心配そうな顔だ。

「ルミナス様、ポーションをお持ちしましょうか?」

「ありがとうございますソフィア様、もう、大丈夫ですから」

 なんて話していると、首もとが急に寂しい感じがした。

 触ると、いつもの感触がない。

 あれ、あれ?

「姉様、どうしたの?」

「どうしましたルミナス様?」

「ない、ない、ない」

「ねえ様どうしたの?」

 血の気が引く。

「何がないのルナちゃん?」

 マリ先輩が優しく聞いてくる。

「ないっ、ペンダントがないっ」

 私はベッドを飛び降りる。

 アルフさんがくれた、成人のお祝いのペンダント。

 あれがない。

 きっと、吹き飛ばされた時だ。

 なら、舞台のどこかにあるはず。

 探さないと。

「落ち着いてルナちゃん、今、閉会の挨拶中よ」

 マリ先輩が私の肩をそっと抱く。

「でも、でも…………」

 かなり混乱していた私に、回復したアルフさんがそっと押し留める。

「落ち着けルナ」

「でも、挨拶の後、舞台は一般公開されて………」

 誰かが拾って届けてくれる? そんなことはない。ミスリルのペンダントだ。出てくるわけない。

 大事に、大事にしてたのに。

 アルフさんからもらった、大事な、大事なペンダントなのに。

 私の目に知らずに涙浮かぶ。

「落ち着けルナ、心配するな、また儂が作ろう」

「あれがっ、あれがいいんですっ、あれがっ」

 私はひどいわがままを言う。

 アルフさんが困った顔。

「落ち着きなさいルミナス。おば様に頼んでおくから、アルフ君を困らせてはならないよ」

 お父様が医務室を出ていく。

 私は脱力する。絶対に出てこない。

 ポロポロと涙が溢れる。

 アルフさんがひたすらに拭ってくれる。

「ねえ様、私の髪止め上げるから泣かないで」

 ジェシカまで心配して、私の手を握る。

 そんな中、ソフィア嬢のお迎えがあり、エリックが付き添って行った。ソフィア嬢が心配そうに振り返った。


「少し、安心しました」

 ソフィアがそう呟く。

「何に?」

 迎えの馬車に向かう途中。

「ルミナス様は、私と全然違う人だって思っていました。本の中に出てくる誇り高き女騎士のようだと。でも、私と何にも変わらない」

 ソフィアは笑う。

「大切な方から頂いたものをあんな風に大切にしている。失くしたと思って、涙を流す。気持ちは分かります。私だってエリックからもらった栞を失くしたら申し訳ないし、悲しいもの」

「そう思ってくれると嬉しいよ。姉様を理解してくれて。ありがとうソフィア」

「ふふ、中型のグリズリーと戦えるなんて仰っていた時は、驚きました」

「流石に大型は無理だったみたいだね」

 ソフィアは笑う。だが、すぐに険しい顔に。

「ペンダント、出てくるかしら?」

「無理だろうね。アルフ義兄様の腕は、鍛冶師としてかなりのものだから、ペンダントも高品質のはず。出てくるとは思えないよ」

「そう、今から舞台で探そうかしら?」

「ありがとう、気持ちだけで十分だよ。きっとアルフ義兄様がフォローしてくれるから、さ、迎えの馬車だよ」

 ソフィアをエスコートして、フワラン男爵一行と合流。

「エリック様、ルミナス様のお怪我は?」

 ソフィアの母親が心配そうに聞いてくる。

「傷はきれいに治りました」

 問題は別の所だ。

「ソフィア」

「はい」

「今日、夜会がある。僕がエスコートしてもいいかな?」

「はい、もちろん」

 頬を赤く染めたソフィアは、嬉しそうに頷いた。


 お父様とエリックが戻って来て、やっと帰宅が許される。

 落ち込んでいる私をお母様が、優しく叱責。なんとか立ち上がる。

 私はアルフさんに手を引かれて、迎えの馬車に乗るが、頭はペンダントの事で一杯だった。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ