三度目の決闘③
遅くなりました
【風魔法 身体強化 発動】
【風魔法 身体強化 発動】
【火魔法 身体強化 発動】
私達は展開する。
バーミリアン殿下はまっすぐディーダ殿下に向かう。ちら、と見えた横顔、爛々としていた。
マルコフさんとフレナさんにかわいい丸耳と、男女の猫の獣人が向かう。アルフさんと私には、例のデカイ熊の獣人。手袋しているが、なんと素手。
だが、ジェイドさんがわざわざ要注意と警告してきたし、バーミリアン殿下まで注意してきたから、相当の手練れなんだろう。
とにかく、負けたくない。
アルフさんに続く。
木製の盾が魔力を纏う。
「シールドバッシュッ」
ごうんッ
派手な音を立てて、熊の獣人、ビューダの拳がアルフさんの盾にヒビを入れる。魔力をかなり纏わせているのに。アルフさんが後に僅かに傾げるが、なんとか踏ん張る。あのアルフさんが。
ごうんッ ごうんッ ごうんッ
立て続けて拳が入る。
私は素早く回り込み、木刀を足に叩きつける。硬い、石でも叩いているようだ。何度も叩きつけるが、向かうはまったく気にせず、ひたすらにアルフさんに攻撃してる。
盾が、木製の盾が持たない。
バーミリアン殿下とディーダ殿下は激しい剣劇を、繰り広げている。
マルコフさんはかわいい丸耳を相手に、2人の獣人を相手にしているフレナさんのフォローをする。
『まさに『決闘』、白熱した展開となってきましたッ』
私は膝裏に一撃入れる。
ギロリ、と血走った目が私を見た瞬間、私の足くらいの太さの腕が、凪払う。咄嗟に後に飛び、盾で防いだが、衝撃で私は後に吹き飛ばされる。必死に体勢を保とうとするが、いつの間にか目の前に、巨体のビューダが。
アルフさんが模擬の槍を繰り出し、肘を鋭く突くが、まったく動じず、ビューダの拳が私を捉える。
【無属性 身体強化 発動】
反射的に発動したが、避けられず、盾の一部を破損し、拳が顔を捉えた。
盾とアルフさんの槍で勢いを削ったが、重量級の拳がまともに入る。
意識が飛び。体が飛ぶ。
歓声が、悲鳴に変わる。
背中から叩きつけられて、息が詰まる。
頭がくらくらする。
音が、耳の奥で響く。
立て。
立て。
立て。
戦場なら、膝をつけば、死だ。
こんなもんじゃない。
あの時に、比べたらッ。
私は起き上がり、地面を蹴る。
『キャーッ、ルミナス嬢ーッ、頑張ってーッ』
盾は破損し投げ捨てる、木刀を拾って、再び同じ足に叩きつける。叩きつけて、離脱、叩きつけ、離脱。繰り返す。
アルフさんも盾が割れて、槍で打ち据えるが、槍が悲鳴を上げる。私の木刀もとうとう割れる。
一体どんな体してんのよッ。
武器を失った私は役に立てない、一旦後退する。
アルフさんの槍も割れて、肉弾戦に突入する。
アダマンタイトの全身鎧が、鋭く動く。激しい殴り会いで、向こうの拳が血を噴く。
『キャーッ、巨体2人の殴り合いッ、2人とも頑張ってーッ』
流石にアダマンタイトには勝てないのだろが、まったく勢いが衰えずに、アルフさんに殴りかかる。向こうの体術スキルが高いのだろう、アルフさんが一発入れるのに対して、向こうが二発入れる。これが装備無しなら、もう終わっている。
マルコフさんはかわいい丸耳をなんとか制し、フレナさんと猫系男女を相手にしている。だが、フレナさんの旗色がかなり悪い。
『お姉さまーッ、しっかりーッ』
アルフさんの腹に一発入り、体勢が僅かに崩れる。そこに立て続けに拳が入る。
私は投げ捨てれた、槍の残骸を拾うとすると、その前に、何がが飛んできた。
バーミリアン殿下の木刀だ。
バーミリアン殿下は盾だけで、ディーダ殿下とやりあってる。
私はためらわず、木刀を持ち、一気に距離を詰めて、木刀を叩きつける。間髪いれず、アルフさんの拳が顔面直撃。
「下がれッ」
何発も拳を叩き込み、アルフさんは体勢を低くする。
脇を締め、左腕を前に。
『これぞ王道ッ』
バーミリアン殿下も同じ体勢に入る。
「「シールドバッシュッ」」
渾身のシールドバッシュが炸裂。
ディーダ殿下は見事に吹き飛ぶ。
流石バーミリアン殿下、容赦しない。
そしてビューダも大きく後退。だが、踏みとどまり、拳を握る。
本当にこいつどんな体してんのよ。
だが、やはりそれまでだったのか、ビューダの目が上転し、顔面から地面に沈む。
アルフさんはぐらつくが、なんとか踏みとどまる。
ちょうどマルコフさんが、猫系獣人2人を制した。フレナさんは倒れ伏している。
審判の騎士が、私達の方に手を上げる。
『激闘を制したのはバーミリアン殿下率いる面々だーッ、治療班急いでーッ』
実況が叫ぶ。
舞台袖から、治療班が飛び出してくる。
マルコフさんも肩で息をしている。まともに背筋を伸ばしているのはバーミリアン殿下のみ。
私は、何故か視界が歪む。
あ、いかん。
崩れ落ちる瞬間、アルフさんが支えてくれる。
兜をしまったアルフさんの顔に大粒の汗が浮かぶ。
いつも優しいオッドアイが、焦った色に染まってる。
あ、タオル、どこだっけ?
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