三度目の決闘②
「はい。はい。そうです」
リツさんが携帯電話でジェイドさんと連絡中。
あれかはバタバタと控え室に集合した。
ミーシャは不安そうだったが、おばあ様とアーシャに付き添われて別の控え室に。
たぶんディーダ殿下の狙いはミーシャじゃなんじゃないか? ジェイドさんと瓜二つのサーシャに会いたいだけじゃないだろうか? なんでもディーダ殿下はジェイドさんを重宝していたそうだし、リザードごときで遅れは取らないと思っているかも。
「はい、分かりました」
リツさんの連絡終了。
「ジェイドさんの話だと、おそらくサーシャ君狙いじゃないかって」
やっぱり。
「でも、単に『決闘』を楽しんでいる可能性もあるそうよ。こういうの好きみたい」
噂の脳筋だしね。
「どちらにしてもミーシャちゃんはお断りできるわ。身分は平民だし、向かうは花嫁候補って言っただけだからね。で、問題は誰が出るかね。5対5だったわね」
「儂は決定だな。ミーシャの保証人だからな」
アルフさんは決定と。
「後、ディーダ殿下も猛者だけど、もう一人注意人物に熊の獣人がいるって。ディーダ殿下に次ぐ猛者らしいわ。ジェイドさん、手も足も出ないって」
何それ?
「ディーダ殿下の懐刀というか、忠臣だから、必ず同行しているはずだし、『決闘』に出るはずだって」
うーん、メンバーどうする?
皆で頭を寄せ集める。
今回はクレイハートからは出場はやめた方がいいだろうと言うことになる。家みたいに貧乏で権力の欠片もない家ならともかく、クレイハートはライドエルを代表する伯爵家だからね。後々に問題になるかもしれないし。
アーサーも奴隷のために、断念、残念。
マルコフさんが出てくれることに。
次に私、イレイサー、フレナさんとなる。
相手がディーダ殿下とかじゃなければ、ショウやジェイドさんやサーシャがいいんだけどね。仕方ない、出て貰えるだけで有難い。
バタバタとメンバーが着替えて、いざ、舞台袖に向かうと、足が止まった。
『ディーダ殿下の心意気で、『決闘』の第2幕が上がりますッ。可憐な美少女ミーシャちゃんを、甥っ子さんの花嫁候補にとッ。ディーダ殿下自ら出場ですッ、キャーッ、ディーダ殿下ーッ』
相変わらずな実況。
まあ、盛り上がってますな。
『そして、ディーダ殿下と共に並ぶは、バインヘルツの騎士達ッ。スレンダー美女アオモナッ、スピードスターなフクザッ、パワー満載のタンクカナートッ、最後に巨体だッ、巨体騎士ビューダッ。まさに圧巻ですッ』
向こうの紹介が終わる。
巨体か、例の熊の獣人だな。
案内人が、私達に合図。
『そして、対するはミーシャちゃんの保証人、昨年の『決闘』で見事な戦いで、美しいルミナス様と婚約した鍛冶師アルフレッドッ。なんと、冒険者と平行しているそうですッ。今年も自前の鎧で参戦だッ』
「儂からか」
アルフさんが模擬は槍と盾を持ち舞台に上がる。
『続いて、去年の剣さばきは圧巻でしたッ、強面冒険者マルコフッ。去年に続いて参戦だッ』
マルコフさんが模擬の剣を持ち舞台に。
『クリスタムのBランク冒険者、美しき剣士フレナッ。ミーシャちゃんとお友達だそうですッ、キャーッお姉さまーッ』
「やめてよ」
フレナさんが実況に突っ込み。
ショートソードサイズの木刀を持ち舞台に。
『本日2回目の登場ッ、誇り高きコードウェルの娘ッ、ルミナス・コードウェルッ。はい、皆さんご存知ルミナス嬢ですッ』
やめてよ、本当に。
私は木刀と盾を持ち、舞台に上がる。
大歓声の中、私は並ぶ。
向こうはディーダ殿下、猫系の獣人の女性騎士と男性騎士。こちらは木刀。大型の盾を持つのは、丸みのある耳がかわらいい大柄の男性騎士、熊系かな?
で、ジェイドさんが注意していたのはあれか。アルフさんやマルコフさんより頭一つ大柄な、熊の獣人。うわあ、子供が泣き出すような顔だよ。
『そして、最後に登場ッ』
私達はさっと道を開けるように散開し、胸に手を当てる。
『なんとなんと、この方が参戦ッ。お祭りですからと盛り上げ役を買ってくださりましたッ。そして、一度ディーダ殿下と手合わせしたかったそうです-ッ』
興奮する実況。
『西の三勇にして、マダルバカラの第一王子ッ、最強の精霊剣士ッ、バーミリアン殿下だ-ッ、キャーッ、バーミリアン様-ッ』
大歓声が、どよめきになる。
ゆっくりと姿を現したのは、言わずと知れたバーミリアン殿下だ。盾と木刀。因みに精霊はマリ先輩のお膝でクッキー頬張っている。
出ていいのかな? と思ったけど、当人はお祭りだし、と。
「次にレベル200になるディーダ殿下との手合わせなんぞ、普通は望めないが、これは祭りだ」
なんて言ってたけど、単に戦いだけじゃない? バーミリアン殿下もちょっと戦闘狂な感じがしますよ。
『これほど豪華な顔触れが揃うのは、『決闘』始まって初ですッ。キャーッ、バーミリアン殿下-ッ、こっち向いてーッ』
欲望まみれの実況で、再び大歓声が上がる。
さっき、舞台袖で、急遽バーミリアン殿下の参加が決まり、私とフレナさん、イレイサーによる壮絶なじゃんけんが行われた。結果、イレイサーが涙をのむことに。
バーミリアン殿下の登場で、ディーダ殿下が苦笑いを浮かべている。
だが、ディーダ殿下と対等に戦えるのはこの中ではバーミリアン殿下だけ。
審判役の年配の騎士が、誓約書の説明し、私達はサイン。
『ではではではッ、確認されましたッ、キャーッ、ディーダ殿下-ッ、バーミリアン殿下-ッ』
「殿下、ディーダ殿下を頼みます」
アルフさんがバーミリアン殿下にお願いしてる。
「任せよ。みな、あの一番でかいのに気を付けよ、かなりの猛者だ。タイマンでするな」
バーミリアン殿下から注意が飛ぶ。
て、ことは、私達では、手に負えないか。
時間を稼いで、バーミリアン殿下に繋ぐしかないか。
私達は位置に付く。
「ウェルダン『決闘』始めッ」
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