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三度目の年④

 いざ出発日。

 ジェイドさんだけ居残りだ。

 去年までいた国だし、バインヘルツは隣国、ウェルダン領と接しているため、念のためだ。ジェイドさんは珍しい黒狼だしね。

 今回はフレナさん達も同行。きゃっきゃ言ってる。

「リツ様、早く帰って来てね」

「リツ様」

「リツ様」

 ちびっこ達がすがりつく。もうアンナをちびっこ呼ばわりはだめか、無事に10才になったしね。

 ジェイドさんが片手にユウを抱いて、お見送りしてくれる。ミアさんは手首を痛めているので。ジェイドさん頑張ったよ。今では危なげなく抱っこしてるもん。

「皆さん、お気をつけて」

「皆様、どうかお気をつけて」

「はい、では、留守を頼みます」

「「「はい」」」

 ショウの牽く空飛ぶ馬車は快適に爆走し、問題なく国境を超える。

 こちらでもノゾミは魔性だし、ミカエル達のポーズの切れがよくなり、拍手をもらう。

 見ないふり。

 そして首都のクレイハートの別邸に。

「え? マリちゃん、ここは?」

 豪華な屋敷に、ズラリと並ぶフットマン、メイドに初めてのフレナさん達が挙動不審になる。分かりますよ。

「うちの別邸です。さ、皆さんどうぞ」

「ば、馬車で待つわよ」

「もう、マルコフさんと同じこと言わないで、どうぞどうぞ」

 ひー、みたいな顔のフレナさん達。

「ルナちゃん、ルナちゃん。マリちゃんのお家かなりお金持ちって聞いたけど、どんだけなの?」

 フレナさんが小声で聞いてくる。

「ライドエル有数の資産家ですよ。だから宰相は、クレイハートの長女であるマリ先輩が欲しいんですよ。まあ、いろいろ思惑はあるでしょうけど」

 あのキンキンキラキラと一時的だが、婚約していたから、宰相家は評判が落ちているはず。そこにコラステッド病を完治させたマリ先輩と長年の想いを通じて結ばれる。なんて美談にしたいのだろう。

 肝心のマリ先輩は、まったく興味ないそうだすね。

「まあ、マリ先輩を困らせた時点で、排除対象です」

 ねえ様きらい、いや、スマイル。

「なんでリツさんやマリちゃんが、ルナちゃんに顔顔言うか分かったわ。相手殺しちゃダメだからね」

「分かってますよ」

「顔、顔」

 素敵な応接間に通され、クレイハート伯爵様と奥様マーガレット様ともご挨拶。皆さん、ガチガチに緊張していた。

「皆様、娘、マリーフレアが大変お世話になっています」

「「「いえいえそんな」」」

 少しお話して、客間に案内される面々。私だけが呼び止められる。

 プライベートな居間に案内される。もちろんマリ先輩とローズさん、リーフも一緒、リツさんも着いてきた。

 ローズさんそっくりのグロリアさんがお茶を運び、ローズさんとリーフがお手伝いに入る。

「ルミナス嬢、今回は我が家の問題なのに、『決闘』に出てくれること、感謝するよ」

「伯爵様、私はマリーフレア様に多大なる恩がございます。弟のエリックもです。私達がこのような名誉の場を与えていただき感謝しております」

「そう言って貰えると助かるよ。でも大丈夫かい? 相手のジェイムズ様は学園の武術大会で優勝するほどの実力者だよ?」

「問題ございません。木刀さえあれば、中型のグリズリー位とためが張れます」

「うん、相手は普通よりちょっと強いだけだからね。気を付けてね。本当に気を付けてね。熊じゃないからね。人族だからね」

 何故かいっぱい釘を刺された。

 それから、ライドエルにおけるコーヒー販売の件を相談している。難しいので、私はお茶とお菓子をいただく、パクパク。

「コーヒーの売れ行きはまあまあって感じかな」

「これを見ますと、やはり屋台のコーヒーが主体ですね」

 リツさんが書類をチェック。

「そう、専用のタンブラーを買ってそれに入れたら割引っていうのが受けてね。おかげで余分な洗い物が減ったよ」

「カフェは、いまいちですね」

 マリ先輩も書類をチェック。

「そうだね、やはり紅茶の方が人気が高いねどうしても」

 うーん、とリツさん、マリ先輩。

「ケーキセットのドリンクにしてみたけど、やっぱり紅茶を選ぶのね」

「まだコーヒーは出たばかりだもの。やっぱり安心感がある紅茶が人気なのね」

「まずは知名度をもっと上げる為に、別の手段を考えてはどうでしょうか?」

「そうですね。飲むだけがコーヒーじゃないし」

 皆で相談してる。パクパク。

 結局、コーヒーを使ったケーキやゼリーを出すことに。

「新発売とか、期間限定とかにしたら、目につくかも」

「いいわねそれ。後は店舗限定とかにしたら、ますますレア度が増すわ。お父様、如何ですか?」

「そうだね、試験的にやって見よう。ケーキやゼリーのレシピは? できればシェフやパティシエに滞在中に指導してくれるかい?」

「「「「はい」」」」

「後、ショコラ専門店も繁盛しているんだけど、そろそろ新作を模索してうまく行ってないようなんだ。そちらもアドバイスしてもらうないか?」

 ショコラ専門店は、高級層をターゲットにしたお店だそうです。店自体は小さいが、人気店となっていると。貴族のお茶会とかにどれだけこのお店の品を出せるか、ちょっとしたブームらしい。

 こちらは小さなお店なので大量注文は受けず、店舗での販売となっていると。クレイハートのお店なので、誰も強く言えないと。

 それから3日間、みっちりアドバイスしていた。

 クレイハートのシェフやパティシエさんは、それは熱心に聞いていた。

 味見役をしていたマルコフさんやフレアさん達が、何気なく、お店に出されている価格を聞いて、噴き出しそうになっている。

「これ、こんなにするのかい?」

「ショコラはかなり手間と技術が必要なんです。後原材料が高いので、高級層を狙うことにしたんですよ」

 へー。あ、オレンジのジャム入ってる。

「あ、アルフさん、それリキュール入ってますよ」

 マリ先輩が、丸いショコラを手にしたアルフさんに、慌てる声をかける。

「そうか? ああ、微かに薫るな」

「アルフ、僕が食べるよそれ」

「ああ」

「ぱく。う、うまあ、なんだか大人な感じだね」

「えぇ、それが人気なんです。アルフさん、こっちを、ミルフィーユ生地を入れてみました」

 私、私も。さくさくして、美味しい。

「ごめんなさい、いつもパクパク食べてしまって」

「いいんですよ。それに材料手に入れるのに、ずいぶんお世話になりましたから。さあ、こちらはアーモンドのペーストを包んだもので、こっちピスタチオのクッキーを包んだものです」

 リツさんが次々に試作を出す。

 遠慮していたけど、結局皆さん、試食していた。

読んでいただきありがとうございます

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