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三度目の年 ③

ドラゴンや

 レオルの月が過ぎ、中頃から雪がちらほら。

 寒い。

 そんな中でも、戦闘訓練を繰り返す。

 ハーベの月にはライドエルに帰国しなくてはならないからだ。『決闘』の為に。

 いつも優しいマリ先輩や、お世話になっているクレイハート伯爵様の為に、ぶんぶん。

「ルナちゃん、相手、殺したらダメだよ」

 バーンが恐る恐る言ってくる。

 大丈夫だってば。

 ぶんぶん。

 それからヒースにも行き、隠し部屋のドラゴンに挑もうとしたが、あの隠し部屋は、出てくる魔物がランダムのようで、目的のドラゴンは出なかった。

 ゴブリンやらオーク、オーガ、最後は角ウサギ。

 せっかく気合い入れたのに。

 あの時のドラゴンは、たまたまだったのかも。宝箱もドラゴンと比べたら、貧相だし。いや、いろいろ入っていたけど、ドラゴンの宝箱と比べたらね。

 あの残念金髪美形、どっから最後の剣の材料手にいれたのかね?

 ドラゴンが確実にいるダンジョンは、西大陸ではクリスタムの青龍の棲みか、バインヘルツの牙竜王の逆鱗、マダルバカラの地竜の咆哮だ。

「確か、オーディスの生命の雫も、たまに出るよ。まあ、普通のドラゴンだけどね」

 リーフが夕御飯を配膳しながら答えている。

 本日はボアとオークの合挽きハンバーグ、白身魚のフライ、カボチャのソテー、ポテトサラダ。玉ねぎのスープ。マリ先輩のゴマ入りブレッド。いただきます、きりっ。

「ラ・マースにもたまに出るが、レッサードラゴンだった。ワイバックのダンジョンにも出た事があるらしいが、ずいぶん前のはず」

 マルコフさんが、ハンバーグを食べながら思い出す。

「それから帝国のダンジョンにも出るらしいけど、あの国はアウトね」

 フレナさんが、カボチャのソテーを食べてばっさり。ガイズラーは人族至上主義だからね。エルフをリーフや、獣人のララ、ジェイドさん、三兄妹、ドワーフのハーフである、アルフさんは見つかったらどうなることか。

 もちろん、全員、帝国は行くつもりはない。

 でも、オリハルコンやドラゴンの素材は欲しい。

 リーダー達が相談。

 インゴットが出て、ドラゴンが出て、一番の近場は青龍の棲みかだ。『決闘』の後で、もう一度ヒースに臨み、ドラゴンがでなかったら挑戦することになった。


 バートルの月が過ぎ、私は17になった。

 いろいろ頂きました。

 アルフさんからは、今年は私がさりげなく包丁をリクエスト。リツさんが使いやすいと、絶賛していたので、欲しくて。はい、わがままです。アルフさんが、私の手のサイズで作ってくれた。

 うふふ、嬉しい。

「これで、旨い飯、作ってくれるか?」

「え? あ、はい、がんばります」

 ばっちり皆に目撃されて、その後リツさんとマリ先輩のお料理教室が開催され、みっちりしごかれました。

 雪が深くなり、あまり出歩くことはなく、戦闘訓練を繰り返す。またに地下の転移門で、オーディスにいって薬草を摘む。オーディスに行く度に、マリ先輩は蜘蛛達からお花もらっている。毒、ないですよね? それ? 

 そしてコーヒーとカカオの栽培は、断念。気候的に無理だろうと、残念金髪美形の鑑定で出たが。

「そうだね、あ、そうだ。気候作る?」

 この人、なんかとんでもないこと言ってるよ。

 てか、なんでいるのよ、自然に。コーヒーまったり飲んでるし。

「出来るんですか?」

「出来るよ。まあ、いろいろしなきゃだけど。ダンジョンのコアを使えば」

 私達は噴き出した。

 ダンジョンって、あんたまさか、ダンジョン作れとな?

「実はね、国から依頼があって、前から構想を練っててね。ほら、農作物とかさ、自然に左右されるじゃない」

 そりゃそうだよ。

「それじゃ、寒村は生きていけず、廃村なんてよくあるじゃない? そうならないために、地下で最低限の作物が出来ないかって。ほらビニールハウスの要領だね。主は地上で農作し、地下での栽培は予備だね。できる作物も限られるだろうし。それから非常事態の避難所として使えないかって」

 よく、分からん。

「つまり、地下で一年通して農作物が出来ると?」

 リツさんが聞いている。

 アーサーがすごい形相だけど。

「そう。ただし、いろいろ縛りはあるよ、水や土の様子なんかいろいろ。人工の光なんかもね。そこで、だ」

 残念金髪美形が改まる。

「この計画に君たちにも協力してもらえないだろうか?」

 私達は顔を見合わせる。

「僕には農業の知識はない。それに安心して依頼できるのは君達っけだから。どうかな? もちろん国家事業だから、かなり報酬はもらえるよ」

 国家事業とな。

「具体策には私達はどうすれば?」

「ダンジョンコアの管理と実践だね。とりあえず、植物が育つ気候能力のダンジョンコアを設置。このダンジョンコアは人工物だから、魔物は生まれないかわりに、絶対に拡大しない」

 ………………人工? え、ダンジョンコアって、作れるの?

「それに、初めはこちらがある程度の整地しないと、広さが確保できない。これは僕が整地するからね。君達にはダンジョンコアの稼働確認、作物の生育状況なんかを記録してほしい。もちろん人手が足りないだろうし、君達も遠出することもあるだろうから、それも僕が何とかする」

 結局、その日は返事が出来ず。

 農作物となれば、アーサーが主体だしね。それからサーシャ達三兄妹が、もともと畑仕事にはなれてるし。

 考えた結果、受ける事に。

 それから残念金髪美形はどうやったかは知らないが、空き家だった隣の屋敷を買い取り、それから地下を作る。

「はい、こんな感じ」

 土まみれの残念金髪美形が示したのは、2つの地下。

 え? 結構広いけど? しかも、暖かいし。空、ある。川がある。広いけど、広いけど、リツ邸の庭の10倍くらいよ。

 皆でぽかん。

「で、労働力だけど、うちの蜘蛛達が30体来るよ」

 蜘蛛ね。

 もう一つの地下はちょっと暑いけど。

「コーヒーとかの栽培に適してるかなって」

 そっちがメインじゃないかい?

 まず、地ならししないといけないと。

 蜘蛛達は基本的に地上に出ない。寒いと活動せず、冬眠状態となる。

 大量に作ったトレントの堆肥を、蜘蛛達と一緒撒いて、しばらく休ませると。

 アーサーが、蜘蛛達に指導している。

 早速作業に入る蜘蛛達。

「それとこれ、携帯用の転移門。もう一つ、部屋があるから、そこに繋がるよ。後ね、蜘蛛達はオーディスと好きに行き来できるように設定しているけど、こちらの作業を優先するから」

 また、どんでもないもんをっ。

 国宝クラスのものを簡単には渡してるよっ。

 絨毯みたいの渡している。

「とにかく、成育するか確認してね」

「はい」

 残念金髪美形は、コーヒーもお願いと、駄々もれで帰っていった。この地下に関しては、錬金術チーム、アーサー、三兄妹、蜘蛛達がメインで行うことに。もちろん私とリーフ、ジェイドさんもお手伝いしてますよ。

 この地下に関しては、マルコフさんやフレナさん達には秘密だ。一応国家事業だからね。

 アルベロの月も過ぎ、マリ先輩の誕生日も過ぎた。マリ先輩まで、包丁リクエストしているし。

 そんなこんなで時は過ぎ、いよいよ帰国となる。

 一年ぶりの帰国だ。

読んでいただきありがとうございます

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