材料確保⑤
ご挨拶
バーミリアン殿下が帰ってから夕御飯を済ませる。その後にガガンお義兄様とザザンお義兄様が、仕事を終えてやってきた。
遅い時間だったので、挨拶だけして帰っていった。
お変わりなさそうで良かった。
次の日になり、買い物部隊が出撃。アルフさんは以前お世話になっていた革工房に挨拶に行った。
私は宿に残って朝からブラッディーグリズリーのワイン煮込みを作る。お昼にお義姉様達もくるからね。昨日から仕込んでいるし。
付け合わせは、マッシュポテトあるし。彩りにアスパラガスと。リツさんが前菜も準備してくれた。豆とチーズのキッシュ、夏野菜のピクルス、リツさん特製腸詰め、白身魚の酢漬け、ラタトゥイユ、ホワイトトレントのチップのハムが彩りよく並ぶ。
パンもマリ先輩が仕込んでくれている。オーブンにはフレナさん達が対応してくれている。簡易コンロでは小豆が煮込まれ、サリナが慎重にみてくれている。
デザートは、どら焼。買い物から帰って来てから、リツさんとマリ先輩が作ってくれるそうだが、先行してミニパンケーキをリーフと料理上手なバラックが焼いてくれている。マルコフさん達はすることないからと、餃子を包んでくれている。で、その向こうで、サーシャがてきぱきとクレープを焼いている。生地だけ大量生産だ。本当に物覚えがいい、リツさんとマリ先輩にちょっと教えてもらい、何回か失敗したけど、すでにマスターしている。で、いつもならローズさんが買い物部隊なんだけど、必死にコーヒー豆の処理をしている。買い物部隊にはアーサーとジェイドさん、ショウがいるから大丈夫だろう。ノゾミはお昼寝、たまに起きてパンケーキ、クレープをおねだりしてる。かわいい。
ブラッディーグリズリーの煮込み、うん、早起きして煮込んだから、ほろほろ、いい匂い。
買い物部隊が帰宅後、お昼の準備だ。
リツさんとマリ先輩がどら焼を作る。リーフとバラックが焼いてくれたミニパンケーキにホワイトメープルを塗り、餡子を乗せてミニパンケーキで蓋。中には栗を入れたり、生クリームを入れたりして何種類か作成。
「出来たわね」
リツさんのオッケーが出る。
「じゃあ、俺達はこれで」
「私達も」
「皆さん、いろいろありがとうございます」
一年ぶりの再会だからと、マルコフさん達は帰って行こうとしたが、アルフさんが引き留めた。お義兄様達が挨拶したいと言っていたそうだ。
しばらくして、ドワーフ一家が来た。
おお、あの小さかったダンが、大きくなってる。双子の赤ちゃんも、幼児になり危なっかしく歩いてるし。
アニタお義姉様もハンナお義姉様も変わりなさそうで良かった。
で、私もご挨拶。
「お義兄様、お義姉様、お久しぶりです」
で、悶える四人。本当に変わらない。
アルフさんによる紹介が始まる。
「兄貴達、こちらがマルコフさんだ。で、こっちがフレナ。トウラで初めに世話になった友人だ。マルコフさんは『決闘』にも出てくれた。今度の地竜の咆哮にも、一緒に臨んでくれることになっとる」
「そうですか。アルフが大変お世話になりました。儂は兄弟子のガガンです。養父エディオールに変わりお礼申し上げます」
「儂は兄弟子のザザンです。地竜の咆哮までお付き合いいただき本当にありがとうございます」
同じ動きでお辞儀。
「ご丁寧にありがとうございます。俺達の方がアルフには恩があります。これくらい、友として当然の事です」
「アルフには、本当に助けてもらっています。お気になさらないでください」
ご挨拶終了。
で、
「アルフ、どっちがガガンさんだ?」
「アルフ、どっちがザザンさん?」
「ガガンの兄貴の右目のしたに黒子があるぞ」
なるほどと、納得していた。
それからお昼御飯。流石に狭いので、リツさんが宿に引き上げるマルコフさんとフレナさんにお昼ご飯を渡していた。
いただきます、きりっ
ブラッディーグリズリーは相変わらず大好評だ。
良かった、良かった。
まあ、ドワーフ男児の食べること。まあ、いいや、おいしくないって言われるよりは。
「しかし、アルフや、いいお嬢さんを掴まえたなあ」
「そうじゃなあ、器量もいいし、料理も上手い、言うことないのう」
て、照れます。もじもじ。
「まあ、こっち向いてくれんで苦労したがな」
あはは、とアルフさん。
は、恥ずかしい。もじもじ。
「お義兄様、おかわりを…………」
恥ずかしいから誤魔化す。
ブラッディーグリズリーのワイン煮込み、完売。デザートのどら焼も大好評だ。
アニタお義姉様とハンナお義姉様が、リツさんに腸詰めやどら焼のレシピを聞いていた。
食後、アルフさんがオリハルコンで強化した盾と十文槍を見せると、お義兄様のパンチがアルフさんのばっきばきのお腹に入る。
「ど、どら焼が出る…………」
「アルフッ、お前なんちゅうもんをっ」
「絶対にここで、誰にも見せるなよっ」
「分かった分かった、しまう」
「「まだ見る」」
結局、夕方近くまで見て、お義姉様の雷が落ちる。
「あんた、いい加減帰るよっ」
「迷惑だろうっ」
「自分の鎧、返してください…………」
「「あ、ごめんね」」
アニタお義姉様とハンナお義姉様は、アーサーのドラゴンアーマーを脇に抱えていた。
無事に帰って来ましたよ。
「アルフ、いつまでおる?」
黒子があるガガンさんが聞いている。
今回の滞在は、ダンジョンアタックや移動したので、休息が含まれている。
「明明後日だ」
「なら、明日、一緒に墓参りにいかんか?」
「儂は構わないが。ルナ?」
「問題ありません」
次の日。ローズさんの手により、支度されてお墓参りに。
「親父、やっとアルフにこんなにいいお嬢さんが嫁に来てくれるぞ」
「親父とお袋にも会わせたかった。本当に、気立てのよい娘だ」
だくだく、と涙を流すガガンお義兄様ザザンお義兄。
嬉しい。
私もお祈り。
アルフさんを、守り育ててくれてありがとうございます。私はアルフさんに出会えることが出来ました。ありがとうございます。
ありがとうございます。
アルフさんの、お義父様、お義母様。
ありがとうございます。
読んでいただきありがとうございます