表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/386

三ヶ月③

スタディ開始

 次の日からナリミヤ氏による錬金術講座が始まった。緊張感のある三人が並ぶ。私は見学。

「では、錬金術講座開始します。まず、錬金術には様々な使い方があります。基本に分解、抽出、再構成、合成です。その過程で乾燥、加熱、温度調整、撹拌等があります」

 ふーん。

「分子の理解は大丈夫ですか」

 はい、と返事をする三人。

 昨日夕食後に、そんな話になった。私はちんぷんかんぷんだったが、ローズさんは何度か聞いて理解してました。優秀だな。

「では、早速、簡単な分解と乾燥から説明したいのですが、その前に古代魔法語の…」

 ぐうぐう。ぐうぐう。

 はい、分かりません、速攻で寝ました。


「ルナちゃん、ルナちゃん、お昼よお昼ご飯の時間よ」

 マリ先輩に起こされるまで熟睡。

 寝ていただけなのにお腹が減った。

 あ、なんだろう、嗅いだことのない匂い。

 いけない、お手伝いも何もしてない。

「すみません、お手伝いしなくて」

「いいのよ、さあ、今日は味噌を使った料理よ。気に入るといいけど」

「マリ先輩の作る料理はなんでも好きですよ」

「あら、嬉しい。たくさん食べてね」

 よし、許可いただいたよ。

「あの、僕もいただいていいのかい?」

 ナリミヤ氏が恐縮してるが、目線はしっかりコンロにある鍋だ。

「構いませんよ」

 リツさんが白い何かをお椀にいれてる。

 さっとローズさんが配膳する。

「今日はご飯と、オークのなんちゃって豚汁、川魚のなんちゃって西京焼き」

「おおおおおぉぉぉぉッ」

 ナリミヤ氏が叫ぶ、涙を流して。どうしたの大富豪、そしてなんちゃって豚汁の匂いを鼻を膨らまして嗅がないで、せっかくの美形が崩れる崩れる。

「味噌だ、味噌だ、味噌の香りだ。十年ぶりだあ」

 ああ、なるほど、故郷の味か。味噌とか醤油とかは向こうには、どの家庭にもあるって聞いた。でも、こちらにはない。

 大富豪で、優秀な錬金術師でもできないことあるのね。

「いいのかい? いただいていいのかい?」

 目、血走ってます。

「どうぞ、ご飯と豚汁はおかわりできますよ」

「いただきますっ」

 ナリミヤ氏は両手を合わせて、自分のアイテムボックスから細い二本の棒を取り出し、器用に使ってがつがつ食べ出す。マリ先輩に聞くと箸という日本のフォーク見たいなものらしい。へえ。いいたべっぷりだか、涙が止まらないようだ。

 私もいただきます。

 豚汁を一口。

「あ、なんだろう、香ばしいけどちょっと塩味なのかな、なんだか、ほっとする」

 今まで味わったことのない味だが、体に染み込んで行く感じ。入っているオーク肉、昨日私がひたすら切った、薄く切るの大変だったなあ。野菜もたくさん入っている。うん、美味しい。

「気に入ってくれた?」

 マリ先輩が聞いてくる。

「はい、とても美味しいです、味噌ってこんな味なんですね。香ばしいし、なんだか、優しい味です」

 感想をのべると嬉しそうなマリ先輩。

「サイトウ君、おかわりいただいてもいいかいッ」

 もう食べたの?

 リツさんが豚汁を追加で入れてる。

「ありがとう、ありがとう」

 がつがつ。

 本当にいいたべっぷり。

「マリ先輩、この白いのは?」

「お米よ、炊いたの。無理ならパンを出すけど」

「いえいえ、いただきます」

 スプーンですくってぱくり。あ、柔らかいけど噛むと甘味が出てくる。パンとは違う風味。でも、豚汁ならこっちが合うな。川魚も一口、なんちゃって西京焼きってなんだか分からないが、川魚の切り身の上に薄茶の濃いソースがのってる。

 ぱくっ

「このソースなんです? とっても美味しいです」

 ちょっと淡白な川魚にのってるソース、ほどよい塩気と優しい甘味、川魚に合う、お米に合う。

「味噌にちょっと砂糖と野菜のスープを混ぜたのよ」

 リツさんが説明してくれる。

「なんちゃってだけど、まずまずいい感じね」

 マリ先輩とリツさんが食べながら話している。これでまずまずなの? 私は十分なんですが。もぐもぐ。

 結局、ナリミヤ氏は豚汁を三杯食べた。

「まさか、味噌が出来上がっていたなんて」

 食後のローズさんの紅茶を頂きながら、ナリミヤ氏は感慨深く呟く。何でも味噌を作ろうとして失敗を繰り返し、食材をダメにし続けたため諦めはじめていたと。

「まだ、完成してないですよ。熟成がまだ甘い感じだし」

 マリ先輩がナリミヤ氏に説明。きっと味噌はワインみたいに時間かかるんだな。

「なんだ、それなら何とかなるよ、魔法頼りになるけど」

 ナリミヤ氏がさらっと言う。

 魔法で熟成なんて聞いたことない。

「それも錬金術ですか?」

 私が聞くと、ナリミヤ氏は首を横に振る。

「時空間魔法だよ。時間をすすめればいいんだよ。まあ、魔力の消費は激しいけどね。やってみようか?」

 なんか、気軽。

 時空間魔法ってワープとか、空間把握して他の魔法とか併用すると、魔法を誘導し湾曲し、着弾させる。そんな魔法じゃなかったっけ?

 半信半疑でマリ先輩はローズさんのマジックバックから、味噌のつまった甕を取り出す。中身は茶色の味噌だ。

「えっと、どれくらい進める」

「とりあえず、4ヶ月」

 なんだろう、会話が軽い。夕食のパンの個数を聞いているような感じだ。

「了解、ふー、タイムリープ」

 ナリミヤ氏が甕に向かって手をかざす。

 ふわっと光が包む。

「終わったよ」

 早ッ しかも魔力枯渇してない。

 中身を見ると、更に深い色になった味噌。

「すごい、すごい」

「なんか、本当に熟成進んでる」

 私とローズさんは呆然。マリ先輩とリツさんははしゃいでいる。

「私にも出来ますか?」

 リツさんがナリミヤ氏に聞いてる。そうか、時空間魔法、リツさん持ってたな。

「今は無理だよ。僕はレベルが高いから魔力の保有量が多めだし、時空間魔法のスキルレベル80越えてるからね」

 スキルレベル80!? どんだけ高いのあんた。あ、そういえばこの人のレベル自体200越えてたな、まあ、そうなのかな? うーん、解せぬ。

「はじめは30分くらいから始めた方がいいよ。繰り返ししたらスキルレベル上がるし」

「じゃあ、パンの発酵くらいから始めた方がいいかしら」

 だから、リツさん魔法の使い方がね。

 真剣に話をしているマリ先輩とリツさん。次の休みにパンの製造が決定。

 ちらっとローズさんを見ると悟りの表情。はい、受け入れます。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ