次回の為に④
リツさん達が帰って来た。
皆さん、いい顔。
ちびっこ達は、リツさんに集まり、ホリィさんも安堵している。アーサーも嬉そうだ。サーシャもよく分からないけど、耳、ピクピク。素直だね、耳、だけ。
私はそっとローズさんにイスハーン殿下の手紙を渡す。ふわっとローズさんの頬が薔薇色に。ローズさんもあまり表情なんだけど、よく分かるよ。大事そうに手紙を胸に抱いている。
それからバラックやエレ達を見送る。
一休憩してから、夕御飯。
ラタトゥイユにマッシュポテト、ブラッディーグリズリーのワイン煮込み、ホリィさんが焼いたバケットだ。
たべながら、今回のダンジョンアタックの話を聞く。
「やっぱりルナちゃん達がいないと、戦闘の進みが違うわね」
しみじみとリツさんがいう。マリ先輩も頷いている。まあ、私達も今回のゴブリンの巣の探索で、リツさん達の存在が大きいのを実感したしね。ローズさんとショウは完全に後方に徹したそうだ。
レベルに関してもリツさんとマリ先輩がま50を越えた。そして快進撃だったのは、ミカエル達だったそうだ。それからバラックとエレもずいぶん動きがよくなったようだ。
「3日間ゆっくりして、それから今度の事を考える事になったわ」
はい、パクパク。
明日は魚の日だ。疲れてないのかな? リツさんとマリ先輩は行く気満々だ。
まあ、いいけど。
朝早く、リツさん達の、買い物部隊が出撃。
アーサーは嬉しそうに着いていった。
大丈夫かね?
まあ、いいや、私は残った掃除したり、畑の整備をする。
夏の盛りも過ぎて、昼は暑いが、朝夕はずいぶん過ごしやすい。朝早い時間帯に、戦闘訓練な変わらない。
確かにミカエル達の動きは格段によくなっている。ミーシャとリーフの動きも随分いい。
「なんでルナお姉ちゃん、強いの?」
「なんでだあ」
地団駄踏んでる。
「あれね、別な生き物だ」
「そうよ」
サーシャとアーシャが言ってる。失礼だね。
昼前にリツさん達がルンルンと帰って来た。
畑作業を中断、魚の処理。
私はミーシャとエビの殻をひたすら剥く。
今日は何かな、ウキウキ。
リツさん、サーシャとリーフは魚を捌き、切られた魚をマリ先輩とローズさん、アーシャが処理。ジェイドさんはパン粉の製作。
バッドに次々にパン粉を纏った魚やエビが並ぶ。
「バッドが足りなくなりそうね」
リツさんがぽろり。
え、足りなくなるの?
アルフさんが随分作ったのに? 魚の鱗を取っていたアルフさんがぎょっとしている。
すべての魚の処理をして、お昼ご飯。白身魚のムニエルだった。
昼からはエビの殻、魚の骨をリツさんが処理。マリ先輩とローズさん、リーフがお手伝い。
アルフさんは工房に籠っている。バッドを作っている。
そんなこんなで三日間過ぎた。
朝から戦闘訓練して、お昼ご飯。
彩り豊かな夏野菜のサラダ、エビの濃厚なスープ、熱々シーフードドリア。いただきます。
「このスープ、旨いな、味が濃いな」
「本当、このお米とグラタンがとっても合うわ」
皆さん、大好評。私も美味しい、あちち。スープのエビの凝縮された美味しさがたまらない。
デザートに入り、リーダーが話し合っている。
「アルフさんのお仕事落ち着いているみたいだし」
リツさんが紅茶を傾ける。
「そうだな。暑さが落ち着いたら、魔の森を回るか?」
マルコフさんがコーヒーを飲む。
「そうね。私も新しい剣を実戦したいし」
フレナさんはパイナップルのケーキを食べている。
そう、フレナさんとイレイサーの剣に、まず、アダマンタイトが合成されている。
「なら、次回は……………」
話の最中に、マリ先輩の携帯が鳴る。
なんだろう? マリ先輩がそっと席を立つ。
伯爵様からな?
ライチジェラート、美味しい。
しばらくして、マリ先輩が申し訳なさそうに帰って来る。
どうしたんだろう?
「ごめんなさい、ちょっといいかしら?」
「マリちゃん、どうしたの?」
「実は、今、父から連絡があって。その、来年のウェルダンの春祭りでの『決闘』で、私が景品になりそうで」
私は噴き出した。
「あ、相手は誰ッ」
私はクッキー片手に立ち上がる。
「ジェイムズ様」
まだ諦めてなかったのかい。
なのキンキンキラキラとは当然婚約解消して、それを確認してすぐにクレイハートに申し込んだようだ。あまりの剣幕だったが、クレイハート伯爵様は丁寧にお断りした。婚約解消して直後で、周りにはあまりにも節操なしと思われていたしね。
だけど、元々マリ先輩はジェイムズ様の婚約者候補だ。しかも、断っていたコラステッド病は完治して、なんの問題もないし、なによりクレイハートの財力も欲しいという宰相の思わくもあった。
それで、私がウェルダンの『決闘』でアルフさんと正式に婚約したので、それを出してきて、『決闘』を申し込んだと。
大丈夫かい? マリ先輩が欲しいなら、ショウが黙ってないよ。
あ、ダメだ、ショウは出れない。
「どうして?」
リツさんが聞いてくる。
「ほら、私の場合は、アルフさんとナービット伯爵っていう図式があったから成立したんです。ただ、マリ先輩には、そういう人いないでしょ? 誰かをかけた場合ですね、相手がいないと成立しないんです」
「え? 結局、どうなるの?」
「ジェイムズ様の不戦勝になる可能性があります。ただ、開催の権限はウェルダンにあります。ウェルダンが認めなくては開催できないはず」
「お父様がウェルダンにジェイムズ様の申し入れを受けないように、お願いしているけど」
うーん。
クレイハートの評判、落ちないかな?
長女のマリ先輩が隣国でテイマーしているってだけで、陰口叩かれているだろうに。クレイハートほどの財力を持つ伯爵様の適齢期の令嬢が、独りってだけで色々言われているだろうに。宰相からの申し入れを、嫌だからとお断りし続けるのも、よろしくないだろう。
「マリちゃん、そのジェイムズって人は好きなの?」
「いいえ。嫌いでもないわ。いい方ではあるけど。結婚したいって思えない。いい友人でいたい方ね」
マリ先輩、はっきり言う。
うーん、とお悩みマリ先輩。
「一度、ガツンと言った方がいいかしら? あ、ルナちゃん、私が直接『決闘』に出れないかしら? 自分の為に」
ちょっとちょっと。
「まあ、出来ないことはないですけど。ウェルダンがまず受けるかどうか、待ってみてはどうです? 必要なら、私が代行ででますから」
「うわあ、そのジェイムズって人、ぎったんぎったんにされそう」
バーンがポツリと呟いた。
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