スタンビード⑤
短いです
残念金髪美形の参戦で、魔物達が撤退した。
歓声が上がるが、これからが大変だ。
怪我人の救助だ。
私達はへたりこみ、その間、後方支援が駆け回る。
マジックバッグから水筒を出して、煽る。
アルフさんが兜をしまい、頭から水を被る。
アーサーもサーシャもへたりこみ、ジェイドさんも水を煽る。ショウは旋回し、飛んで行く。多分マリ先輩の元だろう。
向こうで残念金髪美形が魔法を発動。
光が広範囲に広渡る。
あ、回復魔法か。疲労感が薄れていく。
残念金髪美形は惜しみ無く魔法を発動している。
アルフさんが水を飲みながら、辺りを見渡す。
「どうしました?」
「いや、マルコフさん達が見当たらんでな」
そう言えば、見当たらない。
サーシャとジェイドさんが耳をピクピク。
後方支援が展開しているなかで、音を拾う。
「いた」
「怪我人がいますね」
「バーンだ」
私達は立ち上がった。
サーシャとジェイドさんが駆けて、私達は続く。
魔物の死体を避けて、向かうと、マルコフさんとバラックが大型の猪を押し退けようとしている。
バーンがその下敷きになっている。イレイサーが必死に引っ張り出そうとしている。
アルフさんが魔法を駆使し、猪を弾く。
「バーンッ」
マルコフさんの声に、バーンがうめき声を上げる。
不味いよ、これ。
片足、完全に潰れかかってる。
「サーシャッ」
アルフさんが呼ぶ。
サーシャがヒールをかけ、私はキズにポーションをかける。アルフさんがレリアをバーンの体に潜り込ませる。
焼け石に水だ。
ジェイドさんが光の精霊を出す。光の蝶がバーンの胸に止まる。
「ジェイドさん?」
「グアンには、光魔法の類似した力もあるんですよ」
なるほど。
グアンは、光の蝶の名前。
だけど、あんまり芳しくないけど。
意識が回復すれば、ハイ・ポーション飲ませることが出来るけど。
アーサーがバーンを挟んで、サーシャの前に膝をつく。そっと、サーシャの手に重ねる。
「すべての魔の源よ、流れよ、満たせ、奮い立たせよ」
これ、無属性魔法の支援魔法だよね。
アーサーの黒髪がフワリフワリと揺れる。
「マナ・ハーモニー」
サーシャの銀髪が揺れる。
「おいおい、無理しよって」
アルフさんが呟く。
サーシャが息を吸い、ヒールを発動。
いつものヒールの倍の光が、バーンを包み込む。
ふわあ、と、バーンの様子が変わる。ひしゃげかけた足が、元に戻る。
おおっ、すごいッ。
「ううぅぅぅ」
バーンをうめき声を上げて、目を開ける。
「バーンッ、分かるかッ、バーンッ」
マルコフさんが慎重にバーンを抱える。私がハイ・ポーションを渡して、マルコフさんが飲ませる。
ああ、これで、大丈夫。
サーシャがくるり、と背中を向けると、激しく嘔吐する。アーサーは後ろにひっくり返る。
「こうなるだろうな」
アルフさんがアーサーを抱える。
「でしょうね」
ジェイドさんがグアンをサーシャに移動させる。
多分、だろうけど。
アーサーの無属性魔法で、サーシャの光魔法を無理に支援をした。別属性魔法の強化って、聞いたことしかないけど、出来るのはかなり高ランク。多分、魔族やエルフの高ランクの魔力スキルが必要ようとなるはず。多分、自信ない。流石のアーサーでも無理に発動させた事で倒れ、サーシャはそれに酔ったって事かな?
バーンはハイ・ポーションを飲み、顔色が改善した。マルコフさんの問いかけに答えている。後方支援が担架を持って走ってくる。
………………………
マリベールのあの少年4人組。手早くバーンを担架を乗せる。
「マルコフさん、先に行ってくれ」
「すまん」
マルコフさん達が、担架に乗せられたバーンに付き添って走って行く。
「儂等も行こう」
アルフさんがアーサーを背負い、ジェイドさんがやっと落ち着いたサーシャを背負う。
私は2人の後に続く。
向こうで残念金髪美形がポーションを煽り、光魔法を発動させていた。
後方支援でごった返す中で、マリ先輩が光魔法を発動。リツさんは袖を捲って、次々に指示を出している。ローズさんとリーフが走り回る。アーシャとミーシャもだ。
私も手伝わないと。
だけど、リツさんに宿に戻るように言われる。
「とにかく一旦宿に戻って、アーサー君とサーシャ君を休ませてね。いいわね。一旦、休憩してから手伝ってくれる?」
「はい」
そう言われて、宿に戻る。
アーサーとサーシャは真っ青な顔でこんこんと寝ている。
アルフさんとジェイドさんが装備を外してベッドに寝かせている。
私はそれを見ながら、お茶を出す。
持たされた軽食も出して、と。
鍋のコンソメスープもよそってと。
よし、こんなもんかな?
私は準備してソファーに座る。
あ、急に、眠気が。
いかん、瞼が、瞼が、重い。
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