とりあえず、穏やかな日々⑥
ドラゴンアーマー
ヒースから帰って1ヶ月。
「わあ、ありがとうアルフッ」
バーンが、鎧を着てくるりと回る。
アーサーのフォレストダークコブラが土の補助が外されて、光魔法補助が付き、灰色となる。バーンに譲渡される。
「アーサーのサイズが合わんからな」
で、そのアーサーは、新しい鎧です。
ドラゴンアーマーです。見た目は半鎧だ。思ったより軽い。
ローズさんとリーフデザイン、制作はほぼアルフさん。大まかな形成は錬金術でしたが、細かい作業はアルフさんのアダマンタイトの道具フル稼働。おお、中々カッコいいじゃないかい。
バーンがハンカチギリギリしてる。
「自分、奴隷なのに………」
「いいさ。ほら、バーン、新しい剣だ」
ハンカチギリギリしていたバーンが、ぽかん、としてる。
「え? いいの?」
「いいさ」
渡されたのは2本をショートソードだ。
「あ、アルフ、ありがとうッ」
飛び付こうとするバーンを、長い腕でガードするアルフさん。
サリナの盾も出来上がる。
それ以外でもイレイサーの剣、バラックのハルバード、フレナさん達にはナイフ。サリナには小型斧。ララには新しい革鎧一式だ。こちらは錬金術チームが作成。
私達にも新しい装備品が揃う。
まず、ドラゴンの革で、ジェイドさんの胸当てが出来上がる。ローズさんにもだ。胸当てだよ、あれ、発射しないよね? サーシャとリーフには弓を使うため、稼働を邪魔しない、ドラゴンの革の胸当てが作られる。
私も胸当て予定だったが、断った。ローズさんと比べられたら、や、だもん。結局、ベストとなる。
それぞれ表面にアダマンタイトとミスリルでコーティング。これで硬度が羽上がる。
リツさんとマリ先輩のアーシャとミーシャにも、ドラゴンの骨を砕いたもの現在の装備品に合成した。これで強度と魔法防御力が羽上がる。
ただ、オリハルコンに関しては、いまだ、保留だ。アルフさんが極わずかオリハルコンを使ってみたが、呆気なく魔力枯渇して、昏倒を繰り返す。とうとう、リツさんが、待ったをかけた。
何度目かの魔力枯渇。真っ青な顔のアルフさんをソファーに座らせる。私はアルフさんの額の汗を拭く。
「もう、アルフさん。しばらくオリハルコンは禁止です」
リツさんが、きつく言う。
「あと、あと、一回」
うわ言のように、一回と言うアルフさん。
「だめですよ。もし、触ったら、ルナちゃんとの接近禁止にしますよ」
「そんなあ」
「だめです、絶対にだめです」
「あああぁぁぁぁぁ」
回収されるオリハルコン。
悲嘆に暮れるアルフさん。
「諦めましょう、アルフさん」
「ああ、親父を中々越せん…………」
「ほら。だめですよ。休んでください」
「ああ…………」
アルフさんは額のタオルで、目を覆う。
「なんて癖と言うか、じゃじゃ馬と言うか、手強い金属だなやっぱり………」
アルフさん、ぶつぶつ。やっぱりあの残念金髪美形、すごいんだなあ。
そんなこんなで穏やかな日々は過ぎていった。
ちょっと昼の暑さが気になり出した頃、『ハーベの光』が首都マリベールへの護衛依頼から帰って来た。
その間、フレナさん達『紅の波』と戦闘訓練したり、魔の森を探索したりと過ごしていた。
ミカエル達の動きもまずまず。
「メエメエ~」
ノゾミは絶好調だ。
スリーカラーシープになって、火属性魔法以外に、水と土属性魔法で、魔の森でアーサーとマリ先輩が指導している。
それからドラゴンの件で、いろいろあった。
ドラゴンの革やら爪、骨や血は、リツさんとシェラさんと激しい攻防が繰り広げられる。革に関しては、私達の装備品用に欲しかったので、かなり引き取った。残りは必要な分だけ引き取る。爪に関しては、武器類に合成予定だ。今のところ、私の2代目、アーサーの武器類、ローズさんのナイフ、サーシャのショートソード、ジェイドさんのロングソード予定だ。
それ以外に出た宝石や宝飾品は、すべて買い取りしてもらった。もちろんおじいちゃんドワーフダビデさんに、簡易鑑定してもらって。合計2億6000万。ドラゴンの部屋で出てきた宝石が、かなり豪華だった。それぞれ各パーティーに8000万ずつ。残り2000万はトウラの孤児院へ寄付となる。
ドラゴンの件でノゾミが進化したが、影響はそれだけではない。私とアーサーのレベルも羽上がっていた。
今のところ最高レベルはアルフさんなのはかわりないけどね。
「うかうかしたら、抜かれてしまうな」
と、冗談で言っていたけど、バーンがこっそりアーサーにレベル聞いていた。曖昧に低く言ってたけど、ひきつってたよ。
それから皆、戦闘訓練に更に熱が入る。
月に一度、地竜の咆哮の為の料理デーを終えた日。夕方に、リツ邸に訪問者が。冒険者ギルドのオルファスさんだ。
「どうされました?」
リツさんが対応。オルファスさんの顔色はあまりよくない。
「『ハーベの光』『紅の波』もいらっしゃいますね?」
「はい」
「至急で申し訳ないのですが、明日、ミュートに向かってください」
オルファスさんが息をつく。
「ミュート周辺の森が、悲鳴を上げだしました。スタンビードは時間の問題です」
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