とりあえず、穏やかな日々④
とりあえず、穏やかな日々。
25階をうろうろ。
2日の休息をし、ヒースを探索。
「どこかに隠し通路か、隠し部屋があると思うんだがなあ」
「そうねえ」
マルコフさんとフレナさんが悩んでいる。
アーサーの浸入、ジェイドさんの把握を駆使して回る。
隠し部屋は見つかった。空部屋だったけど。
あちこち回る。
「来たッ」
斥候チームが警告する。
百足の魔物だ。
アルフさんのシールドバッシュで吹き飛ばし、手分けして、切り裂いていく。
丸三日。25階を探すが分からず。
下層に行き、うろうろうろうろ。
マルコフさんとフレナさんが悩んでいる。
2週間、あちこち探し回る。
そろそろ期限だけど。ずいぶん戦闘したけどなあ。ミノタウロス部屋では、リツさんとマリ先輩をチーズと叫んでいたので、張り切るアーサー、ローズさん、ショウ、ノゾミ。
リツさんがチーズタッカルビにしてくれた。
大好評だった。
「ルナちゃん、おかわりは?」
「頂きます」
きりっ
最終日。
30階まで進み、アーサーが浸入、ジェイドさんが把握を発動する。
しばらくして、反応あり。
「あ、何かありました」
「あそこに、何かありますね」
示した先は、壁。色が変わらないけど。
斥候チームがチェックする。
サーシャがからくりを発見。ひもをつけて、アルフさんが引く。
がこん
「「「「おー」」」」
本日あったよ、隠し通路。
わあ、すごい。
慎重に隠し通路を調べる。アーサーの浸入、ジェイドさんの把握が発動する。
「魔物、いませんね」
「一本道ですね」
結果を聞いて、リーダー達が相談。
「アルフさん、どう思います?」
「ん? そうだな」
アルフさんも加わる。
進むことに。うちには索敵能力の高いショウがいるしね。そのショウが隠し通路に首を突っ込んでいる。
装備を確認し、進む。
何だろう、本当に何にもない。
また、空部屋かなあ。
広い部屋に出るが、空部屋だ。
残念。
ばたん
え?
なかったはずの、ドアがある。
「ぴぃぃぃぃぃぃぃッ」
「防御ッ」
ショウが高い声をあげ、アルフさんが兜を出し、盾と十文字槍を出す。
部屋の中心に、渦が蠢く。
【風魔法 身体強化 発動】
【火魔法 身体強化 発動】
【火魔法 武器強化 発動】
あれ、絶対やばいやつだ。
アーサーがタンクに支援を飛ばす。
「後ろにッ」
私はリツさん、マリ先輩、アーシャ、ミーシャ、ノゾミ、リーフを下げる。
下げた瞬間。
グオオオオオオッ
咆哮と共に、姿を現したのは、鋭い牙の並んだ口、強大な四肢、鋭い爪。
ドラゴンだ。
「ウォーターランスッ」
「アースランスッ」
「ウォーターランスッ」
「ウォーターアローッ」
「ウォーターアローッ」
「ウィンドスラッシュッ」
「ウィンドスラッシュッ」
「ウィンドスラッシュッ」
「サンダーランスッ」
「ピイィッ」
リツさん、マリ先輩、キャリー、アーシャ、ミーシャ、私、イレイサー、リーフ、ローズさんが魔法を飛ばす。ショウか不可視の刃を飛ばす。
破裂音を響かせて全弾命中する。
「メエメエ~」
一歩遅れてノゾミのファイヤーボールも飛ぶ。それも命中したが、それでも倒れない。やはり、魔法防御力の高い最上位魔物。これくらいでは倒れないか。
タンクが、シールド展開。
魔法職が魔法を飛ばすがお構い無し。ドラゴンの喉奥から、光が溢れる。
「ブレスが来るッ」
私は警告する。
次の瞬間。
ブレスが、来た。
息を焼き尽くすようなブレスが。あのオークの巣の比ではないブレスが。
息ができない。熱い、熱い、熱い。
グレイキルスパイダーの装備でこれなら、まずい。
視界の端で崩れ落ちるララ。
まずいッ。
一番、装備が、薄いララ。
「エリアミストッ」
「エリアヒールッ」
リツさんの水魔法が灼熱の温度を下げ、マリ先輩の光魔法が癒しの光を与える。
急場しのぎだが、一気に温度が下がり、痛みが引く。
「うぅッ」
サリナがうめき声を上げて吹き飛び。
バラックもバランスを崩す。
まずいッ。
たってるのアルフさんだけだ。このシールド破られたら、私達は数秒も持たない。
そのアルフさんもジリジリと後方に、押し出されている。
アルフさんッ。
声が出せない、動けない。
ジリジリ、ジリジリ。
アルフさんが押し出されている。そのアルフさんの後ろにマルコフさんが立ち、盾を支える。こんな中で、動けるのは、マルコフさんだけだ。
長身の二人が盾を支え、長いブレスがやっと止む。
膝を着くアルフさんとマルコフさん。マルコフさんの顔、焼けただれている。サーシャとバーンが応急処置のヒールを発動。
私か躊躇いなく、マジックバッグから剣を抜く。
久しぶりの出撃。
最後の剣。
「アーサーッ」
私じゃおそらくまだ満足に、振り回せない。
可能性が、あるのは、この中では、たった一人。
アーサーが差し出された最後の剣を引き抜く。私はそのまま鞘を握りしめる。
「首を狙えッ」
ジェイドさんの激が飛ぶ。その目は、光を宿している。
後方から魔法が飛ぶ、ショウは飛び上がり不可視の刃を飛ばす。
アーサーと私が飛び出し、剣を振るう。
【風魔法 武器強化 発動】
う、やっぱり、魔力を持っていかれる。
だが、
「グワァァァァァッ」
堅そうな鱗が、ばっくり切り裂かれる。鞘で。さすが、残念金髪美形の武器だ。アーサーも深く切りつけている。
ドラゴンの首は、アルフさんより頭上にある。
どうやって狙うか。
膝を着かせるしない。
回復したアルフさんとマルコフさんが片方の足に集中攻撃。
残りは距離をおきながら援護だ。
ドラゴンの鱗を切り裂る武器は、おそらく私の剣、アーサーの武器類、アルフさんの十文字槍、マルコフさんの剣くらいだ。
ブインッ
巨大な尻尾が唸りをあげる。
その先には、アーサーだが、その姿は、尻尾が振り下ろされる前に消える。
え?
アーサーの姿は、私の横に。
え? まさか、この子、ショートワープしたの?
無事はいいが、アーサーの顔色が悪い。流石のアーサーでも、魔力が枯渇しているんだ。
「お兄ちゃんッ」
ミーシャが悲鳴を上げる。
サーシャとジェイドさんがドラゴンの背中にしがみついている。嫌がるドラゴン。
分かってますよ、時間稼いでくれてると。私はアーサーを引き連れ下がり、マジックバッグから魔力回復ポーションを出し、口に突っ込む。むせたが、飲み込むアーサー。その間、バラックが盾で私達を守る。ドラゴンの足が弾いた岩を、見事に弾き返している。
「アーサーッ、決めるよッ」
「はいッ」
瓶を投げ捨て、アーサーが立ち上がる。
サーシャとジェイドさんが、振り落とされるが、身体能力か高いふたりは勢いをころし、転がりながらなんとか着地。
「ショウッ」
私が呼ぶと、急降下するショウ。
意図か分かったのか、アーサーも私と共に急降下したショウの前足を掴む。ショウは私とアーサーの重さをものともせずに飛び上がる。
ドラゴンの喉奥に光が再び宿りだす。
「やーいッ。のろまなドラゴンッ」
バーンのあり得ない挑発。真っ青な顔したバーンが、注意を引く。
振り返るドラゴン。
ひ、と耳を抑えてしゃがむバーン。その後ろには、今までの中で最高に目付きの怪しいローズさん。
「サンダーランスッ」
気合いの入ったサンダーランスは、見事にドラゴンの口の中に。そのまま爆発。えげつない。
だが、逃すかッ。
命はって挑発したバーン、ローズさんが作ってくれた隙、逃すかッ。
「アーサーッ」
「はいッ」
ショウがタイミングよく急降下、私とアーサーはそのままの勢いで、首を狙う。
今なら、いける。
今の爆発で、ドラゴンは一瞬気を緩めているはずだ。この隙を逃すかッ。
【風魔法 武器強化 発動】
【風魔法 武器強化 発動】
う、やっぱり、魔力持っていかれる。
だけど、構うものかっ。
アーサーの持った最後の剣が首に食い込み、私の鞘がその背を押し。
「あああああぁぁぁぁッ」
「うぉぉぉぉぉッ」
剣を持った手に、尋常じゃない手応えが帰って来る。
だが、それは急になくなり、私とアーサーは地面に叩きつけられる。
あ、心臓の音が聞こえる。
読んでいただきありがとうございます