とりあえず、穏やかな日々②
ステータス
帰途には、問題なかった。
ジェイドさんとミアさんは、入国審査があったが、問題なく終了する。リツさんが保証人となった。一応、トウラのリツ邸で働く為の従業員として、迎え入れる体だ。
首都マリベールを過ぎて、無事にトウラに到着する。
まず、冒険者ギルドに帰宅の報告をする。そこでマルコフさん達とお別れ。
「マルコフさん、長々とすまなかったな」
「ありがとうございます、マルコフさん」
アルフさんと私が並んでお礼を言う。
「いいさ、いい経験になった。また、ミカエル達の戦闘訓練に伺うな」
「はい、マルコフさん、お願いします」
これにはリツさんが返答。
リツさん達は一旦屋敷に戻る。
私はアルフさんと鍛治師ギルドに。
バルハさんとおじいちゃんドワーフダビデさんが出てきた。
「アルフ、やっと帰って来たか」
「ほっほっほっ、アルフや、どうだった?」
いつもの応接室に通されて、一部始終を説明。
「なんとか、婚約はした」
「そうか、良かった良かったなあ。で、部屋はどうする? 物件あるぞ」
バルハさんが、さっと書類を出す。
なんで物件? リツさんの屋敷に部屋借りているのに。
「まず同棲せんのか? 他に人がおれば、いろいろ不味かろう?」
何がよ?
「あの屋敷から出る気はないなあ。ルナと二人きりなら我慢する自信がないなあ」
だから、何が?
「ルナ、どうする?」
「リツさんの屋敷がいいです」
「ははは、すまんなギルドマスター。どちらにせよ、地竜の咆哮までは結婚出来んからな」
「そうか、残念だな。まあ、いい、とにかくめでたい」
「ほっほっほっ、アルフやお嬢さん、おめでとう。儂が生きている間に子供の顔を見せておくれ」
私は噴き出した。
いろいろぶっ飛ばして、おじいちゃんドワーフダビデさんが言ってくれる。
「副ギルドマスター」
「ほっほっほっ、すまんすまん、儂は老い先短いからなあ」
「まったく、ルナ、帰るぞ」
「は、はい…………」
プチパニックに私はアルフさんに手を引かれて、リツ邸に。
「アルフや、明日から来いよ」
「ほっほっほっ」
「ああ、分かった」
リツ邸に戻って翌日。
ジェイドさんとミアさんの部屋も整う。はじめは中の部屋をリツさんが勧めたが、小の部屋でいいと拒んでいた。ホリィさん一家とも、ミアさんは直ぐに打ち解けていた。やはり出産経験のあるホリィさんは頼りがいがある。ちびっこ達も率先してミアさんのお手伝いしていた。特にルドルフはお兄ちゃんと言われて、照れる照れる。ミアさんはメイドさんだからいいが、ジェイドさんはどうするかだ。
なんとジェイドさん、サーシャそっくりなのに不器用さん。リンゴの皮を剥いたら、芯しか残らない。だが、ナリミヤ氏の脳筋友達の隊にいたし、何より強いし、珍しい光の精霊と契約している。なので、我がラピスラズリ・リリィのメンバーに迎えることに。直ぐに冒険者登録した。対応してくれたオルファスさんが、案の定サーシャと見比べる。親戚と押し通す。無事に登録出来ました。
因みにステータスはこんな感じだ。
ジェイド レベル58
30才 騎士 獣人(黒狼)
スキル・無属性魔法(21/100)・魔力感知(26/100)・剣術(44/100)・短剣術(34/100)・双剣術(21/100)・槍術(13/100)・弓術(23/100)・盾術(16/100)・体術(38/100)・気配感知(40/100)・索敵(28/100)
固有スキル・精霊魔法(3/10)・感覚特化(嗅覚・聴覚)(4/10)・瞬力(4/10)
おお、すごい。てか、ジェイドさん、30才とは。見えない20代前半くらいだよ。
5年騎士隊から離れていたそうだが、日頃の鍛練はしていたそうだ。ダイダンの護衛もしていたしね。騎士隊にいたままなら、かなりレベル高かったかも。
いかん、私のアタッカーの位置が。
こんな感じで戦力強化。
屋敷に帰って、装備品の検討となる。とりあえずの武器はアルフさんが応急処置で作った剣のみ。いろいろ検討される事になった。まず、ブーツとマントは決定。後はかなりの運動量を必要とする戦い方の為、動きやすいものとなる。ウェルダンで借りた騎士服みたいのがいいと言っていたので、ローズさんとリーフがデザインにはいる。
それから地竜の咆哮の件は説明は済んでいる為、ミカエル達の戦闘訓練にも参加することに。
来月にはフレナさん達も帰って来るので、それまで戦闘訓練と、適宜魔の森に行くことになる。
「じ、自分、この鎧がいいです」
「いい加減諦めろ。その鎧、もうきつきつだろうが」
アーサーがフォレストダークコブラの鎧を抱き締めて訴えている。アルフさんが、あきれた顔だ。
現在、アーサーの鎧はアルフさんが作ったフォレストダークコブラの鎧だが、背が伸び、筋肉も付き、合わなくなっていた。元々、背が伸びると前提して、ある程度余裕がある作りをしていたが、アーサーの背丈が予想より伸びてしまった。思い入れのある鎧だから、アーサーは手放したくないようだが。
「どうします? 革ならたくさんありますけど?」
リツさんが聞く。それをぷるぷるしながら見ているアーサー。
「そうさな。アーサーのレベルを考えると、かなり質のいい革で作らんと勿体ないしな。いっそ軽鎧か半鎧でもいいかもしれん」
アルフさんが悩む。
「なら、サイズ計って、デザイン考えるね」
リーフが手を上げて、錬金術チームと共にアーサーを拉致。
「自分っ、この鎧がっ」
「もう、諦めなって」
リーフが諭していた。
それから数日過ぎて、アーサーの新しい鎧のデザインが進む。同時にジェイドさんの装備品も揃う。グレイキルスパイダーのマントには中の無属性魔法補助、魔法防御、結界、自動修復、小の消音、解毒、温度調整。キングボアのブーツには、中の自動修復、衝撃吸収、小の硬化強化、消音、魔法防御が分される。仕込みのある籠手も作られる。後はメインの剣だ。ロングソードだ。試行錯誤の末、ミスリルを軸にごくわずかにアダマンタイトを混ぜた魔鉄を巻いた。付与は中の無属性魔法補助、自動修復、衝撃吸収、小の重量軽減。後は弓とナイフ2振り。弓にはマナグラントレント、玄はグレイキルスパイダーの糸。ナイフはミスリルと魔鉄はメインで作られる。
「騎士隊にいたときより、いい装備品なんですが………」
ズラリ、と並んだ装備品に、当のジェイドさんが着いていっていなかった。
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