再び決闘⑦
後日談?
「ありがとうございます」
次の日、私はローズさんに綺麗に髪を揃えてもらった。短くなった髪、なんだろう少年感が。
「やだ、美少年」
マリ先輩が言う。あのね、生粋な美少年シュタム様いるでしょうもん。
朝からウェルダンの屋敷はバタバタしていた。
例の不敬なウヌスとキンキンキラキラについて、役人が来ていくつか質問されたが、形式上だ。なにより陛下の前で抜刀し魔法を使った方が重罪だし。ウェルダンの春祭りの『決闘』を汚したことの方が重い。
「もちろん、貴女に対する傷害や、あの奴隷に対する傷害も十分重罪ですから」
「はあ、あの人達どうなります?」
役人は曖昧な表情をする。
罪状が多すぎて、かなり長期になるそうだ。
例のウヌスの学歴詐称はかなり前から調べられてあり、学園に在籍していたころ、優秀だが貧しい学生の成績を買い上げて自分のものにすげ替えたそうだ。その生徒は、学園卒業し、帰郷している最に馬車の事故で亡くなっている。これに関しては、当時の関係者から話は聞き、ウヌスが金を掴ませてやったそうだ。残された生徒の遺族は、妹と弟に賠償金がすでに支払われる手筈と。妹と弟は、自分の孫達の学費に当てると言っていたと。騎士位も、当時将軍職に着いていた伯父の弱みを掴み、脅迫してやったそうだ。自分の経歴に花を飾りたかったそうだ。伯父はどこかの爵位のある夫人と、不倫をしていたそうです。
後はキンキンキラキラのせいで破産した男達だが、これは立証は難しいそうだ。まあ、被害男性達が恥を忍んでまで言うだけの度胸がないそうで。ただ、学園でキンキンキラキラが陥落した男子生徒関連で、婚約者の女子生徒からの賠償金。また、キンキンキラキラの気紛れで暴力を振るわれて泣き寝入りしていた生徒達が、声を上げた。ひどい人は、あの扇で突かれ、失明している生徒もいる。そして、この中に、私が冤罪を被りそうになり、大怪我をした女子生徒もいた。あの時私は学園の武術大会の優勝者として、騎士隊の偉い人と会食していた。学園の副学長と一緒に。私が決勝で戦ったのは、公爵の三男で、勝った私を逆恨みしたのは、その三男の婚約者だ。キンキンキラキラに相談し、その貧しい子爵の女子生徒を暴行して、私に濡れ衣を着せようとした。だけど私は副学長と騎士隊の偉い人と会食中。出来っこない。その婚約者はどうなったか知らないが、被害にあった女子生徒は辺りどころが悪く、足に障害が出た。顔にも小さいがキズが残ったと。女子生徒がどうなったか心配だったが、マリ先輩があっけらかんに言う。
「彼女なら、クレイハートのメイドとして働いているわよ」
その女子生徒は子爵家から追い出されたようだ。足に障害、顔にも小さいがキズ。使い物にならないと。たまたまマリ先輩が、途方にくれた女子生徒を見かけて声をかけ、クレイハートに迎えたそうだ。今では足の障害があることを気にせず、真面目に働いていると。
良かった。本当に良かった。
「サイトウ様、ご面会希望の方が」
短くなった私の頭に、カチューシャをはめてくれていたリツさんに、来客を告げにきたウェルダンのメイドさん。本日何人目だよ。
「あら、どういったご用で?」
「彼を引き抜きたいと」
アーサーが、またあ? みたいな顔だ。あれだけ派手に査定の剣を動かしたのだ、わかっている人には、アーサーの魔法スキルの高さに気が付いているはず。
「では、50億揃えたら応じましょうとお答えしてください」
「承知しました」
アーサーも多いが、何故かジェシカにも色々話が来ている。コードウェルを通して、クレイハートに繋がりたいだけよね。こちらはお父様が対応。
「ウェルダンの春祭りの『決闘』で、アルフレッド君に勝てたら」
皆さん、帰って行きました。因みにエリックには婚約者いますのよ、ほほほ。クレイハート伯爵から紹介された、うちと同じくらいの男爵令嬢、穏やかなご両親に育てられた素朴な女の子。読書が好きな可愛らしい女の子だ。ウェルカムだ。エリックと同じ学園にいるので、適宜お茶や図書館でデートしていると。アルフさんが、ミスリルで栞を作っていた。エリックが彼女はチューリップが好きだからと聞いて彫刻を、アルフさんから指導されている。彼女の為に、せっせと作業しているエリック。みたら、感動してしまう。
そんな中、夕方近くになって私に来客。
誰だろう?
おばあ様が来て、支度するように言ってきた。アルフさんもだ。
アルフさんはウェルダンにお世話になったからと、庭に屋敷から持ってきた魔道炉をフル稼働していた。
私はリーフデザインのワンピースにカチューシャ。汗まみれのアルフさんはバタバタシャワーを浴びて作業着からシャツとズボンを履き替える。
「こちらに」
メイド長に案内されて、ウェルダンの屋敷の玄関に。
誰だろう?
玄関には一台の馬車。
そして、
「やあ、ルミナス嬢、アルフレッド君」
私は咄嗟にアルフさんの腕にしがみつく。
比較的ラフな格好をしたローグが静かな笑みを浮かべて立っていた。
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