パワーレベリング①
ドーピング
ジェヤード様とミアさんが、ウェルダンの屋敷で匿われた次の日。葬儀を終えたナリミヤ氏が戻って来た。
「良かった。無事に成功したんだね」
で、これからどうするかだ。
ますますあのキンキンキラキラ令嬢を、ぶん殴りたい私。私達が密かにウェルダンを出て、救助していた時に、女性が私を訪ねて来た。ウェルダンの執事が対応してお帰りいただいたそうだが、ずいぶん思い詰めていたと。女性はナリキンヤ侯爵配下の子爵家の女性。あのキンキンキラキラに、アルフさんがナリキンヤ侯爵専属になったら結婚しろと、命令されたと。だが、その女性は来月のリリィの月に挙式を控えているそうだ。それを知っているのに、キンキンキラキラはそう命令してきたと。侯爵令嬢に抵抗できず、私を訪ねて、なんとか勝利してほしいと涙を流しながら訴えたと。
負ける気は、ございません。
その女性にも幸せになって欲しい。
今後のことを考えて、ナリミヤ氏がジェヤード様のカットされた耳をエクストラヒールで再生。
ジェヤード様がひどく混乱している。あまりにも簡単にエクストラヒールを使ったので、考えが着いていかないようだが、まぁまぁと、リツさんが誤魔化す。それから念のために長い黒髪を短くカット。ますますサーシャそっくり。こりゃ四兄妹と間違われるよ。最後に名前だ。黒狼ではなければ、問題ないのだろが。
ちょっとだけ変えて、ジェヤード様改めてジェイドさんとなる。
「何か聞かれたら親戚って答える」
と、心配してないサーシャ。
おばあ様はナリミヤ氏を見てないフリをしてくれる。
「で、これからだけど」
客用の居間に集合する。
リツさんが行動計画を発表。
「明日からダンジョンに潜ります」
「え? ウェルダンの?」
私が聞くと、リツさんが首を振る。
「フィーラ・クライエよ」
ナリミヤ氏が簡易転移陣を書くと。マルコフさん達とイスハーン殿下が首を傾げる。
驚きますよ、きっと。
予定は明日から1週間。
『決闘』に出る私達のパワーレベリングだ。
ワープストーンあるしね。
短期決戦だけど、特にリツさんとアーシャのレベルを上げないと。ノゾミにはさっそくアーサーが指導しているが、アーサーの苦戦具合が分かる。ノゾミはアーサーの膝にすがり付いて可愛く鳴いている。本当に大丈夫かな?
ナリミヤ氏が、一室借りて、床に敷物を敷いて簡易魔法陣1日で書き上げる。
リツさん達は屋敷の台所を借りて、食事の準備。皆でお手伝い。
お母様とジェシカ、マルコフさん達やイスハーン殿下も手伝ってくれた。いいのかな? イスハーン殿下は王子様だけど、せっせと蒸かした芋を、マッシャーで潰してる。本当にいいのかな? ジェシカはゆで卵の殻を外している。エリックは学生ですから、学園に戻った。『決闘』の前日にまた戻ってくる。ミカエル達もお手伝いしている。ひたすら指示された大きさに野菜を切っている。
イスハーン殿下、ひたすら芋を潰してるけど、本当にいいのかな?
「イスハーン殿下を一人にしておけんしなあ」
と、アルフさん。
なんだか、イスハーン殿下もくもくと同じ作業をしてくれる。
途中でおばあ様が来て、もくもくと芋を潰してるイスハーン殿下を見て、見なかったフリしていた。
「まあ、とっても美味しいわ」
リツさんがにがおばあ様に貝柱やイカ、エビの塩炒めを味見を提供。
「ルイース様にそう言っていただいて光栄です」
「ルミナスの料理の美味しかったけど、指導は貴女が?」
「アドバイスしただけです。ルナちゃんが頑張った結果です」
手取り足取り教えてもらいましたよ。
うふふ、と笑ってお話するリツさん。
実はリツさん、色々料理の特許がある。
代表作は回転まんじゅうだ。あれは密かにカラーラの名物になっているそうだ。それもマリ先輩と同様にかなり安価に設定していると。あくまで親しみやすい庶民の味だからと。あとは特殊な調味料のレシピ。オイスターソースやXO醤なんかも、じわじわ人気が出ている。あの屋台の台は、アルフさんと錬金術チーム共同で特許を取っている。
まあ、リツさんのご飯はなんでも美味しいです、きりっ
で、次の日。
いざ、簡易魔法陣に乗る。
あらかじめグレイキルスパイダー三姉妹の事は説明しておいた。皆驚いていたけど、バーンだけは冷静。なんでも小さい頃の三姉妹とあった事があるそうだ。
そして、ジェイドさんも参加することに。長く従者をしていて、錆び落としも意味もあるが、戦闘なら役に立てるかもと。
なんとジェヤード様は精霊魔法を使える。それもレアな光の精霊だ。戦闘中に目が光って見えたのは、そのせいらしい。相手の急所が分かると。まあ、分かっても、そこを攻撃するのには、熟練の技術がいる。ちなみに火の精霊レリア、土の精霊グレストはかなり身近な精霊だ。マダルバカラでは契約している人は珍しくない。光の精霊は蝶だった。だが、この光の精霊は優秀。光魔法にも、闇魔法の『浸入』と同じ『把握』があり、ジェヤード様はかなり広範囲で使えるそうだ。後は無属性魔法、勿論瞬力ありますよ。
ただ、武器がないので、アルフさんが作っていた。ミスリルを軸に魔鉄で巻いたロングソードだ。付与は中の無属性魔法補助、自動修復、硬化強化、小の衝撃吸収だ。残りの装備は、ウェルダンの騎士服を借りている。あっという間にロングソードが出来上がり、ジェイドさんは言葉が出ない。
「こんなに簡易に? さすがアダマンタイトを扱える鍛冶師ですね」
「いや。魔道炉じゃなければ、こんなに簡単にはいかん。鍛冶師の保有魔力を必要だしな。儂は少し魔力があるだけだ」
「ご謙遜を」
後ろでウェルダンの騎士隊長の熱視線が、アルフさんに来てるがスルーしてる。
あの鎧を見て、騎士隊長さん、気絶しそうになっていた。
ご入り用は、トウラの鍛冶師ギルドまでご連絡を。
フィーラ・クライエに向けて準備を整える。
簡易転移陣を使用し、移動。
出迎えてくれたグレイキルスパイダー三姉妹に騒然となったのは、言うまでもない。
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