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救出③

作戦

「ずいぶん、自意識過剰な人だね」

 バーンがあきれた顔だ。まあ、マンガとかよくわからない言葉や、前世とかはナリミヤ氏は誤魔化していた。マンガとは挿し絵の多い小説だそうだ。マリ先輩が言ったことを思い出す。マリ先輩やリツさんがこちらに転生したのだ、こちらから転生することもある可能性はある。ただ、リリィ様が言っていたように、夢に見るくらいだと。マリ先輩や私のこと、ライドエルの学園の事を知って、それをヒントに小説にしたのではと、推察した。

 話を聞いて、皆一様に同じ顔だ。

「でも、そのビーナスって人、なんだかおかしくないです? そんな簡単にいろんな物を差し出したり、膝を着いたりします?」

 リツさんが紅茶を飲みながらナリミヤ氏に聞く。

 確かにいい年こいた男が、幼い令嬢に貢ぐか? 話を聞いたら自己破産したり、多額の借金して家族を躊躇わず借金奴隷として売ったものまでいたそうだ。誰もおかしいって、思わないのかね? クラブサンドイッチをぱくり。

「それはね」

 ナリミヤ氏はおかわりのコーヒーをゴクリ。

「闇魔法のダークマインドコントロールって知ってる?」

「はい」

 うちではアーサーしか使えませんけど。

「あのナリキンヤ令嬢はね、その上位魔法を無意識に使えるんだよ。これはね、ダークマインドコントロールとは違って、ほぼ完全に支配するんだ。ダークマインドコントロールは、こちらの問いに答える位だけど、これはね、意識を支配して行動させるんだ。お金を差し出したり、ただ同然で宝石を差し出したり、不動産の名義を差し出したりね。あまり違和感を覚えないんだ。光悦感を覚えて、行動にはなんの抵抗はない。ダークマインドコントロールとの違いだね。だから被害届けがないのはこれだね」

 リツさんが、新しいクラブサンドイッチを出す。マリ先輩はジャーマンポテトだ。

 いただきます、きりっ。

「ただね、ナリキンヤ令嬢はそれが自分に与えられた美貌のたわものだと思い込んでいるところが、問題なんだよ。この支配はね、ある程度レベルの差があると、効果はない。まあ、同年代の男性とかは支配させることは簡単だろうね」

「そのレベルの差は?」

「30だね」

 なら、ほとんどが支配下になる。

 私達みたいな冒険者は、レベルはあがるが、一般人は普通に生活していたら15位にはなる。学者とか職人なら多少は上がるが、ほとんどの人がレベルは15位なのだ。そりゃ、支配されるなあ。

「効果は特に男性にはよく効くけどね。女性にはあまり効かないみたいだね。で、ナリキンヤ令嬢はなんであんな手段に出たかだけど。ぶっちゃけナリキンヤは財政が厳しいんだ。令嬢と大奥様の浪費がすごくて、貢がせるだけじゃ足りないくて。宰相の次男と婚約しても、向こうが出し渋り、あまりお金が入らない。そこに、金蔓となりそうな男性、アルフレッドさんに目をつけた」

 アルフさんは無表情だ。

「向こうはね、『決闘』でこちらが手を出せないって思い違いしてるね。ナリキンヤは侯爵だ、コードウェルは男爵。かすり傷でも付けたら、コードウェルを潰して、ウェルダンやクレイハートも巻き込んで財産を絞るとる気だよ」

 うわあ、本当に『決闘』のルール、理解してない。

 ウェルダンの『決闘』は身分は関係はないのだ。だから誓約書書くのだから。だから、『決闘』で向こうが怪我しても訴えたところでどうにもならない。おばあ様が念押ししたのに、理解してない。まあ、たくさんのゲストがそれを見ているし、誓約書にサインしたらこっちのもの。歯、然り気無く、へし折ってやる。

「それからね、多分、向こうはドーピングしてくると思うよ」

「問題ありません」

 私ははっきり断言する。

「君は大丈夫だろうけど。あ、そうだ、ドーピングをしても無駄な状況にするね」

 残念金髪美形のいい笑顔。

「そうだ。向こうがドーピングするなら、こちらもする?」

 ふふふ、と笑う残念金髪美形。

 それから、リツさんとマリ先輩が作戦会議することになる。

「でも、よくこんな短時間で分かりましたね」

 私が聞くと。

「うん、僕さ、レベルあの令嬢より高いし、令嬢より精度の高い闇魔法使えるからね」

 ペロッとげろったよ。向こうは覚えてないよ。

 アーサーがすごい形相。

 そうだよね、レベル300越えてましたね。

 考えるのやめよう。パクパク。美味しいクラブサンドイッチ。私も手伝った。今頃、お父様達も食べてるはず。

「で、ジェヤードさんだけど、やっぱり帰国途中で暗殺されそうだね。やり方はナリキンヤの薬剤師が関わって来てるね。魔物呼びの薬を撒いて襲わせる気だね。で、場所は」

 皿を退けて、ナリミヤ氏が年季の入った地図を広げる。

「この辺だね。ジェヤードさんは明日出発して、ここに到着するのは明明後日位だね。僕も同行したいんだけど、ごめんね、葬儀があって」

 なんでも明明後日、友人の葬儀だそうだ。ワイバックの不審な死に方をした王子の葬儀。ナリミヤ氏とはお友達と。本当にこの人の人脈どうなってんの? だけど、友人の葬儀だ。外せないよね。これだけのことをしてくれたから、これ以上して、なんて言えない。

「それとね、これは僕の考えだけど、ジェヤードさんはこれで暗殺されたってことに偽装した方がいいかも」

「え? どうしてです?」

「まず、その方がスムーズだからだね。ジェヤードさんもナービットの子息を止められなかったことで、まずい立場になるだろいし。『決闘』で死者まで出してるし、下手したら国際問題になるから、無事だと分かれば、咎められるよ。しかもナービットの子息は王女の婚約者だから、かなり厳しい処分になるだろう。話を聞いてたら気の毒だし、お節介だと分かるけど、なんとかしてあげたいから」

 うん、お節介だけど、なんだかあの人気になるし。サーシャそっくりってのもあるけど、色々とばっちりだからね。騎士隊に復帰てのも、恐らく嘘だ。咄嗟に付いたんだろう。暗殺されると、分かっていて、それでも帰国するんだ。そこまで覚悟しているのに、横槍を入れるけど、あのメイドとお腹の子供ために、思い止まって欲しい。ナリミヤ氏の考えだけど、私は賛同した。

「で、作戦を練ろうか?」

 リツさんとマリ先輩がデザートを出す。ヨーグルトにアーサー畑産のジャムだった。

 いただきます、きりっ。

読んでいただきありがとうございます

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