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決闘⑥

キンキンキラキラ

 夜会なんて、初めて。

 本格的な夜会ではないが、緊張する。

 未成年のエリックとジェシカは、別室。

 大丈夫かな? やはり、ナイフ渡した方が。

「大丈夫だよ姉様、ウェルダンの屋敷内でおかしなことするバカいないから」

 エリックはジェシカの手を引いて、別室に向かう。

 ざわざわと賑やかにざわつく会場に。

 夜会は入場した時に、どこどこの誰々と呼ばれるのだけど、今回はなし。

 お父様がお母様をエスコートして、私とアルフさんが続く。

 ざわざわ、ざわざわ。

 視線が集まる。

「あれがコードウェルの娘か」

「なかなか、美しいではないか」

「だが、不敬な家の娘だ」

「バインヘルツにいった方が、よほど家の為になるのに」

「お似合いじゃないの」

「庶民に降嫁するのね。まあ、コードウェルの財政ならそれも仕方ないわね」

「まあ、素敵な殿方ね」

 評判は半々だ。

 私は黙ったまま、アルフさんの腕に手をかけて進む。

 美しいドレスに身を包んだおばあ様と、ご子息、現在ウェルダン当主のエンリケ様、奥様は控えめな方だ。

 私達はしずしずと進み、おばあ様の前に。

「ルミナス、具合は? あまり、顔色がよくないわね。挨拶が済んだら、お休みなさい」

「はい、おばあ様」

 ちっとも具合は悪くないけどね。おばあ様のお言葉頂いたので、早く帰れる。

 マルコフさんとイスハーン殿下も入場してた。サーシャ達もだ。

 そっと壁際に移動して、マルコフさん達と、合流して帰ろう。

「ルナ、座るか?」

「はい」

 ウエスト、きついし。

 アルフさんに手を引かれて、ソファーに、到着しない。

 いろんな人に捕まる。

「コードウェル男爵、ご令嬢はいつご結婚を?」

「いやあ、ご婦人も美しいが、ご令嬢も美しいですな」

「決闘での戦いぶり、圧巻でしたわ」

「本当に鍛治師ですの?」

 質問攻め。

 多分、コードウェル男爵に興味はない、決闘で共闘したクレイハート伯爵に繋がろうとしているんだろうけど。

 マルコフさんとイスハーン殿下は、少し離れている。アーシャとミーシャは、おばあ様にご挨拶後、サーシャにがっちり守られている。

「クレイハート伯爵だ」

 質問攻めしていた、一斉に視線が向こうに。

 うん、格が違う。

 クレイハート伯爵夫妻はキラッキラッ。特にマーガレット様の美しいこと。シュタム様にエスコートされて、マリ先輩も登場。紺色で、キラキラしたドレス、まあ、美しい。ちょっと年上の女性が着るドレスだけど、落ち着いた様子のマリ先輩を、更に美しく際立たせている。ウエストの細いこと。ローズさんが気合いいれてコルセット絞めてた。ギブギブ言っていたけど、ローズさん容赦しなかった。小さな真珠のイヤリングのみで、特に宝飾品はないけど、十分綺麗だ。

 おばあ様とクレイハート一家のご挨拶後、囲まれる。

「座るか?」

「そうですね」

 やっとソファーに。私もコルセットやられたよ。だけど反射的に身体強化して、粉砕してしまった。お母様に怒られました。なので、さらしで巻き付けた。少し、胸が大きく見えるかな?

「やあ、ルナ君」

 マルコフさんがこちらに移動してきた。イスハーン殿下とサーシャ達もだ。ちなみにローズさんはマリ先輩にぴったりついている。なので、イスハーン殿下は三角形ではない。

 まあ、こちら以上に質問攻めされている。

 色々だ、一番多いのは、ショウの件だ。

 マリ先輩がおほほ、と曖昧に笑う。

 しかし、意地悪い質問に対してはクレイハート伯爵様が辛辣に答えていた。

「クレイハートご令嬢は、貴族の娘の義務は果たされないのですか?」

「ふふふ、マリーフレアが無理に嫁がなくても我がクレイハートは不動ですからね」

 ですよね。

「私もコードウェル卿と同じ考えです。娘には愛する相手に嫁がせようと思ってます」

 ほほほ、とクレイハート伯爵様。

 今やライドエル屈指の財力欲しさの貴族連中は、顔を歪ませる。マリ先輩を手に入れたら、かなりの額が転がり込んでくるし。シュタム様には、ちゃんと婚約者いますよ、小さい頃に決まった伯爵令嬢。気さくな方で、エリックとジェシカをお茶会にご招待してくれたと。

 ほほほ、ほほほ、ほほほ。

 笑ってキラキラしてるのに、ドロドロン。

「あの空気、すごいなあ。俺には分からん」

 マルコフさんが感心した小声で呟いた。


 そろそろ帰ろうか、移動しようとした時、キンキンキラキラの黄金のドレスを着た令嬢が近づいてきた。まあ、派手。キラキラして、まばゆい。髪もとんでもなく高くアップしてる。キンキンキラキラのアクセサリーが、じゃらじゃら。まあ、派手。とにかく派手、顔も派手、全部派手。キラキラ過ぎてよく分からん。

 てか、誰?

 動く度にさわさわ言ってるけど、重くないの?

「そこの」

 キラキラの扇で、アルフさんを指す。

 ぶしつけな言い方だけど、これだけド派手な衣装だ、高位貴族だろうな。態度としては仕方ないか、アルフさんは平民だし。

「我が侯爵家専属の鍛治師にしてあげるわ。それからもっと見映えのよい相手を宛がってやりましょう。さあ、答えなさい」

「お断りします」

 間髪いれずにアルフさんが返答。

 キラキラご令嬢の眉が跳ね上がる。

「無礼者ッ、私の声に答えぬ気かッ」

 声を張り上げるキラキラご令嬢。一斉に視線が集まる。

 あんまり声を張り上げるのは、マナーとしてどうなのよ?

「お断りします」

 アルフさんは再び断る姿勢。

「コードウェルがどうなってもよいのかッ」

「それは、コードウェルに対する脅迫ですか?」

 アルフさんのこめかみに青筋浮かびそう。お父様もお母様を庇うように、さりげなく移動する。コードウェルに何かするなら黙ってないよ、リツさんにお願いして最強権力に頼るから。残念金髪美形に。

 キンキンキラキラご令嬢は、息を吸い、少し声量を落とす。

「ならば断る理由を述べよ」

「儂はクリスタム、トウラ所属の鍛治師。一存で他に移ることは叶いません。まず、トウラに話を通していただくこと」

 あのトウラの鍛治師ギルドが、アルフさんを手放すわけない。

「ルナ以外の女を迎えるつもりはありません。そのためにわざわざ、クリスタムから友人達にも来てもらい、『決闘』したのですから。それに儂にはトウラの鍛治師ギルドに恩がございます。その恩も返せないままよそに移る訳にはまいりません。それにマダルバカラかコードウェルで槌を振るうならまだしも、縁も縁もない所には行きたくはありませんな」

 そうだよね、的な視線が集まる。

 どこかに所属している鍛治師の引き抜きは基本ダメ。それは総本山のあるマダルバカラの鍛治師ギルドでもそうなのだ。それから『決闘』、この夜会はその『決闘』にご招待した人達に、お疲れ様、来ていただいてありがとう、みたいな夜会なのだ。なので、アルフさんは私の婚約者としてエスコートしてくれている。

 は、は、は、恥ずかしい。

 私がきつく絞められている腹の中で、悶えていると、キンキンキラキラご令嬢は、激昂。

「無礼者ッ、王家に連なるナリキンヤ侯爵令嬢と知っての暴言かッ」

 いや、あんたが答えろって言ったのに。

 へえ、このキンキンキラキラが例のご令嬢ねえ。

読んでいただきありがとうございます

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