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出会い③

「何故、私?」

「旦那様の考えでは、ルミナス様に護衛をお願いしようと」

「護衛? クレイハート家なら腕利きの護衛を雇えるでしょうに」

 だってお金持ちだよ、大富豪だよ。Sランクの護衛だって雇えそうだよ。

 ローズさんは疑問溢れる私に答えてくれる。

「ファルコの月に行われた学園発表会。それを旦那様はご覧になってました」

「あ、そうなの」

 学園発表会。

 そう、日頃の学業の成果を発表するのだ。学問や魔法、戦闘技術。まあ、色々なのだが目玉は武術大会だ。基本的には誰にも参加資格はあり、魔法に剣に何か一つでも戦闘スキルがあれば大丈夫。私は地道に予選を勝ち抜いて決勝トーナメントに出て、いろいろあって優勝したのだ。そりゃそうだ、私には前世の記憶がある。実戦の記憶だ。確かに今の体は前世に比べて小さいし力だって弱いが、記憶と風属性の身体強化魔法を駆使して無事優勝できたのだ。うん、準決勝で対戦した獣人の彼は筋が良かったな。

 思い出してうんうん頷いていると、ローズさんが話を続ける。

「その時のルミナス様の戦いの様子から、お嬢様の護衛はルミナス様しかいないと。特に準決勝は素晴らしいと。それで条件にルミナス様に護衛を依頼して了承を得るでした」

 あーあの準決勝ね。接戦だったし、私がいなければあの獣人の彼が優勝しただろうね。まあ、私も頭に血がのぼってて、すごい凄惨な笑顔を浮かべていたらしい。あの後ジェシカに「あのルナねえ様こわい、いや」と言われて、次から気を付けようと決意したものだ。きっとクレイハート伯爵はマリ先輩からも話を聞いていたし、私が女だからだろうね。まったく知らない護衛よりいいと思われるだろうね。あのクレイハート伯爵の目に留まったと言うことは、誇っていいだろう。

「あれ、でも、なんだか辻褄合わないような。だって、たまたま私は学園を中退したから今ここにいるけど、普通に卒業するまで後2年は待たなくちゃなくなるし」

「そこが旦那様の甘いところで、ルミナス様の卒業までにはお嬢様も諦めると思っていたようです。しかしルミナス様は学園どころか国を出ていかれました。そこでお嬢様と旦那様が再び話し合いました。お嬢様にはルミナス様の行き先に心当たりがあったようです」

 うん、マリ先輩信頼してたからちょっと話した記憶がある。とりあえずクリスタム王国の首都にいこうかなって話しちゃったよ。

「まずルミナス様をファルコの月までに見つけられなかったら、国に帰る。ルミナス様が見つかり護衛として雇う事ができれば、お嬢様の好きにすると」

「それで私を探したんたんですね。でも、よく見つけましたね私を」

 ここは王国の首都。多分住民が十万を超すこの首都でたった一人を見つけるなんて。奇跡だよ。

「ええ、私も無理だと。しかしお嬢様が「こっちにいる気がする」と向かった先にルミナス様がいらしたのです。本当に驚きました」

 なんだろう、まるで予言や天啓みたいな能力は。一息つきローズさんは神妙な表情で私と向き合う。

「ルミナス様、ルミナス様にお願いがございます」

「はい、何ですか?」

 お金はあんまりないよ、あ、大富豪でしたね。

「しばらくお嬢様のわがままにお付き合いして頂けないでしょうか? お嬢様もちょっと冒険者をしてみれば満足でしょうし、その内帰ると思うのです。ただ戦闘面では私一人では不安ですし」

「それは構いませんよ。マリ先輩には学園の頃からよくしてもらってますし」

「ありがとうございます」

 深く頭を下げるローズさん。

 これくらいなら大丈夫、わざわざ隣国まで私を探して足を運んでくれたし。もちろん打算もある。マジックバックにローズさんのメイドとしての能力、そしてマリ先輩の高い回復力の光魔法。私にはないが、それらは冒険者として喉から手が出る程にほしいもの。二人といる限りもれなく着いてくる。もしマリ先輩の性格に問題があればお断りしていたが、そんなことする理由がない。むしろこちらからお願いしますだよ。私もぺこりと頭を下げる。そこにタオルを肩にかけたマリ先輩が出てきた。

「お風呂お先でした。あ、ちゃんとお湯に浄化かけてるから」

「え? お湯に浄化?」

 なんか、光魔法が普通の使い方ではない。大体、浄化は傷を綺麗にしたり、魔物の返り血や障気に対して使う。確かスキルレベルが低いと魔力の消費が激しいはず。お湯に気軽に使う魔法ではない。

 ちらっとローズさんを見ると、悟った様な表情。あ、受け入れろってことね。

「ローズさん先に入ってください。私、何日も入ってないから汚れているし。ゆっくり入りたいから」

 これは遠慮とかではない、事実だ。多分お湯に入ればどろどろになるだろう。最後に入ると渋るローズさんをお風呂(大桶ね)に押しやって一息付く。するとマリ先輩が、神妙な顔で話しかけてきた。

「あのねルナちゃん。実はね」

 そう言って先ほどローズさんから聞いた、私を探しだした理由を話してくれた。

「でもね、私はルナちゃんを護衛とか思いたくないの。ちゃんとした冒険者のパーティの仲間として一緒にいたいの」

 必死に言うマリ先輩。うん、可愛い。もともと私との不用意な会話が原因だしね。

「あーあ、こんなとこさっさと卒業して、あちこち旅したいなぁ。冒険者になれたらギルドカード持てて、国の間の行き来も楽だし、ご飯の心配しないといけないけど、何より自由だし」

「いいね冒険者。ルナちゃん、私も連れてってね。私、光と火と風と土の魔法が使えるし」

「クレイハート先輩4属性も使えるんですか? いいなあ、私風属性しか使えないし、最高の魔法職ですね。じゃあ私が剣士で前衛、先輩は後衛で魔法で援護してくださいね」

「もちろん、任せて」

 まずは冒険者登録、この国では無理だから、隣国のクリスタム王国首都マルベールでスタートしましょうか。なんて話をしたよ、マリ先輩が持って来たマドレーヌを食べながら。私が学園を中退する数日前に。

「分かってますよ先輩。先に冒険者なんて話をしたのは私ですし。こちらからもよろしくお願いしますね」

「ありがとうルナちゃん」

 嬉しそうなマリ先輩。

「あ、そうだ。後で皆でステータスチェックしよう。ルナちゃんは開示できる?」

「できますよ。スキルレベルくらいまでですが」

「パーティ組むからお互いに把握していた方がいいよね」

 ウキウキ、ワクワク。そんなマリ先輩の姿はなんだか穏やかな気持ちにさせる。ローズさんがお風呂から出て最後に久しぶりのお湯に入ると、やっぱり汚れていた。良かった最後で。

 お風呂から出てお湯を捨てて、軽く大桶を流して壁に傾けて置く。こうしておいて宿の従業員に声をかければ後で洗ってくれる。ちなみにお湯も別料金です。でも、宿代と同じで良心的。

 部屋に戻ると、ローズさんがお茶の準備をしていた。おお、今度はハーブティー。当然の様に私の分のカップもある。いいのかな、昼間に頂いた紅茶だってきっと高級茶葉だっただろうし。

「ハーブティーは苦手?」

「いいえ、そうじゃないですが、お昼間にも頂いたのに」

「いいのよ気にしないで。このハーブ私が家の庭で育てたんだよ。だからタダだよ」

「本当に伯爵令嬢なんですか?」

 庭でハーブ育てるって何? 土いじりしてたのこの人。伯爵令嬢だよね。ローズさんを見ると悟りの表情。あ、はい、受け入れます。

「よく言われる。さ、飲みながらステータスチェックしましょう。さ、どうぞルナちゃん」

 もちろんいただきますよ、せっかくのハーブティー。うーん、香りがいい。

 ステータス。それは自分のレベルが分かるスキル。これは魔法の適正あれば誰でも使える。この世界にはレベルやスキルがある。このレベルが高い=強い。簡単な図式だ。普通に真面目に生活していても上がる、一般の人なら15前後くらいまで上がる。開示もできる、ただしある程度の魔力の操作能力が必要だけどね。

「「「ステータス開示」」」

読んで頂きありがとうございます

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