年明け③
訓練開始
短いです
「ところでアルフ、その『決闘』には誰が出るんだ? アーサー君やサーシャ君か?」
「まだ決めとらんが、バーミリアン殿下がマダルバカラからひとり出すと言ってくれてな。後は三人だ」
「なら、俺は出られんか? まあ、友人代表枠で」
「どうだルナ?」
「マルコフさんなら、問題ないかと」
なんと言ってもAランクの冒険者だし。
「後二人は、やっぱりアーサー君とサーシャ君?」
バーンがクッキーをショウから守りながら聞く。
「アーサー、ちょっと、無理かと」
私の言葉にしゅん、となるアーサー。ごめんね。
「なら、俺は出る」
サーシャが手を上げる。
「アルフさんには恩があるし」
「ありがとうサーシャ。なら、もうひとりは」
「ピィッ」
はい、ダメ。
「ウェルダンの騎士になる可能性があります。形式上、おばあ様が私の名付け親だし」
「ピィピィッ」
ダメだって。
「ねえ、ルナちゃん、ショウは?」
「問題有りすぎですから」
だいたい、出た時点で、誰が主人か問題になる。ここはクリスタムだから偽名で冒険者できているが、本国に戻ればばれるに決まっている。そうなれば、ややこしいし、クレイハート伯爵家はどうなるか。
「メエメエ~」
「ノゾミはダメよ」
気持ちは嬉しいけど。
「でも、ルナちゃん、貴族だったのね」
フレナさんがスコーンを食べながら、感慨深く言う。
「貴族って言われても、貧乏男爵ですよ。庭には野菜育てて、私が角ウサギ狩ってましたから」
下手したらちょっとした商人の方がお金持ちよ。
「そうかしら? ルナちゃんって、そんな格好してたら立派なご令嬢よ」
「はあ」
本日はブラウスとスカートだけど。足にナイフあるけど。
「そうだね、剣持ってる時は、別人みたいにおっかないけどね」
「バーン、向こうで少し話そうか?」
「あ、結構です」
バーンは丁重にお断り。
「あんた、一言多いのよ」
フレナさんがあきれている。
次の日。
「ぐわあっ」
簡易盾を持ったバラックが吹き飛ぶ。
「構えが甘いぞ。重心をすこし低くしろッ、腹に力を入れろッ」
アルフさんの激が飛ぶ。
私はフレナさんと打ち合う。
流石Bランク、いい感じッ。
サーシャはイレイサーと熱戦中。
「ちょっとちょっとアーサー君、いつもこんな感じ?」
「はい」
ララの無属性魔法の覚醒の為に指導していたアーサーが答える。
マルコフさんはローズさんとアーシャ、エレを相手にしているが、動きがいい。
「バーン、次はお前だぞ」
「ひーッ」
「斥候は先頭に立つ。分かるな? 初撃を与えた後の動きが重要だと」
「はい…………」
バーンが模擬ナイフを持つが、撃沈。
「危ない、危ない」
「マリ様っ、危ないっ」
マリ先輩が杖を振り回す。必死に危ない繰り返すサリナとリーフ。
午前中いっぱい戦闘訓練。
お昼になる。
「すまない、ごちそうになって」
「いいんですよ。こちらの都合にあわせてもらっているんですから」
戦闘訓練日のお昼は、こちらがもつことになっている。
本日は熱々ラザニア、具沢山のスープ、カンパーニュだ。
「ルナちゃん、流石に強いわね」
「そうですか? フレナさんだって強いじゃないですか?」
ふふふ。ふふふ。
「しかし、サーシャ君の動きは速いな。イレイサーが付いていくのがやっとだ」
「そうですか? 種族性だと思います」
けろり、とサーシャ。
小さく、身体強化して勝てない、と呟くイレイサー。私もいつもギリギリよ。
「そうだ、皆のサブウエポンはどうなっとる?」
アルフさんがスープを飲みながら聞く。
「俺はショートソードだが。後はナイフだ」
「私達はサブウエポンはナイフよ」
「皆ナイフか、別の手段を考えた方がいいかもな」
「急に出来るのか?」
マルコフさんが聞いてくる。
「まあ、今日ざっと見てな」
「ですね」
私はアルフさんの意見に頷く。
「え、ルナちゃんもわかるの?」
疑わしい顔のフレナさん。
「多少は。まず、サリナ、斧とかいいかも。フレナさんは短めの槍とか。ララは双剣とか」
「バラックは少し柄が長くてもいいかもな。ハルバートを試してもいいかもしれん」
「僕は? アルフ、僕は?」
「「無属性魔法覚醒」」
「はもったッ」
とりあえず、模擬武器作成となる。
「アルフは、槍と剣でしょ? ほかあるの?」
「斧とナイフがあるぞ」
「…………アルフ、お手製?」
「当たり前だろう」
「ですよね~」
サブウエポンかあ、私剣ばっかりだから、せっかくの薙刀使わないと。
「サブウエポン、サブウエポン」
マリ先輩がワクワク。
「マリ先輩は杖で十分です」
「ええ~、私も剣とか槍とか」
「ははは、ならんぞ」
「あはは、ダメですよ」
「くうっ」
ダメですよ、危ないもん。
「ねえ、ルナちゃん、私剣しかないけど大丈夫かな?」
リツさんが不安そうに聞いてくる。
「そうですね。まず、体術をある程度使えてから考えましょう」
リツさんの剣術は独特だからね。あまりあれこれ言ったらおかしくなるかも。
「そう、分かったわ」
リツさん、納得してくれた。
「儂は明日から鍛治師ギルドだから、長くは訓練に参加できんが、いいか?」
「構わないさ」
午後からエレと打ち合う。
「ルナちゃん、どうどうっ」
だから、私は馬じゃないって。
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